低きに流れた結果
あるところに、おなかをすかせた一匹の狐がいました。食べ物を探して歩いていると、ブドウ畑を見つけ、狐は大喜びで近づいていきました。
ところが、ブドウは高い木の上にあり、いくら背伸びをしても、跳び上がっても、あと少しのところで届きません。木に登ろうとしましたが、ずるずると滑り落ちてしまいました。
――へっ、あんなブドウ、酸っぱいに決まってる。
ブドウが欲しくてたまりませんでしたが、すっかり疲れ果てた狐は、別の食べ物を探すことにしました。
しばらく歩くと、柿の木を見つけました。狐はまた大喜びして木に近づき、跳び上がります。しかし、あとわずか届きません。
――ふん、あんな柿、どうせ渋いんだ。
何度も挑戦して届かないことがわかると、狐はあきらめ、再び歩き始めました。
とぼとぼ歩き続ける狐は、今度は蜜柑の木を見つけました。蜜柑の木は柿の木より低かったのですが、狐はすっかり力を失っており、背伸びすらできませんでした。
――あんな蜜柑、苦いに違いない……。
狐はまたあきらめ、去っていきました。日が暮れ、暗闇の中を歩いていると、今度はメロン畑を見つけました。メロンは地面にたくさん並んでいます。
――これなら食べられるぞ!
狐は歓喜して駆け寄ろうとしました。しかし、そのとき――
「うおっ! あっ、狐か……」
狐は驚いて跳び上がりました。畑には人間がいたのです。狐は思わず逃げようとしましたが、おなかがすいて、どうしてもメロンをあきらめきれません。その場にとどまっていると、人間がこう言いました。
「……もしかして、メロンが食べたいのか? よしよし、割ってやるからお食べ。さあ」
狐は割られたメロンに飛びつき、夢中で食べました。メロンはとても甘く、狐は幸せな気持ちで満たされました。
食べ終えると、狐は軽く「コーン」と鳴いてお礼を伝え、軽快な足取りでその場を後にしました。
狐が暗闇の中に消えたのを見届けた人間は、ふうと息をつい、呟きました。
「番犬かと思って驚いたな……。さて、さっさと除草剤を撒くか。あの野郎、自分だけ儲けやがってよお、許せねえな。こんなメロン、どうせ大して美味くもねえだろうに。はははははは!」