リアスポイラー
籠のような飛行体に羽のような部品が取り付けられていた。
「これ何?」
「リアスポイラー」
「なんでついてるの?」
進はめんどくさそうな顔で美香を見た。
「車の後ろ(リア)についてる羽がもともとのもので、空気抵抗とかを減らす役目があるんだよ」
「抵抗を減らすのはスタビライザーじゃないの?」
「それはタイヤとタイヤの間をつなぐ箇所についてるもんだろ?」
「えー、健ちゃんがリアスポイラーのことスタビライザーって言ってたよ!」
「健のやつ、勘違いしてるんだよ!」
これだから女は!と進は内心舌打ちしていたが、美香はそうだろうと予想がついていた。
「だって、中学校で家庭科と技術男女でわかれてたんだもん!進だって、ピンキング鋏ってどんなのか知らないでしょ?」
「へえへえ。おたくが悪いわけじゃないですよ」
「ぶーぶー」
進はノートパソコンで制御しながら、籠を浮かした。
「すごーい、ほんとに浮いてる」
「これで空中散歩できるんだ」
「ほんと?!」
一気に期待を込めたまなざしで進をみつめる美香。
どんなもんだい、と進は鼻高々。
「高度は家の屋根の上くらいからビルの高さくらいに設定」
「なんで?もっと高く飛んでもいいんじゃない?」
「飛行機の飛ぶ高さに抵触しないように気を配ってるんだよ!いろいろ航空法とかややこしいから」
「空気が薄くなるからじゃないの?」
「どんだけ高い場所なんだよ!!!大気圏とか熱圏とか対流圏とかべんきょーしろよ!」
「ごめん。悪気はないのよ」
「わかってるよ」
実際に二人して籠に乗ってみる。
「なかなか浮かばない。お前体重増えたろ?」
「なんのことやら」
「痩せろ!」
ギャーギャー。
がっくん。
どしん。
騒いだので、籠がバランス崩して倒れて落ちた。
幸いそんなに上まで浮かんでいなかったので、二人とも怪我はなかった。
「あんまり高く飛ぶと、落ちたとき危ないね」
「わかったから俺の上からどいてくれ!重い」
「そんなこと言うのはどの口だー。必殺妖怪子泣き爺」
「ぎゃー」
いつまでも大騒ぎだった。