17話 チンピラ二人現る
夏が終わろうとする頃、いつものように店仕舞いをしている時だった。
「お、あった。ここか」
「そんな貴族御用達感ないけど?」
外看板をしまおうと外に出ていた男装ウツィアの前に若い男性二人が立つ。二人とも腰に剣をつるしているが、領地内騎士団の既定の服を着ていない。悪意は感じなかったけれど、その見た目と態度、先程の言動からウツィアは警戒の色を強めた。案の定、外看板をしまった男装ウツィアに声をかけてくる。
「おい」
「……なにか御用ですか」
「ここは俺達の管轄してる土地だ。勝手に商売されちゃ困るんだよ。使用料払え」
またおかしなことを言ってくる。そんなことはありえない。ウツィアとてマヤの親戚に開業の書類を出してもらったが、使用料等については確認済みだ。
「この領地は全て領主ポインフォモルヴァチ公爵が管轄しており、許可も使用に際しての契約も済んでいます。貴方方が仮に公爵の代理でお越しになったとしても払うものはなにもありません」
「ああ? ここ相当稼いでんだろ。貴族がしょっちゅう来てるって聞いたぜ。利益の一割ぐらい寄越せよ」
「お渡しする理由がありません」
「なんだよ。お前これが見えねえのかよ」
と、一人が腰の剣を抜こうと柄に手をかける。
「おい、やめとけって。使ったことねえんだし」
「うっせえ、ここまできてひけるかよ。お前だって妹の薬代ほしいだろ」
「けどよ、なんか様子が違うつーか、考えてたのと違うつーか。あんまり事大きくすると大変だろ? お前だってばあちゃんいるんだし」
聞こえないように話しているけれど丸聞こえだった。でもその内容でウツィアの警戒が少し緩む。
(この人たちなんだかいい人っぽいわね)
妹の薬代と祖母の存在があってお金が必要ということだろうか。一瞬二人の事情をみてしまおうかと思ったけれど堪える。そんなほいほい使っていいいものではないし、使用制限は自分で決めたのだから。
「黙ってろって。これ見ればびびってすぐ金出すだろ」
「でもお前んとこも俺んとこもこれ家宝だろ? あんまりむやみに抜くのはどうかって。扱ったことねえし!」
「なんだよ、こんぐらい持てるわ、って重っ」
抜いたはいいが重さに地面に刺さる剣を見て素人だというのが丸分かりだった。ウツィアは冷静に二人の様子を受け止める。
「お引き取り願います。事情は分かりかねますが、金銭に関するご相談は領主様にすれば聞いて頂けるかと」
「うっせえな、お前これ見えねえのかよ」
後に引けないのか、剣を抜いてそれを大きく掲げた。
「う、重……」
「あ」
重さに耐えかねて掲げていた剣を無様に振り下ろしてしまった。長い剣はそのままウツィアの上の服を斬ってしまい縦に破けた。油断していたこともあり、一気に背筋が凍る。
「あ、やば」
「ほら言わんこっちゃない!」
「だってこれ重いつーか」
「てか、怪我! 怪我は?!」
心配して近づこうとした時、浮いた剣から金属音が響く。男二人の背後に剣が一つ飛んでいった。
「え?」
ウツィアの前にアイスブルーに近い銀色の髪が靡く。女装したウェズの背中で覆われる視界よりも、一緒にやってきた恐ろしい殺気に息を飲んだ。
「ひっ」
「な、なんだよ?!」
「……騎士団の者じゃないな? 何をしている」
引いてしまう程の殺気と剣の腕前を見て、やっぱり騎士だったのだとウツィアは震えながら悟った。
そして戦慄していたのは彼女だけではなく、声をかけてきた二人も同様で、すぐさま逃走の体勢をとる。
「い、いくぞ」
「おう」
追おうとするウェズの背中を見て咄嗟に声が出た。
「待っ」
途中で言うのをやめたものの、その言葉の意味を理解した女装ウェズは、ぴたりと動きを止める。けれど、背中を向けたまま視線と雰囲気は二人を追いたくて仕方ない様子だった。
(推しが騎士なら、この領地を荒らす人間を見逃すわけにはいかない。捕まえて旦那様の所に連行したいはず。でも……)
正直怖くて一人になりたくなかった。いくら人がよさそうな二人でも剣を向けられ斬られたのは事実だ。どうしても一人になれず、行ってとも言えない。
割とシリアスなんですけど、女装してるし男装してるんですよね! 見た目というか真実を知ってる身からすると、(っ'-')╮=͟͟͞͞ (シリアス) ブォン なわけです。タイトルもふざけてます(笑)。
今日のちょこっと占い→自分を大事にするのはいいことだけど、今日は自分中心を少し抑えめにしてもいいかも。ドーナツ食べるのがよき!




