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44話 ハネムーンベイビー

 自分の母と夫が話してる内容など露知らず、ウツィアは妹マゼーニャと薔薇を楽しんでいた。


「今年も見事に咲いたわね」

「でしょう?」

「早咲きの品種改良がうまくいってよかったわ」


 通常一・二ヶ月先に薔薇は最盛期を迎えるがウツィアの実家では早咲きの研究と生産を行い生花市場でウエイトをとった。


「にしてもマゼーニャ、さっきの質問なに?」


 夫は不快感を示していなかったけれど、人によっては大事になる。女性同士の茶会ならともかくだ。


「えー? だってチェプオお兄様すごく反対されてたでしょ? 気になってて……でも心配しなくても大丈夫そうですね!」

「え?」

「お義兄様、お姉様のこと好きそうだし大事にしてくれてるみたいなので」

「そんな風に見えた?」

「はいっ! 違うんですか?」

「そういうわけじゃない、けど」


 子供は未だ望めてないし、愛してると言われたこともない。以前よりは格段に関係はよくなったとは思うけど自信はなかった。でも周囲から仲の良い夫婦に見えるなら社交界は問題ない?


「お姉様だってお義兄様好きなんでしょ?」

「そうね」


 すんなり肯定できて、そこに驚いてしまった。自信がないと思っていたのに、気持ちは正直だ。


「最初はお金絡みって聞いたけど、すっかりお義兄様との方が自分の家庭って感じ。いいなあ、私も結婚したくなってきました。お父様にお願いしようかしら」

「お、ウツィアとマゼーニャじゃん」


 薔薇の向こうの道を歩くリストが話しかけてきた。久しぶりの幼馴染みの姿を懐かしく感じる。


「ウツィアがどうしてここにいんの? 結婚しただろ」

「旦那様と一緒に王都の建国祭に行くから途中実家に寄ったのよ」

「ふうん」


 屋敷の方に視線を送ると気づいていたウェズがリストを凝視していた。


「成程、あれが旦那か」

「リストはいつもの散歩?」

「あー、ミオに会った帰り」


 感の良いマゼーニャがすぐに気づく。


「ミオって……オドレゴシ辺境伯の娘ミオシチナ嬢?」

「おー、そうそう」

「マゼーニャよく知ってるわね」

「恋バナあるとこにマゼーニャありです!」


 古文書の言葉を覚えてきてて少し心配になった。


「ミオシチナ嬢が悩んでいらしたお相手ってリスト様だったんですね。早く結婚すればいいのに」

「簡単に言うなよ……」

「隠れて会ってるぐらいだものね。彼女今日こちらまでいらしたの?」

「お前と一緒。建国祭の社交界で王都に行くってさ」


 その途中、寄ってもらったらしい。お相手は辺境伯で距離はかなりあるから、こういうタイミングはチャンスだ。


「リストは行かないの?」

「おう」


 ちょっと野暮用がと急に言葉を濁し始めた。


「何? なにかあるの?」

「あー……お前をだしに使ったみたいで悪いんだけど、マリア・ヴイチック辺境伯夫人と会うことになってて」

「マリア様?」


 マリア・ヴイチック辺境伯夫人はウツィアの薬を購入する太客だ。

 そのヴイチック辺境伯夫人にリストとミオシチナが逢引している現場を見られたらしい。辺境伯同士、情報共有にミオシチナの領地にヴイチック辺境伯夫人が来ている時だった。


「お前の実家の領地の隣って言っただけで滅茶苦茶対応よくなった」

「マリア様にはよくして頂いているから」

「んで、ミオのお相手と深く話したいって」

「面接ね」

「おうよ」


 ヴイチック辺境伯夫人が認めたら案外うまくいくかもしれない。


「まあ俺んとこはそんな感じ。それよりもよ……あっちにいるのがお前の旦那だよな?」

「ええ、そうよ。ご挨拶してく?」

「いやいい。さっきからすっげえ目つきで睨んでくるし、このまま近づいたら殺されそう」

「そんなことないわよ」


 確かに屈強な戦争の英雄だけれど、むやみに斬るような人ではない。


「いやまああれは嫉妬だな」

「旦那様に限ってそんなことないわ」

「はっ、お前の前では年上の良心的な夫でも演じてるんじゃねえの?」

「なによ、知ったような口きいて。旦那様のこと碌に知りもしないくせに適当なこと言わないで」

「へー」 

「なに、その顔……気持ち悪いわよ」


 にやにや笑うリストを見て、からかって遊んでるわねとウツィアは内心毒づく。けれどマゼーニャも一緒にいやらしい笑い方をしているのでウツィアは納得がいかなかった。


「お前もいい新婚生活してんなあって思うと笑いが止まらねえよ」

「はあ?」

「大いに同意します! 私もさっき似たようなこと言ったんですけど、全然信じてもらえなかったです」

「そっかー、まあこいつ今までそういうのと無縁だったしなあ」

「なによ、二人して」


 確かに無縁だったけれど。

 でも良き家庭を作ろうと努力はしてるつもりだ。


「お姉様、結婚して子供作って素敵な家庭をって考えてるんでしょう」

「ええ、そうだけど」

「すごく相性の良い相手と結婚できたんだわ。お義兄様もお姉様が好きで仕方ないわけだし」

「そんな発言、どこにもなかったわよ」

「お姉様もお義兄様が好きだし」

「マゼーニャ、落ち着きなさい」

「好機です!」

「え? なにが?」

「ハネムーンベイビーです!」

「はい?」

ウェズがええかっこしいのは本当幼馴染の言う通りではあるんですけどね~。嫉妬ビンビンなのに気づいてほしい。そしてハネムーンベイビー(笑)。別に新婚旅行に来てるわけでもないのですがね(笑)。

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