第三話 初めての戦い
「よし、そろそろここにいるのも飽きたし出ようか」
唐突にそういう奎援に三人がは?っという顔をしている。
「奎援、今、なんて?」
「だから、ここから出ようって」
さも当然のように奎援が言う。
「あー・・・まぁ・・奎援ならできるんじゃない?どうやるかは別として」
騎心はこれまでのことを思い返して、奎援ならどうにかできるだろうと考えていた。瑞姫も奎ちゃんらしいね~っと言って奎援を眺めていた。しかしミリティアは違った。
「ここから出れるとして、そのあとはどうなさるのですか?それに、武器もなにもない私たちがたとえ出れたとしてもまたすぐ捕まってしまいますわ」
「ん?それには考えがあるから平気だよ。ここを出たら・・・そうだね。とりあえずミリティアを国まで送り届けようか。その後は適当にね」
奎援はそういって手を前に出し、大鎌を創造した。音もなく振られた大鎌は、鉄格子を最初からなかったといわんばかりに切り裂いていた。
「後は出口に向かって走るだけ。追っ手は俺が全てどうにかするさ」
奎援はそういって武器を大鎌から二丁拳銃に切り替え、弾を麻痺弾にして階段を登り始めた。
騎心と瑞姫はまぁ、奎(ちゃん)援だしねぇ~っと言って納得し、奎援の後に続いた。
ミリティアは状況が把握できなくてしばらくは呆けていたが、すぐ我に返り奎援たちの後を追った。
ミリティアが追いつく頃には周りの兵隊や騎士たちはぐったりと地面に倒れこんでいた。
「やっぱりこっちの世界には拳銃がないのか・・・好都合だな」
奎援は先ほどから銃を乱射していた。弾切れの心配もなく、殺すことなく相手を無力化できるので逃げるのには都合が良かった。麻痺も全身麻痺で下手したら一日くらいは動けないほどのものだった。
ミリティアは奎援の持っている武器も気になったが、何より奎援自身を気にしていた。自分とさほど変わらない年の人がこれほど違うものなのか、そしてこんな非常識な友人を持つ騎心や瑞姫はどうやって知り合ったのかなどと考えていた。
そして、しばらく走っているとようやく城の出口らしきところに着いた。そして、目の前には大きな扉があった。
「ふむ。なんかとてつもなくイヤな予感しかしないんだけど、騎心、どうおもう?」
「僕も凄くいやな予感しかしないんだけどね・・・・。大丈夫、奎援の足を引っ張るようなことはしないよ。二人のことは僕に任せて。ここに来る途中で自分が使える武器は確保しておいたからね」
「流石騎心、わかってるね。いけるかどうかわからないけど、隙が出来たら二人を連れて先に行ってくれよ?」
「奎援が負けるとは思ってないけどね」
この城の扉の先には大物がいる。そんな雰囲気が漂っているため、もしかしたら全員では逃げられない。だからせめて可能性をこめて自分が囮になる。奎援はそれを騎心に伝えたかった。逆に騎心もその言葉の意図を理解したからこそ、皆で生き残ろう、と奎援に伝えたかった。当然、奎援も騎心の言った言葉の本当の意味を理解し、苦笑いをしている。
しかし、ミリティアと瑞姫にはそんな意味もわかるはずもなく、ただ聞いているだけだった。
奎援は二丁拳銃から剣に変えて、扉を叩ききった。
「ほう、この扉を叩ききるとは、その武器の切れ味、相当なものだな」
どうやらこの扉は特別製だったようだ。そして扉の向こうにいたのは、周りが夜で、暗いのにも関わらずにはっきりと見える人。しかし、奎援は漂わせる雰囲気と気配で人ではないことを感じ取っていた。
「私は強者にしか興味がない。ここで一番の強者が残れば、他の奴らは普通に見逃そう」
そういうと剣を何処からともなく取り出し、その剣を眺めている。
「騎心、瑞姫とミリティアを頼む。行け」
奎援がそういうと状況が把握できない瑞姫とミリティアに事情を説明し、最後に奎援の方を向いた。
「ここから南に行った所に山がある。その山を越えればウェルト国につく、そこで」
短くそういうと二人を連れて騎心は駆け出した。
「やはりあなたが一番の強者でしたか、生憎、私は見ただけで相手の強さがわかってしまうので、嘘をついていたらここを通ろうとしたところで殺すつもりでしたが・・・そんなことはいいでしょう、では、始めましょうか」
奎援が手に持っている剣を構えたてから、攻撃を仕掛ける。奎援は相手の攻撃をよみ、軽やかに避けていき、隙を突いて攻撃を繰り出す。しかし、それも避けられてしまう。
そんなことを繰り返しながらお互い一撃も与えることがなく、剣がぶつかり合う。そして、二人とも後ろに下がる。
その最中、奎援が口を開く。
「お前、名は?」
その瞬間、二人はいっきに距離をつめ、鍔迫り合いになる。
「名、ですか?私の名はザープ。私もあなたの名を聞いても?」
そういってお互い距離をとる。
「奎援」
一言そういって奎援はザープに向かって走り出し、一瞬にして剣を新しく創造し、長さを若干のばした剣で下から上に切り上げる。
かすった程度だが、それがオープニングヒットになった。しかし、お互いの剣技では負けもしないし、奎援は剣では勝てないと悟っていた。でもそれでよかった。騎心たちが少しでも遠くに逃げれるように、そして、相手の力をはかるため。けれど、ザープをどうにかしないと追いつけない。奎援がどうするか悩んでいるとザープが高笑いをし始めた。
「楽しいな!強き者よ!」
「そりゃあ、どうも」
「ケイスケといったか?お前をここで亡くすには惜しい、生かしておいてやる」
奎援はこいつ、見ただけで実力がわかるとか言っていたが、嘘なんじゃないか?と思い始めた。しかし、どうやら相手は見逃してくれるらしいのでほっとした。
そしてザープはまたまた会おう等と言って何処かに消えてしまった。
とりあえず一刻も早く騎心達と合流するために城を出て、下街をかけぬけた。
ザープとの戦闘でかなりの時間をくってしまったらしく、辺りはじょじょに明るくなり始めていた。
外に出ると見渡す限りの草原があり、南を見ると山があった。その山目掛けて奎援は走り出した。
しばらく走り続け、先ほどの戦闘での疲れがたまっているらしく、眠気におそわれた。
眠気と戦いながらも走り続け、山のふもとまで来たが、どうやら限界が来たようだった。
「仕方ない・・・か」
奎援は近くの岩を背にして、足を投げ出すように座った。そして、眼を瞑った。
眼を瞑った数秒後、意識は無へと溶けていった。
一筋の風が奎援の頬を優しく撫でるかのように吹き抜けていった。
初めて評価を貰いました。
なんか物凄く嬉しいです!
まぁ、単純な男なのでこの喜びをバネに頑張って行きたいです!
読んでくださってる方々、こんな作品を読んで下さってありがとうございます
まだまだ、至らないところは沢山ありますが、微力を尽くすのでお付き合いください