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51話 建国祭、王女と王子と再会

 入城するとそこそこの人出だった。


「陛下はまだお越しではないのですね」

「ああ、王陛下と王妃殿下は後程いらっしゃる。この時間の挨拶は王女殿下と王子殿下が行う」

「そうなんですか」

「姉さま」


 聞き知った声に振り向くとウツィアの父スツと弟チェプオが近づいてくる。


「御父様! チェプオ!」


 互いに挨拶をかわす。弟チェプオは大丈夫だろうかと思ったけれど、きちんとウェズに貴族の挨拶をしていたのでウツィアはほっとした。弟がウェズをあまり好ましく思ってないことは嫁ぐ前に感じでいた。


「少し話さないか」

「是非」

「御父様、チェプオも元気で?」


 にっこり笑顔で微笑む。それとは別の含みがある笑顔でウツィアの父スツはさらに頷いた。


「うむうむ。妻の見立て通りになったようだ」

「御父様?」

「ちっ」


 聞こえないよう舌打ちをする弟チェプオですら気づいた。ウツィアの母チェスタオツェの見立て?

 ウェズは先日チェスタオツェと話した手前、ウツィアの父が何を言いたいか察してしまう。


「なによりだ。ああ、うちの事業も安定しつつあるよ。公爵のおかげだ、ありがとう」


 具体的な事業の話をしている。するとウツィアの父スツが別の貴族を呼び紹介した。商会を通じて同じような境遇の貴族にウェズの援助金を配分したらしい。それもウェズが進んでやったという話になっている。ウェズは全てウツィアの父スツに任せていたので、話が少しずれていることに内心戸惑うものの話を合わせてその場を乗り越えた。


「にしてもすごい人数ね」


 合間をみて弟チェプオに話しかける。


「それぐらいの金額だったんですよ。あー、気に食わない」

「チェプオったら、やたら私の夫に厳しいわね?」

「だって姉さまあ」

「もう……次期当主として陛下に御挨拶した身なら、姉離れしなさい」

「そんな姉さまあ」


 ウェズの援助金の恩恵を受けた貴族が去る頃、王子と王女から声がかかった。


「ポインフォモルヴァチ公爵」

「殿下」


 普段挨拶をされる側なのにわざわざあちらから出向くとは珍しい。父と弟は軽く目配せしてその場を離れた。公爵夫妻として対面することがひどく新鮮に感じる。


「ウツィア、久しぶりね」


 庭が近い窓際に移動し、四人で話しやすくしくれた。


「はい。手紙を出さずにすみません」

「いいのよ。で? こいつどう?」

「どう、とは……」

(こいつ呼ばわりなの)


 国の英雄であるウェズが両殿下と親しいのは想像がつくけれど、王女の砕けた調子を見るにもっと違うなにかがありそうだ。


「大事にされてる? ウツィア傷つけたらボッコボコにしてやるんだから」

「はは、旦那様はよくしてくださいます」


 王女の変わらなさが嬉しくて気が抜ける。


「そう? ウェズって愛想ないし言葉足りないから大変じゃない?」

「その、最近はよくお話ししてくれますので」

「「お話し」」


 両殿下の視線がウェズに刺さる。当の本人は小さな咳払いをして渋々口を開いた。


「……なんですか」


 幾分いつもより言葉の調子が軽い夫の姿を見て、両殿下と本当に仲が良いのだと知る。二人は相変わらず疑いのまなざしで「ふ~ん」という相槌を綺麗に重ねていた。

 ウェズを不躾とばかりに見た後、ばっと勢いよく王女はウツィアに向き直った。


「ウツィア。こいつがひどいことしたら私のとこに来るのよ?」

「あはは」


 当然ボコボコにするのはセットだという。王子もなぜかうんうん頷いている。そこまで結託する必要があるのだろうかとウツィアは逆に自分の夫を庇いたくなった。


「その、夫は……先の戦争では終戦をもたらしましたし、英雄なんですけど」

「外聞と家庭内での評価は別よ」

「領地経営も優秀で私の出る幕なんてないです」

「そういうとこも大事だけど、今僕らが言いたいのは好きな人に愛を語るぐらいできないとだめってやつだよ」

「王子」

「なんだよ。この四人の中じゃ誰よりも年上なのに随分回り道してるぞ」

「王子」


 ウツィアは当然知りえていない契約結婚の話、王城でのこともすべて、両殿下からしたら回り道だ。


「あの?」

「ウツィア、こいつの女の好み聞いた?」

「え?」

「王女、悪趣味です」

(ウツィア本人だと暴露されたらたまらない)


 ウツィアは過去似たような話をしたことを思い出す。第三者である店の常連のウェズから聞いたことだ。本人から聞けるなら願ってもないとウツィアは瞳を輝かせた。


「なによ。ウツィアとの間を取り持ってあげるって言ってるのよ。いい? この私がよ!」

「結構です」

「このツンデレめ」

「つんでれ?」

「……」

(夫の好みの女性、気になるわ)


 相変わらず王女が古文書用語を好きなのは変わらない。ウツィアはその様子に微笑みながらも、夫の好みが気になって仕方なかった。

 王族付き側仕えの騎士が両殿下に近づき耳打ちをし、話しはここまでとなった。「後で」と言って離れていく。次にすぐ王と王妃が現れ、建国祭の挨拶が執り行われた。その間もずっとウツィアはウェズの好みばかり考えて全く話を聞いていない。


(例えば、この会場にいるかしら?)


 王の挨拶が終われば順番に並び貴族が挨拶を王に行う。当然ウツィアとウェズも挨拶に伺ったけれど、彼女の心はここにあらず。当たり障りなく済んだ挨拶の後、周囲を見回した。


(ウツィアは何を見てるのだろう?)

(ウェズの好きなタイプ……推しの話では年下で華奢だから社交界で有名な深窓の令嬢タイプ? ああ確かに細くて儚い、ああいう感じの方? 触れたら折れそう……まさか推しには言いづらかっただけで実は年上が好きとか? き、既婚者で許されざる恋してるとか? 私はあくまでカモフラージュで……そうなると実は推しが好きなんてこともありえるんじゃない? 随分深い話までしていたあたり信頼も厚いし、気兼ねない仲だわ……推しがそう思ってなくてもウェズの片想いもあり得る)


 妄想が突き抜けてきておかしな発想になっている自覚はない。最も後半は同一人物故だけれど。


(ウツィア、百面相してて可愛い)


 ウェズは暢気に自身の妻の可愛さに癒されていた。けれど気になるのは事実だ。


「ウツィア」

「は! はい!」

「どうした? 気分が悪いなら帰るが」

(心配)

キンガの「この私がよ!」って言うのが個人的に好きです(笑)。そして怒らないあたり、ウツィアのドレスアップはキンガ的にOKということです。ウェズは王女と王子に何言われるかひやひやしつつ、ウツィアに癒されるというちぐはぐさよ。


今日のちょこっと占い→みんなでわいわいするのもよき。けど暑いので水をたんまり飲みましょう。水大事。

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