お泊り
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「美味しいーー~~ーー!幸せーーー!!」
目の前で両手にサンドサンドイッチを持ち、泣きながら食べている人物に目をやる。
彼の名前はロウルと言い、ライカの友人で魔法使いらしい。見た目は爽やかイケメンだが、中身は豪快で竹を割ったような性格のようである。
そして美味しい食事に飢えていたらしい…
「種類の豊富なサンドイッチ!暖かいスープ!新鮮な野菜のサラダ!ライカ、お前いつもこんな美味しい物食べてるのか…!?」
「そうよ、羨ましいでしょ?」
「超、羨ましいーー~~ーーーー!!!」
(まって、ライカが僕の料理を自慢してくれてるーー!!?)
心の中でロウルの叫びに負けないくらいの大声を上げる。
いつも美味しいと言ってくれている言葉を疑っている訳ではないが、別格の破壊力だ。嬉しさに悶えそうなところを必死に隠して平静を装うのも一苦労である。
「ありがとうございます。御口に合ったのでしたら、良かったです」
「こちらこそ、ありがとうー!あ、敬語は要らないから!気軽にロウルと呼んでくれ!」
「分かった、そうさせてもらうよ」
実年齢は置いておいて、見た目と性格からは気のいいお兄さんという感じで親しみやすい。ライカが友と言うだけあり、悪い人でもなさそうだ。レノの警戒心が解けるのも早い。
「素直な良い子じゃないかライカ!」
「ええ、そうよ」
ふふふと楽しそうにライカが笑う。
(あ、これ心臓が持たない…)
第三者にライカが話すレノについての内容は、ライカのレノに対する率直な評価であろう。
つまり、レノは急に来たライカのデレに対応しきれなくなっているのである。心を落ち着かせるためにも一旦席を離れた方が良い。早急に。
「あ、あの!食後の飲み物を用意しするね!」
「!?そんな丁寧な食事が…!?」
丁度いいと思った口実にロウルが独特な驚き方をし、ライカが黙ったままコクリと頷いた。
それを見たロウルが信じられないといった様子で口を開けている。言葉を失ってしまった様だ。
目の前に広がった不思議空間を収集することを諦め、キッチンに向かう。
気づかないうちにレノの胸に有った不安はほとんどなくなっていた。
**********
「そういえば、今日は何の用事だったのかしら?」
ライカもまだ訪問理由を知らなかったのかと少し驚きながら、レノは食後の飲み物として出した紅茶を感動しながら飲んでいるロウルの方を見る。
「あぁ、共同開発を依頼しに来たんだった」
すっかり忘れていたと言わんばかりにロウルが手を叩く。
「共同開発?」
「そう、ロウルが発案した新しい魔道具を私と一緒に作りましょうよ、というお誘いのお話ね。ままある事よ」
レノの素朴な疑問にライカが答える。魔法使いはそういう事もするのかと素直に納得し、頷いた。
「はい、これその資料な」
資料とは名ばかりの紙一枚をロウルがライカに手渡す。
明らかに機密情報だろと思われる紙を前に、見聞きしてはいけないとレノが慌てて席を離れようとするが、ロウルがそれを引き留める。
「興味があるなら聞いてていいぞー。減るもんじゃないし」
「減るでしょう!」
「紙は減らない!」
焦って言い返すレノにズレた返事が返ってくる。それはそうだ、見聞きしただけで紙は減らない。
だが、そこに書かれている情報の価値が減る。それは何よりも問題だろうと思いながらレノは資料に目を通しているライカの方を見る。
「…ロウルがいいなら、いいわよ?作るところは危ないから見せれないけど」
ライカが資料に目を落としながら平然と同席を承諾する。いいらしい。
「それじゃあ…お邪魔します…!」
2人から許可を得れたレノは半分浮かしていた腰を下ろす。
興味がない訳がないのだ。
その様子にロウルが満足そうに頷く。
「実際のところ内容を理解できたとしても、普通の魔法使いには作れない代物なんだよ。俺だって思いついた以上、自分で作れたら楽しいんだが…ライカじゃないと作れない部分があるからこうやって共同開発の相談に来ている訳だからなー…」
「そうね、異次元バッグなんて思いついても現実的ではないわね」
資料を読み切ったらしいライカが顔を上げ、手に持っていた紙を机に置く。
「異次元、バッグ…?」
「今いる異次元、つまりこの世界とは別の世界を生成し、バッグを入り口とした収納空間として運用したいらしいの。でも色々と詰めなくてはいけない仕様があるわ。バッグということは持ち歩くということですもの、異次元へのアクセス口の座標が毎回異なるということだし、今後複製した場合に接続の混線も心配だわ。入口がバッグになるからと言ってバッグの口の大きさまでにか入れられないのなら、わざわざ異次元を生成する利点が全然生かせないし……」
「ストップーーー!!」
早口で説明をし始めたライカにロウルが待てをかける。その声にライカがハッとしたように口を噤んだ。
正直、圧倒されていたため助かった。
「はい、今思いついたことは全部この紙に書き出して、あとで一つずつ詰めるから」
ライカは渡された紙を受け取り、無言でスラスラと書き連ねていく。
普段の様子からは想像できないライカの様子に信じられないとレノが瞬きしていると、ロウルが豪快に笑いだした。
「驚いたか?ライカってば物作りになるとこうなんだよ。想像力があるというか、考え続けちゃうというか、突き詰めちゃうというか…物作りには大切なことなんだけどなーー」
「…この性格?が普通の魔法使いじゃ作れないものを作れる理由?」
「ん?あぁ、ここまでは魔法使いとしては珍しくないぞ。魔法という学問に没頭する奴らは多いからなー。だから衣食住が疎かだったり…ゴホン、ライカが特別なのは技術と魔力量の方だ。異次元なんて普通作れないし、ましてや複製なんて異次元をポンポン作る発想がそもそも異次元なんだぞ」
「なる、ほど…?」
「あんまライカを魔法使いの基準に考えるなよ?他の魔法使いが可哀想だ」
「…分かった」
スラスラと筆を動かし続けているライカを見ながらレノが頷く。頷くしかない。
当たり前だがライカしか魔法使いを知らなかったレノにとっては、ライカが基準であったし魔法使いは万能だと思っていた。
ライカはかなり特殊だったらしい。
するとライカの筆がピタリと止まる。
「ロウル?コレ、開発期限はあるのかしら?」
「2ヶ月かな。上に見られた!暫くの間世話になる!」
ロウルが二カッと笑い、親指を上げる。
「あらぁ、客室はレノに使ってもらっているんだったわ」
ライカが小首を傾げる。
(2ヶ月、ロウル、お泊り…!?)
衝撃の事実にレノが固まる。本日2度目だ。
ライカがレノに泊めてもいいか確認を取ってくれるが、住み込みで働かせてもらっているだけのレノは頷くしかなかった。




