14話 女装夫、占ってもらう 前編
「これ、どうです?」
「ああ。はーと型か」
(男性の姿でも可愛い)
「えへへ」
(笑ってくれるようになったあ)
二ヶ月常連をした女装ウェズは変わらずウツィアの推しだった。
今では女装ウェズと男装ウツィアのカウンター越しでのやり取りが若い令嬢たちの間で噂になる程だ。ウェズは黄色い声が男装したウツィアへのものだと思っているようだけれど、実際は女装したウェズに対してのものも含まれていると気づいていない。
「あ、この前もありがとうございました」
「ああ、怪我はなかった?」
「はい」
「相変わらずよく転ぶな」
「気を付けてはいるんですよ」
転ぶのを受け止めてもらうのも慣れてしまった。令嬢たちの前ではあまりないのに、ウェズの前ではどうしても転んでしまう。推しが近くにいて舞い上がりすぎているのかもしれない。ウツィアはよしと自分に気合いを入れた。その様子を見て可愛いと思う女装ウェズはいつも通りだ。
「……そうだ」
常連のご令嬢たちも帰り、閉店まで一時間程ある。
「ウェズ……その興味があればなんですけど」
「?」
「占い、やってみます?」
王城で王女キンガの紹介でしか受けられない占い。ここに店を構えてからウツィアは常連で信頼のおける客が望めば占いをすすめてみようと考えていた。
一方でウェズは王城での日を再び思い出してしまう。いつも後ろからどんな結果が出たか見るだけだったのが、正面から見ることが出来る。彼には魅力的な誘いだった。
「やる」
「その、僕じゃない人間が見る形になりますが良いですか?」
「構わない」
ウツィアは店の設定で、薬・化粧品を作る人間と占い師は同一人物とするも、男装をする自分と結びつけず別人が行っていることにしていた。
ウツィアはお店のドアに閉店の看板に変え、店の奥の別室へ案内した。暗い部屋に蠟燭の光が灯る静かな部屋に、テーブルが一つあり向かい合わせになる形だ。
「座って待っててください」
テーブルの半分からカーテンで仕切られウェズが座らない側がどうなっているかは分からない。テーブル自体もカーテンで囲われた個室のようだ。
「お待たせしました」
暫くして男装時からさらに声を変えたウツィアが入って来る。大きめのローブにフードを目深に被って顔は一切見えない。
「お話は聞いております。ゆっくり始めましょうか」
「ああ」
「なにを占いますか?」
特に考えてなかったウェズは言葉に詰まった。ただ対面でウツィアと占いをしてみたかっただけで、具体的に何を占ってほしいかは決まっていない。言葉に詰まる様子に言いづらいことでもあるのだろうかとウツィアは考えた。
「若い女性ですと恋愛や結婚の占いが多いのですが、好きな方はいらっしゃいますか?」
「……気になる人なら」
目の前にいる、とはさすがに女装してても言えなかった。
「では恋愛で、好きな人とのことをみていきますか?」
「ああ」
ここで仕事の占いに変えた所で、話を進めて自分の仕事から正体がばれても困る。お金については心配しなくても潤っているし、ここは女性らしく恋愛について占ってもらうのが妥当と判断した。
「話せる範囲で構いませんが、好きな方とはどのような関係ですか?」
「……恩人だ」
結ばれなくてもいい。相手が幸せならそれでいい。その為に出来ることをしたいと女装したままウツィアのことを想い語った。
(推しが慎ましい……辛い……その恋、めっちゃ応援する)
これ以上の事情は聴かずにウツィアは得意のカードを引いた。
目の前で華奢な指がカードを操るのをウェズはじっと見て、王城にいた頃に夢見ていた向かい合って占ってもらうことが叶い喜びに浸る。
「おや、秘かな恋でもしてますか?」
「秘かな?」
「暗がりで光を灯して恋する人を見ている、的な」
「……見守っていきたい気持ちがある」
もう一つを指さす。
「自分に自信もないようですね」
「ああ、そうだな」
逆さになったカードは王城でも出たからよく知っていた。
「前も同じのが出たな」
「え?」
ウェズの難しいところは、どの姿もウツィアと分かってはいるものの別人として見てる部分もありつつ、女装時と通常時の自分ですら別人と見てる部分もあるので、妙なシチュエーションでウツィアへの想いを吐露してしまったりするわけです。最後の台詞は墓穴ですが(笑)。
今日のちょこっと占い→休む。とにかく休む日。休憩はこまめに、睡眠もたっぷりとりましょう。




