良き隣人
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※今回ちょっとだけ暗い話です
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「ライカ聞いてもいい?」
自分の分の紅茶を持ってきてソファーに座ったレノがおずおずとライカに話しかける。
「何かしら?」
「何聞いても怒らない?」
「怒りはしないけど、答えられないものはあるわ」
少し困ったようのライカが微笑む。その美しい顔を見てレノは意を決し、町で聞いた時から気になっていた事を質問する。
「ライカって、何歳?」
「あらあら、答えられない質問ね?長く生きすぎて、自分の歳かなんて忘れてしまったわ。強いて言うなら800歳くらいかしら?」
「!!??」
やっぱり!と言う気持ちと、嘘だ!という気持ちがレノの中で叫び合う。
そんなレノの反応にライカが不思議そうに小首を傾げる。
「魔法使いは長命って物語りの定番ではなくて?」
「…あまりにも見た目に反していて……」
絞り出した声にライカが鈴のような声で笑う。その笑い声にレノはなんだか恥ずかしくなり、顔が赤くなるのを感じて下を向く。
そんなレノの頭を、丁度良い所に差し出されたと言わんばかりにライカが撫でる。
「魔法使いの実態なんて知らなくて当然なのだから、気になった事は聞いてちょうだい?…私達は魔法使いとして覚醒した時点で不老になるのよ。不死ではないけれどね」
「ありがとう……」
「ほら、他に気になる事はないかしら?」
イジけた子供をあやす様にライカが問いかけてくる。ライカにとって、自分は赤子も同然なのだろうか。
(こうなったら気になってる事を聞いてやる……!)
無知で当たり前ではないかと開き直ると色々と吹っ切れた。そしてここぞとばかりに他の質問もする。
「じゃあ、普通はこの店に2回以上来れないって本当?」
「そうね…結果的に2回以上来れないだけで回数制限をしている訳ではないわ。実際、貴方は来れたのだから。ココには必要な人しか辿り着けないようにしているのよ。一度来て問題が解決したのならもう不要でしょう?」
その言葉に引っかかりを覚える。
不要ではないのだ。町の人達はライカの力で守られている事を知っているし、礼を言うために再び町を訪れた人も居る。リアもだ。みんなライカに会いたがっている。
「…お礼を言いたいだけの人は来れないの?」
「お礼を伝えるだけ、と言うのは辿り着けないでしょうね」
知っている事を聞けば何事も無いかのように答えが返ってくる。それがどうしようもなく悲しく感じられた。
「町の皆さんが、ライカにありがとうって、お礼を伝えてって言ってたよ。会えないからって」
ライカは不思議そうな顔をする。
「お礼を言われる事はしていないわ?」
「町の人達はライカがずっと町を守ってくれていると思ってるよ?川の氾濫を止めたりとか迷子を助けたりとか…そのお礼を伝えたいって言われたよ」
「それは逆ね。私から町の人達に対するお礼よ。ここに住まわせてもらっている事へのね。良き隣人になれているのなら良かったわ」
ライカは目を伏せて紅茶を飲む。『住まわせてもらっている』何て、自分には元々住む権利は無かったみたいな表現だ。
「隣人と言うけど、ライカは町に出ないって聞いたよ?」
「出ないわ。ずっと姿の変わらない私の姿を見せ続けるのは町の人達によろしくないでしょ?」
「そんな事ない!みんなライカに会いたがっていたよ!」
反射的にライカの言葉を否定する。実際に自分はライカに対して良くない感情は一切無いのだから。
「そうね、きっと会ってしばらくは大丈夫でしょう。でも段々と老いていく自分の側に、老いない私の姿があったなら……私に向ける感情は恐怖か嫉妬か、それとも憎悪なのか…どうなるかしらね」
「っ……」
言葉が詰まってしまう。
人は臆病な生き物だ。20年しか生きていないが、レノも立派な大人である。人の汚い部分は見てきたし想像もつく。
ポンっとライカが手を叩き空気を変えようとする。
「暗いお話になってしまったわね。ごめんなさい。要は良き隣人と思われている今の距離感が丁度いいという事よ」
こんな話をしていてもライカは笑顔を保っていた。そんな顔で話ていい内容じゃないと否定したくなるが、言葉にできない。
だが1つだけどうしても伝えたい確信があった。
「僕はずっと、一生、ライカに感謝し続けるよ!」
「…そう、ありがとう」
何で自分が礼を言われているのかは分からない。
ただ、今自分の目に映るライカの姿は自分より長く生き、強大な力を持つ魔法使いではなく、自分よりも幼い一人ぼっちの少女の様に思えた。
(あぁ…この人を1人にさせたくないな)
レノはそんな分不相応な思いを胸に秘めたのだった。




