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拒絶された

「うぅ……全然話しかけるタイミングないよぉ……」


話しかけるタイミングをうかがっていたのだが、授業が終わるとコータはすぐに百山君の席に行ってしまう。


「もう、いっそのこと呼び出したら?靴箱の中に手紙入れて、体育館裏で待ってますみたいな」


「い、いやいや!そんな告白みたいな……」


「ある意味告白みたいなもんでしょ」


「うぅ……」


「いや、あれだけ避けられてたら来てくれないかも……まあ、頑張れ」


うぅ……親友の優しさに泣きそう……。昨日から、ちゃんと話ができる機会を作るためにいろんなアイデアを出してくれている。



「今、幼馴染って聞こえた……」


「え?ほんとに?というかずっと見てるなと思ったら、聞き耳立ててたの?」


「いや、何話してるのかなあと思って……」


「聞き耳立ててるじゃん」


はい……立ててました……。でも、今絶対私の話をしてる。昨日追っかけたりしたからだろうか。


……。今伊織、「ずっとちらちら見てるな」って言った?いや、今も見ているわけだけど。もしかして、コータにもばれてる?あっ、百山君こっち見た。そして、微かに聞こえる百山君の声。


「昔付き合ってたとか」


百山君がこっちを見たときに反射的に視線をそらしたのだが、またコータと百山君の方を見てしまう。コータの声は百山君に比べて小さくてほとんど聞こえない。


「……………家で…………………………んだけど、中2……………………『一生………………』って………………。付き合っ……………考えたこと…………………。妹……………………たというか」


いくつかの単語を辛うじて聞くことができた。中2と言われるだけで胸が締め付けられる。妹とも聞こえた。私のことだろうか。妹と言ってくれるくらい大切に思っていてくれていたのかもしれないということが胸を締め付ける。そのあとからは、「結構」だとか「昨日」だとか「幼馴染」だとか、私のことを話しているのだろうが詳しいことはわからない単語しか聞き取れない。


あ!仲直りって聞こえた。百山君の声だ。突然自分が望むものがコータの友達の口から飛び出したことで、驚きとコータの返答に対する期待と不安で感情が大渋滞を起こす。今まで以上に耳を澄ませると、その必要がないくらいの声でコータの返答が聞こえてきた。


「いやいやいやいや!」


その先は聞こえなかったが、明らかな拒絶の声。いや、聞こえていたのかもしれないが、私の頭の中には入ってきてなかった。もう頭が真っ白になってしまって何も考えられなかった。現実から目を背けるように机に突っ伏して、涙が出てくる目を自分の腕に押し付ける。


少ししてチャイムが聞こえた。ああ、3時間目はなんだっけ。鼻をすすりながら時間割を確認して、教科書とノートを取り出す。ああ……、ダメだ……。全然頭に入ってこない。


やっぱりコータは私のことが嫌いになっちゃったんだ。これからどうすればいいだろう。もう、話しかけようとするのもやめたほうがいいのだろうか。色々頑張ろうと思ってやっていたことも、結果的に迷惑しかかけてない。あんなに拒絶されるくらいだ。もう仲直りをするのは絶望的。ああ、もう……コータと話すことはできないのかな……やだやだやだやだ。でも、もうどうしようもない。私が悪いんだ。全部私が悪い。完全に自業自得。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。お願いだから、私にもう一度チャンスをください。もう一度、もう一度だけ……。でも――



机に突っ伏しながらずっとぐるぐると同じようなことを考えていた。いつの間にか3時間目が終わったようで伊織の声がする。


「ちょっと香奈!」


「うん?……ああ、伊織……」


「こっち来て!」


私は伊織に腕をつかまれて、少しざわついた教室から廊下に連れ出される。そのまま歩き続けて、どこに行くのかと思ったら着いたところは、屋上への扉がある、階段室と言われるところ。屋上は開放されていないので基本的には人が来ない静かなところだ。


「ちょっと落ち着きなさいよ!」


「だって、だっでぇ……」


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