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第六話 寝起き

奎援がウェルト王国について、寝始めてから一週間が過ぎていた。当の本人はまだ眠っていた。

その間に騎心は剣の稽古や、情報収集、奎援がいつ起きてもいいように、とこの世界での知識を収集したり、奎援に頼ってばかりではなく、強くなって、奎援の負担を減らすために剣を握ったりしていた。

一方、瑞姫はこっちの世界での料理や、裁縫を教わって、城のメイドさんたちと一緒に働いていた。実際はただ、暇だからお手伝い~という理由でやっていたのだが、見慣れない食材や、見たことのない裁縫道具に心惹かれて本格的に自分の楽しみのためにやっているのだった。しかし、裁縫は、自分の服と騎心の服、奎援の服と三人分を作ってからは手をつけなくなった。三つとも黒を基本とした服で、奎援の服に至っては真っ黒である。




「それにしても、奎ちゃんがここにきて一週間たったのに、全然起きないね」

「そうだね・・・とりあえず、奎援の部屋に行ってみる?もしかしたらそろそろ起きるかもしれないし」

「うん!」


そういって二人は奎援の部屋へ向かって歩きだした。最初は広くて迷っていたが、今は慣れたのか迷うことはなくなっていた二人だった。

奎援の部屋の前まで来て、ドアをノックする。返事が返ってくるわけでもなく、ドアを開け、部屋に入る。


「ん・・・・・な・・・・?ここ・・・は・・」

「あ、奎援?起きたんだ、よかった~・・・」

「おはよ、奎ちゃん、ここはウェルト国だよ」

「んー・・・おはよ~・・・っていってもまだもの凄く眠いけど・・・」


上半身だけおこし、眠そうな目をしている奎援を見て、二人は頷く。


「うん、いつもの奎援だね」

「だねー」


二人を尻目に奎援はベットからおりて体を伸ばすと、部屋から出ていった。あわてて瑞姫と騎心も部屋を出て、奎援のあとにつく。


「何処行くの?奎援」

「んー・・・、お腹減ったから何か食べに・・・」

「それならこっちだよ、奎ちゃん」


瑞姫が道案内するために先頭を歩く。それについていくように奎援も歩き出し、騎心もそれについていく。

しばらく歩いて食堂に着くと、中には誰もいなく、広々としていた。


「ふむ・・・・流石としかいいようがないな・・・。広い」


適当なところに座ると、瑞姫が何か作って来るねーっと言って厨房のほうへかけて行った。



「奎援、とりあえず、この世界のことについて、僕が教わったことだけでも話そうか?」


騎心がそういうと奎援は軽く頷く。それを確認して騎心は喋り始めた。


「えっと、まずは僕たちの住んでた世界にはいなかった、魔物といわれるものからね。魔物には二種類あるらしく、一つはモンスターって言われて、一定周期で増えたり減ったりして、いなくなることはないんだって。それで、人に害をもたらすモンスターもいれば、無害のモンスターもいるらしいんだ。んで、そのモンスターはたまに大量発生するらしい。ちなみに、ゲームとかでよく見たり聞いたりするギルドが扱っている魔物っていうのはこいつらのことをいうらしい」


そこまでいうと一息ついて、ここまではいい?と奎援に聞き、奎援もそれに頷く。


「魔物のもう一つは魔獣って呼ばれて、見境なく人を襲うらしいんだ。でも、知能も高く、戦闘能力も高いらしい。中には人の姿をした奴らとかもいて、言葉も普通に喋るって言ってたから、おそらく戦ったことがあるんじゃないかな?あと、魔獣は一人一つ特殊な力があるらしいから、並大抵の人じゃ殺されるだけって聞いたよ」


騎心がそこまで言うと暗い表情をした。奎援にはすぐに理由がわかったが、言葉にはしなかった。いや、出せなかった。

命というのはそれぞれ平等にある。それを奪う、いわば殺すということに何も感じなくなってしまう、平気になってしまう、それが普通になってしまう世界。元いた世界ではそんなことがなかったため、行き成り 死 というものが身近なものになってしまったのだ。


「そうなると・・・覚悟だけはしておいたほうがよさそうだな」

「そう・・だね」


そこまで話し終わると瑞姫が丁度料理を沢山持ってこっちにやってきた。


「なんか、張り切りすぎちゃって作りすぎちゃったよー」

「んー、大丈夫、きっと食べきれるよ」


そういって一旦騎心との会話をやめて、奎援は目の前の料理に手をつけ始めた。瑞姫は自分の手料理をおいしそうに食べている奎援を見て喜んでいた。

騎心もまた、奎援の食べっぷりと、いつもと変わらない親友(けいすけ)に安心し、微笑んでいた。

奎援がなんとか料理を全て食べつくし、苦しんでいるところにミリティアが来た。


「あ、ケイスケさん、もう大丈夫なんですか・・・?ってあれ・・・?なんか雰囲気が違う気がするのですが・・・」

「ああ、これがいつもの奎援です」


苦しくて喋れない奎援の代わりに騎心が答える。ついでにもう大丈夫ーとも言っていたが、騎心はあえてそれを言わなかった。なぜなら、すでに食べ過ぎて大丈夫じゃないからだ。


「ま、まぁ、それだけ食べられるなら大丈夫ですよね・・・。ところで、ケイスケさん、お父様があなたに会って話がしたいと言っているのですが、よろしいでしょうか・・・?」

「し、しばらく食休みの時間がほしいです・・・その後なら・・・・」


必死に喋ってる奎援を見て、騎心と瑞姫は顔をそらしている。肩がプルプルと震えていて、笑いをこらえているのは誰がどうみても明らかだろう。


「わかりました。お父様にはそう伝えておきますね。しばらくしたらまた来ますから、それまで待っていてください」


そういうとミリティアは行ってしまった。奎援はお腹がいっぱいになったことでさらに眠くなり、しばらく寝るから、何かあったら起こして、と二人に言ってテーブルに伏せてしまった。

奎援が机に伏せた後、二人はミリティアが奎援を呼びに来るまでその場を離れなかった。





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