第9話 荒野の一本道
とにかく道は続く。
俺はコアラか何かのように、
ドローンにしがみついている。
「何処まで続くんだ?」
もうサイレンは聞こえない。
振り返っても、建物は見えない。
だが、前を向いてもなにも見えない。
地平線まで道が続いている。
体感で三十分くらい飛んでる。
ドローンの速度も体感だが、
時速五十キロ近く出てるはずだ。
そうなると、
百キロ以上道が続いていることになる。
本当に、何処かにたどり着けるのか?
無性に不安になってきた。
道はきれいに舗装されている。
使っている跡も見受けられる。
だが、この先に街があるとは限らない。
もう一つの収容所だったら?
軍事施設だったら?
いや、こんなSFの世界だ。
人間牧場があるなら、
人間を加工して食事を作る工場もありえる。
勢いで逃げちゃったけど、
これはこれでヤバい。
今さら考えがクリアになる。
いや、あれはあれで、無理よ。
あんな生活、耐えられる訳ないじゃん。
毎日毎日、ゼリー食って、歩いて、
芋みたいに洗われて。
挙げ句に搾り機に繋がれて搾られるんだ。
その内死んでもおかしくないし、
その前に頭がおかしくなる。
「それにしても、
ドローンが一機しか飛んでこなかったな。」
そこだけ、納得がいかない。
そこそこ重要施設だと思ってた。
なら、ドローンは数機飛んできて、
時間がきたらヘリも飛んで来るものだとばかり思っていた。
今、何も追ってこない。
そうなると、可能性は三つ。
一つは脱獄犯の脱獄ではなく、
テレビでたまに流れる豚とか牛とかの脱走と同じ扱いをされている。
この場合、警察がその内やってきて、
ネットとか携えて追いかける。
このケースから逃げ切るプランはいくつかある。
一つは、武装した極悪犯の脱獄と同じ扱い。
この場合は、警察と軍がやってくる。
警察は、追跡だけでアタックはしない。
軍は完全装備で、装甲車に乗ってくる。
これには、逃げるプランが思い付かない。
最後の一つは、SFだ。
俺も想像できない、
ファンタジーな何かが起きる。
これが一番駄目だ。
本当に打つ手なし。
何されるのかも分からないから、
初見殺しでやられるに決まってる。
「街に着いてからか、
着かないかでも変わる。
少なくとも、
ここで襲われたら、
俺はフルティンで道路に投げ出される。
それは、もう、勘弁してほしい。」
そう、俺はまだ全裸だ。
これは思っているより辛い。
足は既に血だらけ、擦り傷まみれ。
手もぼろぼろで、
ドローンに抱きついているのも辛い。
遠くから何か音が聞こえる。
固いものを地面に打ち付けるような音だ。
音源は進行方向から、
こっちに向かってきているようだ。
前を見ると、
うっすら土埃が上がっているのが見える。
何かが来る。
でも、何が来る?
それは、真っ直ぐこちらに向かってきた。
距離が縮まり、それが何か見えてきた。
俺は冷や汗が流れるのを感じる。
「ウソだろ?
マジで?!」
土埃を上げてこちらに向かってきたのは、
大きなロボットだった。




