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魔法使い

ご覧いただきありがとうございます。楽しんでいただけますと幸いです。


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最低、週に1回は投稿出来たらと思っていますので、よろしければブックマークをして更新をお待ちいただけますと嬉しいです。


感想もいただけますと踊り喜びますのでお気軽にコメントいただけますと幸いです。

「久しぶりだな!元気にしているようで安心したぞ」


 庭の隅に転移すると、何事もなかったかのように再会の挨拶をされ、笑いかけられる。

 傍から聞いたら直前に50メートルほど後方に吹っ飛ばされており、吹っ飛ばした相手に話しかけているとは微塵も思われないだろう。


「お久しぶりね。ロウルこそ元気そうで何よりだわ」


 ライカも何事もなかったかのように挨拶をする。

 最後に会ったのは何十年も前である。互いに旧友の元気な姿を見れて嬉しいのは本心だ。

 魔法使いは不老であって不死ではないし魔法も万能ではない。長く生きていれば居なくなった知人も居る。


「暫く会わない間にライカも変わったんだな。弟子を取っているなんて想像もしていなかったぞ。知っていれば何か初弟子祝いでも持ってきたのになー」


「弟子なんて取っていないわ。彼は一時的に雇っているお手伝いさんよ」


 驚いたが心底嬉しいといった様子の言葉を即座に否定する。

 実際のレノとの関係はロウルが想像した関係とは間反対なのだ。


 ライカの言葉にロウルが険しい表情になる。それを見て先手を打つ。


「やってはいけないという掟はないわ」


 魔法使い達の中にも掟は存在する。

 破れば相応の罰が下るが、破らなければ何をやってもいいという事にはならない。掟には無いが倫理的によろしくない事はもちろんあるし、ロウルもライカがそれを理解していないとも思っていない。

 それでもあえてロウルに何かを言われる前に掟を基準に話をしたのは、自分の行いが倫理的によろしくないという事を理解しているからだ。


「一応聞く、合意の上か?」


「いいえ。彼は何も知らないわ」


 嘘も隠しもせず告げるとロウルが驚いた表情になる。何も知らないとは思わなかったのだろう。


 ロウルが来ると分かった時、嘘も隠すこともしないと決めていた。レノと話せば直ぐにわかる事であるし、ロウルに黙っておいてもらうには先に言う方が確実である。


 ライカの行動は確かにレノへの善意から来ているが、レノが何も知らないのはライカのエゴであることを自覚している。

 事実を告げてライカの考えと衝突するのならお帰りいただくまでだ。


「ライカはそれでいいと思っているんだな?」


「いいと思っているわ。少なくとも今のところは」


「そうか」


 ライカの揺るぎない言葉にロウルが腕を組みながら考え始める。ライカが何をしようとしているのか、ある適度察したのだろう。


「もう一つ聞いていいか?」


「どうぞ。答えられる範囲でだけれど」


「理由を教えてくれ」


 現時点の彼なりの考えをまとめようとしてくれているのが分かる。

 その最後のピースとして今回の行動理由が必要ということであれば、話すしかない。


「…彼には家族がいるのよ。魔法使いではない、普通の人間の家族が」


 レノが初めて店を訪れたとき、一目で同胞だと気づいた。しかし彼の母親も妹も魔法使いではなかったのだ。もちろんレノ自身に魔法使いである自覚はない。


 レノと家族の間に血の繋がりがあるかは分からない。養子かもしれないし隔世遺伝かもしれない。

 それでも1つ確かなことは、何もしなければ彼と彼の家族や周りの人の時間の流れは、近い未来大きくかけ離れるということである。

 離れた結果どうなるかは予想しかできないが、大抵は悪い方に転がるものだ。


 再びレノが店を訪れたとき、彼が必要としているのはこのことだと思った。

 だが、家族との血の繋がりに疑問を生じさせるこの事実をレノに告げる決心が付かないのだ。


「そうか……」


 ロウルは完全に納得したというよりは納得せざるを得ないといった反応をする。

 そこまで受け入れてもらえたら十分及第点だ。


「それならあの首飾りは一時しのぎか?」


「ええ、ご認識の通りよ。覚醒しないようにしているだけ」


 レノの首から下がる青色の石を思い浮かべる。あの石にはこの家への通行証としての機能以外に覚醒を防ぐ魔道具としての機能を持つ。


 覚醒を防ぐ魔道具。

 魔法使いは基本的に成長し最盛期で覚醒する。しかしそれ以外にも周りの強い魔力に当てられたり、心身に強い衝撃を受けたりすると最盛期前に覚醒してしまうことがあるのだ。

 これは身を守るための防衛本能のようなものではあるが、覚醒した時点で不老になってしまうため、ある程度成長するまでは子供に持たせるのが習わしとなっている。


 だが一生付けさせるわけにもいかないし、付けていたからと言って一生防げる確証もない。

 そもそもそういう目的の物ではないのだから。


「…そんなことできるのか?」


 ライカの目的を完全に理解したらしいロウルが問う。その言葉には未知の魔法に対する若干の好奇心が含まれているのが感じられた。理解と順応の早いことだ。


「研究中よ」


 掟に反しないが倫理的に問題がある研究、それが魔法使いを魔法の使えない普通の人間にする方法だ。

 ライカは魔法使いであるレノを、覚醒する前に何らかの方法で一生覚醒しないようにしようとしているのである。


「実行する時は俺も呼べよ」


「研究結果が気になるのかしら?」


「違わないけど違う!共犯になるって言ってるんだ!」


 冗談を返したら本音が漏れて来た。色々と台無しである。

 だがライカの気持ちが軽くなった。


「少しは好奇心を取り繕いなさいな?…分かっているわ、ありがとう」


 クスクスと笑えばロウルはこれが魔法使いという者だと開き直り始めた。


「あーーー朝から重い話をしたらお腹がすいたーー!」


「そう言うと思って彼に貴方の分の朝食もお願いしておいたわ。彼の料理は美味しいの。感謝なさい?」


「さすがライカ!ありがてぇ!」


 朝食が食べられるという事実に重い空気は完全に消える。

 これでレノの待つ家に戻ることライカは心から嬉しく思った。

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