誰がための手紙
俺の名はクレイ・グレイティ。
ある問題で頭を悩ませている。
今日もテレビのニュースで報じられているのはとある手紙について。
キャスターは言う。
あなたは知っているだろうか?
書いた人も、誰宛のものかもわからない、そんな不思議な手紙がこの世にある、と。
その手紙は世界中の歴史家や学者が考察を繰り返してきたが、今のところ誰も答えに辿り着いていないらしい。
と。
今やインターネットの普及により、手紙を書く人は減ってきているが、皮肉なものでその手紙の内容はすぐに確認ができる。
「検索ワード:誰がための手紙」…と、早速出てきた。
〜誰がための手紙〜
私は言葉を話すことができない。
あなたは、そんな私を優しく包みこみ、大事にしてくれましたね。
でも、幸せな日々は長く続かなかった。
ある日あなたは禁じられた実験に手を出そうとしていた。
喋れない私にできることは、あなたに精一杯、やめてくださいと願うことだけだった。
でも、あなたは気づいてくれなかったね。
あなたは私を暗い箱の中に閉じ込め、扉を閉めてしまった。
そして、あなたは禁じられたボタンをためらいもなく押してしまったね。
そのあとは早かった。
すぐに辺りが光り、一瞬にして私は霧散した。
私はあなたに何かしてしまったのでしょうか?
あなたは私になぜ優しくしてくれたのでしょうか?
そして、あなたがくれた幸せはなんだったのでしょうか?
どうか、もう二度と同じ過ちは繰り返さないで…
願わくば、これ以上私と同じ犠牲が生まれません様に。
天国から見守っています。
愛しいあなた。
PN.CG
これは俺が何気なくテレビに匿名で投函した手紙だ。
ん?そう、作者、俺。俺なの。
なんで名乗りを上げないのか?
だって…やれ核爆弾だ、やれ人体実験だ、やれ結ばれない愛だとか、色んな話しで盛り上がっちゃってるんだもの。
…今更言えない。
レンチンした卵の気持ち、だなんて言えない。