新たな美味しさ
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「長く引き留めてしまってごめんねさね。お話できて良かったわ。郵便局は向こうの通りよ」
「こちらこそ皆さんと話せて良かったです!道もありがとうございます。これから町の一員としてよろしくお願いします!」
レノは集まって来ていた人達から歓迎の声をかけてもらえ、温かい気持ちになりながら郵便局に向かう。
(新しい町でもやっていけそう…!)
ライカに言われて町に出て来た当初、少なからずあった不安は無くなっていた。
郵便局でも珍しそうな目で見られたが、今日から魔法使いの元で働くという事を伝えると皆歓迎してくれた。
「他所から来た人間に寛容な町なんですね」
「そういう訳でもないさ。閉鎖的でもないが別に寛容って程じゃない。にーちゃんは別ださ。魔法使い様が側に置くんだったら悪い奴じゃないだろうって、みんな分かるのさ!」
郵便局に来ていた男性客が笑いながらレノの呟きに返す。
公園の人達に続いてあっさり受け入れられてしまったためこの町の特長なのだろうとレノは思ったが、違ったようだ。後ろ盾であるライカへの信頼によるものらしい。納得である。
レノの呟きに返してくれた男性客に甘え、質問してみる。
「つかぬことを伺うのですが、僕これから少し町を見て歩こうと思っているのです。何かお土産になる物があれば教えて欲しいのですがオススメありますでしょうか?」
「お土産ってのは魔法使い様にか?」
「はい、魔法使い様にです!」
レノの言葉に郵便局が一瞬静まり返る。そしてザワザワと囁き声が徐々に湧き上がってきた。
何事かとレノは耳を澄ませる。
「魔法使い様の好みって何かしら…?」
「そんなの知らないぞ…これから寒くなるから暖を取れる物とかか?」
「魔法使い様は天候を変えたって聞いた事があるぞ。なら暖をとるくらい俺たちの道具なんぞ要らんだろ」
「食べ物とかの方が外れは少ないかしら…」
「確かにそうね、何が良いかしら?魔法使い様のお口に入る物なら妥協は許されないわね…!」
囁き声は郵便局員、客関係問わず土産の検討をする内容だった。レノはハッとす。
(ライカは直接的には町の人達と関わりがないから、皆さんも好みが分からないのか…!僕は実際に会えたんだから、僕がヒントを思い出さなくちゃ…!)
そう思い当たり、急いで昨日店を訪ねてから今日町に出るまでの短い時間を思い返す。何か土産のヒントがあるはずだ。
「あっ…ジャム!今朝パンにたっぷりイチゴジャムを塗ってた!きっと好きなんです!」
「でかした、にーちゃん!!」
レノの閃きに郵便局の中がワッっと明るくなる。みんなで一つの難問を解決できた様な一体感だ。
「ジャムなら2つ向こうの通りに専門店があるさ!言ってみると良い!」
「紅茶にジャムを入れるのが最近流行っているのよ。魔法使い様が紅茶をお嫌いでなかったら如何かしら?」
「茶の店も2つ向こうの通りにあったな!」
方針が決まればオススメ情報が軽快に出てくる。
「あ、ありがとうございます!行ってみます!」
「おう!魔法使い様によろしくな!」
「はい!任せて下さい!」
レノは大きく頷き、礼を言いながら郵便局を後にした。
**********
家に帰るとライカの姿が見えなかった。きっと自室か工房に居るのだろう。
そう思いながら早速お土産を広げる。ジャム4種類、紅茶2種類だ。
店で事情を話したらどちらの店も嬉々として見繕ってくれた。特に紅茶の店でオススメされたジャムと紅茶のセットを見つめる。
(紅茶にジャム…試した事ないな…)
試した事が無い物はライカに勧めづらい。そう思いながら自分用に紅茶を淹れる。濃い目が良いらしい。
出来上がった紅茶にイチゴジャムをスプーン一杯分入れて混ぜる。そしてキッチンで立ったまま恐る恐る一口飲む。
(これは…フルーティーで甘くて美味しい…!)
人気になるのも納得である。
新たな美味しさを味わっているとライカが工房から出てきた。
行儀の悪い姿を隠すため、咄嗟にティーカップをライカの死角に隠す。
「あら、おかえりなさい。町はどうだったかしら?」
「ただいま!皆さんいい人達で町も綺麗で良い所だった。お土産買ってきたよ、紅茶とジャム!」
「まあ、お土産なんて気にしなくて良いのに…でも、ありがとう」
ライカがフワッと微笑む。買ってきて良かった。
「買ってきた紅茶、今飲む?」
「ありがとう、いただくわ。先程から紅茶の良い匂いがしていると思っていたのだけれど、お土産だったのね」
「試しに淹れて(入れて)みてたんだ。待ってて、すぐに持っていくよ」
レノの言葉にライカはコクリと素直に頷きソファーに腰掛ける。
その手前のテーブルに濃いめに入れた紅茶とイチゴジャムが入った小皿を置く。
「……なるほど?」
目の前に置かれた物を見たライカが何かを察し、小皿のジャムを半分紅茶に入れて溶かす。
「良い匂いね…いただきます…」
そう言い、一口飲む。
「これは、なるほど…」
そして小皿に残っていたジャムを全て入れ、また一口飲む。
「存在は知っていたけれど初めて試したわ。美味しいのね…」
「最近この飲み方が流行ってるんだって教えてもらったんだ!気に入ってもらえたのなら良かった」
「ええ、気に入ったわ。またお願いしたいわ。ありがとう」
「勿論!」
ライカの評価にレノは心の中でガッツポーズをしながらキッチンへ自分の分を取りに行く。町の人達にも報告しなくてはいけない。
「1人だとこういう冒険はしないものね……」
透き通る鮮やかな赤い色になった紅茶を見つめながら呟かれたライカの言葉は、レノの耳に入ることは無かった。




