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NO.2/屋上

――屋上。




空一面に広がる青。


それをより美しく際立たせる雲の白。


心地よい風…。



その場所を取り囲むフェンスにつかまり、


下を覗いてみれば――絶景。



人がゴミのようだ!とは、まさにこの事だろう。

あらゆる建物が小さく見えて、なんだか世界がちっぽけだ。


解放感に満ちたその場所で、

大の字で寝転がったりしたらもう最高。


宙にふわふわ浮かんでいるかのような錯覚に陥る。




そこは男の夢。




前ふりとほとんど関係性はないが、

女の子に告白されるとしたら屋上(ここ)と、相場が決まっている。


こんな気持ちのいい爽やかな場所で告白なんかされたら、

相手も見ずにうっかりとOKを出してしまいそうだ。



ここでなら、

何をしても『青春』って感じがする、


そんな場所。




「あ、裕美(ゆみ)ちゃんのタコさんウインナーうまそう。ちょっと頂戴」



「もーう、りっくんったら」



同じクラスの菊池(きくち)裕美(ゆみ)


ゆったりまったりとした穏やかなその声と、とろんとしたたれ目がまたなんとも可愛らしい。


癒し系……


癒し系は大事だよ。うん。



「仕方ないなあ、はい」



渋々、弁当箱の中の隅にあるタコさんウインナーをフォークに刺し、


そのフォークを隣にいる俺に向ける、裕美ちゃん。

しかし、俺はそのフォークを取ろうとしない。



「…りっくん、どうしたの?」



その質問には答えず、あぐらをかいた体制で両手を前について体を裕美ちゃんのいる前方に傾け、顔を突き出す。


その瞬間、裕美ちゃんの頬に朱が走ったのを俺は見逃さない。



……ふふ。


ニヤリと笑って、



「食べさせてよ」



そして、口を、あー と促すように開ける俺。



「…し、仕方ないな。今日だけだよ?」



そして、ウインナーの刺さったフォークを俺の口に運ぶ裕美ちゃん。


俺は、ぱくりと一口でウインナーを食べ、わざとらしく、その、先程まで裕美ちゃんが使っていたフォークをぺろりと舐めた。


ここで必殺上目遣い!



「……っ!」



赤面する裕美ちゃん。

どれほどの衝撃だったのだろうか、

その指は力をなくし、フォークがカラン、と音を立て地面に落ちた。



「…間接キス、しちゃったね」



ニヤリと笑い、意地悪げにぺろりと下を出してみせる。




ふっ、これで落ちない女は――いない。




「おいしいよ、裕美ちゃん。

これ、もしかして裕美ちゃんの手作り?」



裕美ちゃんにとびっきりの笑顔を向ける俺。



「そ…そう、だよ。

でも…炒めただけだし、タコさんウインナーくらいで…大袈裟だよ。


――どうせなら、こっちのたまご焼き褒めてくれた方が…嬉しいな」



裕美ちゃんは、そう言って、たまご焼きを刺したフォークを俺の方へと向ける。



ふっ、――落ちたな。



そして、そのたまご焼きを躊躇いなく口の中に入れる俺。



「…お、うまいじゃん!

やばい、これ今まで食ったたまご焼きの中で一番うまい!!」



「そうでしょお~。よかった!」



そう言って笑う裕美ちゃん。まさに天使の微笑み。



「ちょっと律斗(りつと)ぉ、裕美のばっかずるい~。アタシのも食べて!!」



裕美ちゃんの隣にいた女子が、そう言って俺の口元にプチハンバーグをねじ込む。



「ん"っ! ごほっごほっ!!」



むせた。



「ご、ごめん! アタシ、つい!!」






プチハンバーグの女子が焦って謝罪する。



「ああ~、りっくん大丈夫?」



心配して俺の背中を優しくさすってくれる裕美ちゃん。



「ごふっ、大丈夫…ん、ん、ん…。


…うん、すごくおいしいよ!!」




秘技、(スーパー)無垢、優しさ100%(ひゃくパー)ときめきスマイル!!




俺の、このとっておきの笑顔で、落ちない女などいないだろう。


現に、目の前の女子は皆、頬を朱に染め、目を輝かせている。



俺の必殺技さ…。







――て、あれ?





視線。




誰かが、この俺のハーレムをじっと見つめている。




顔を動かすと、俺を睨みつける影。



肩までの短い髪、


眼鏡、


今時珍しいほど従順に校則を守った制服のスカート丈。




何かを大事そうに抱えている。






「誰…?」

 

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