第10話 荒野の決闘
人間の姿をロボットが真似る意味は、
見た目以外あまりない。
機能的にむしろ難度があがる。
だが、目の前の道路を走るその姿は、
完全にヒト型だった。
遠くて細部は良く見えないが、
明らかに大きい。
肌はシルバーに輝いており、
間接部分はボールに見える。
マネキンの大きな物を銀色に塗ったような見た目だ。
「SF的なのが来たぞ。」
マジでヤバい。
相手がどんなことができるのか、
そもそも敵対するのかも分からない。
だが、俺にできることは限られる。
「ちくしょう!
当たれ!」
無理やり構えた銃の引き金を引く。
だが、ロボットはレーザーを軽々避けて、
更に速度を上げてきた。
ですよね!
そら、逃げるわ。
でも、逃げたってことは、
この銃は当たれば効果がある!
「『警告』。
武器を捨て、投降せよ。」
「コイツ、話せるのか。
はたまた遠隔操作か。
この見た目で、
録音流してたらキレるぞ、俺は。」
俺はかなり距離が縮まったロボットを見る。
モノアイだ。
ざっと身長四メートルくらい。
武器は見えないが、腕力はありそうだ。
気になるのは、この機体一機だけと言うことだ。
さっきのドローンといい、コイツといい。
なんか、派手さがない。
もうすぐそこまでロボットが近づいてきた。
「SFなら、空ぐらい飛んで見せろや!」
俺はそう言いつつ、
身体を揺らしてドローンの進行方向を曲げた。
ロボットはそれに合わせて進行方向を変えた。
空はどんより曇り。
相手はモノアイ。
なら、狙うのは目だ。
俺はロボットの目玉に銃口を向けて引き金を引く。
ロボットはレーザーを回避したが、
それに合わせて俺は身体を大きく振った。
レーザーはそこそこ強い光を発して飛ぶ。
モノアイはその光で一瞬視界がロストするはずだ。
そこをついて、俺は通りすぎようとした。
「捕まえました。」
ロボットはすれ違いざま、
俺にカメラを向けもせずドローンを掴む。
高性能じねぇか!
俺の身体は捕まってない。
急いでロボットの身体に移り、
ドローンから降りる。
そのまま、ロボットの身体を降りて、
地面にたどり着いた。
「投降せよ。」
ロボットはドローンを握ったまま、
もう一方の手を振るう。
ロボットの動きが少し遅いのは、
俺を生け捕りにするためか?
俺は痛む足をおして走る。
「ロボット三原則に則ってってか?
ざけんなよ、
こちとら裸で銃を持ってるんだ!」
俺はロボットに向けて引き金を引いた。
だが、銃口からは何も出なかった。
「エネルギー切れです。」
「ご親切にどうも!」
俺は銃のストラップを身体から外し、
銃を鈍器として構える。
細腕だと自覚している。
前世でも喧嘩をした経験もない。
でも、破れかぶれって言うのとは違う。
燃える闘志を拳に込めて、俺は啖呵を切った。
「二度とあんな地獄に戻るかよ!
そんなことなら、
ここで戦って死んでやる!」