第11話 荒野を駆ける
ロボットは俺をカメラでとらえつつ、
ゆっくりこちらに歩み寄る。
「抵抗は無意味です。
投降せよ。」
「人間をなめるな、ブリキ頭が。」
俺はそう言いつつも、頭をフル回転させる。
見た目以上に高性能なロボットだ。
ただ、遠隔操作には思えない。
決められたパターンで動いている感じがする。
武器は銃を鈍器として持ってるだけ。
射程距離も腕力も向こうが上。
俺に戦闘技術なんて、ない。
野球のバットみたいに振るしかない。
「話し合い、は無理だな。
どうせ、命令に従える程度の人工知能だ。」
「投降せよ。投降せよ。」
ここから見ても、
ロボットのどこにもメンテナンスハッチは見つからない。
見つけてもフタを開ける前に捕まる。
ロボットが一歩踏み込んで、
俺に手をかけようとした。
俺はドローンを持ったままの腕の方へ逃げ、
銃を振りかぶってロボットの手をぶん殴る。
小気味いい音がして、
ロボットがドローンを手放した。
俺はドローンを引ったくり、
ロボットから距離をとる。
クソッ!
ドローンは既に動かなくなっていた。
ロボットは俺に向かって歩き出す。
「こんなことなら、
もっといじっとくべきだった!」
俺はそう叫び、
ドローンからバッテリーのようなものを引き抜いた。
見た目はリチウム電池のようだが、
良く読むと『水素』と記載されている。
危険物じゃねぇか!
俺は俺の腕と同じくらいの大きさのそれを、
掲げて叫ぶ。
「動くなブリキ頭!
それ以上近づいてみろ、
これを爆発させる!」
ロボットの動きが止まった。
水素電池。
前世でも実用化に向けて研究されていたが、
安全面がクリアできずにいたものだ。
そう、俺を生け捕りにするのがコイツの目的地なら、
俺は自爆を選択する!
「危険物を捨て、投降しなさい。」
投降せよ、から、投降しなさい、に変わった。
ロボットを睨みつつ、
俺は必死にバッテリーを指でさわって構造を探る。
何処かにスターターがあるはずなんだ。
水素電池は起動時に電気が必要だ。
起動してしまえば発電し続けるが、
始めの電気は外から取り入れる必要がある。
そのスターターをなんとか破壊できれば、
コイツは爆発するはずだ。
死ぬ気はない。
もちろん、俺は死にたくない。
この大きさの水素電池なら、
学校のグラウンドが吹き飛ぶくらいの爆発が最小規模だ。
下手すると半径数十キロが吹き飛ぶ。
俺が素足で走っても、
爆発の範囲からは逃げられない。
「来るなよ、ブリキ頭。
そこからお前が一歩、
一センチでも動いたら爆発させる。」
遠隔操作じゃないなら、
ここでロボットが独断で判断できないはずだ。
ショボい人工知能なら、
尚更人間の意見や承認を求める。
ロボットの動きが完全に止まった。
俺はバッテリーを掲げたまま走り出す。
鈍器にしていた銃のストラップを片手で肩に下げ、
ずる剥けの足の裏を叱咤しながら走る。




