対抗リレー
もやもやぁーん…………
あと少しで、体育祭は終わりになってしまう、そんな時間になっている。もうクラス対抗の種目は一つだけで、その前に、余興のような種目が一つある。
その余興のような種目、部活動対抗リレーに私も出場することになっている。毎年、運動部は気合が入っているようだけど、文化部にとっては出し物のようなものだ。
「ほーら、結先輩、やる気出してください」
「やだあ……。お願い、伊織。うちの分も走って……」
「嫌ですよ。4人で走るものなんですから」
「くぅ……」
「今年はまだ新入部員いないんだから、こういうところでアピールしないと」
「もうこの時期になって入ってくる奴なんていないって……」
嫌そうにしているこの先輩は、大倉結先輩。奇術部の先輩で、小柄で眼鏡をかけていて、文学系少女といった感じの容姿をしている。面倒くさがりで、更に運動は苦手だからか、もうすぐ時間になるというのに駄々をこねている。
「しかもこんな格好して……」
今の私たちは体育着にマントを羽織るという格好だ。
「ほら、結、いまさらそんなこと言ってもしょうがないだろ?やるなら楽しんでやらないともったいないぞ?」
「……わかった」
もう一人の奇術部の先輩である、相川克明先輩が結さんの頭をなでながらそういうと、素直に言うことを聞く。嫌だ嫌だと不満そうにしていたのに、もう表情は少し明るくなっていて、撫でられた頭を自分で触りながら顔を少し赤くしていた。
仲がいいのはいいけれど、イチャイチャしているのを見せつけられているようで、今の私には少しダメージが大きい。2人はもう三年生で、相川先輩の受験勉強が大変だとかで部活に出る日も少ないし、私の追試があったりしたので、このイチャイチャを見るのはなんか久しぶりな感じがする。
「くぅ……でもやっぱりなあ……。香奈は恥ずかしくないの?」
「へ?……そんなに、ですかね。結さんは気にしすぎですよ。……似合ってますよ?」
「こんな格好似合ってもあんまりうれしくない……」
「まあまあ、それより、走る順番はどうします?」
「最後は相川先輩か結さんでしょ?」
「やだ!かっちゃんお願い!」
「……あ、名前順とかどう?」
「嫌ですよ!私が最後になるじゃないですか!」
私は霧嶋だから、名前順だと結構前の方になるはずなのに、なぜかこの部は他の人が全員ア行なので私が最後になってしまう。
奇術部は、シルクハットと特殊な杖をバトン代わりにしてリレーをするのだけど、最終走者はその杖から花を咲かせるマジックをする予定だ。難しいことではないのだけど、やりたいものでもないのでみんな押し付け合いのような形になっている。
「冗談冗談。僕が最後走るよ」
「はあ……よかったです」
「じゃあ、私が1番、2番が香奈で3番結先輩、最後が相川先輩でいいですね」
伊織のその言葉に、みんなそれでいいという反応をした。そんな感じで走る順番も決まって、出番になるまで待つ。……なんか、ちょっとだけ緊張してきたな……。
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……順番、1番にすればよかった。
トラックの中に入ってすぐに後悔した。……もしかして、伊織はこれを見越して1番を取った?
「香奈ちゃーん、がんばれー!」
「霧島ファイト―!」
2番目と4番目に走る人が待機している、バトンパスをする地点はうちのクラスの席のすぐ近くだった。少し考えればすぐわかることだけど、まったく気づいていなかった。
マントを羽織った状態で、声援をかけられるのはかなり恥ずかしい。耐えられなくて、顔を背ける。「頑張るよ~」なんて言って手を振ったりは、私にはちょっと難しい。
「頑張れー」
「!」
コータの声が聞こえて、思わず振り返る。そうすると、視線の先ではクラスメイトの主に女子たちが盛り上がりを見せていた。
しまった、と思うのと同時に、手をひらひらと振るコータの姿が見える。
反射的に、また顔をそむけてしまう。あの感じは、昔の小学生くらいのコータと私の関係なら普通のものだけど……今の関係って、何なの?
さっきはそれを聞きたくて、コータの競技が終わった後に話しに行ったのだけど、気まずくなってしまって話せなかった。コータはどう思っているんだろう。天道さんが言った幼馴染を否定はしなかったけど……。
自分の中の、また仲良くしていたいという欲とそんな資格はないという気持ちが混ざり合って、どうすればいいのかわからない状態になってしまっている。多分、コータが私に頻繁に話しかけてきたりしなければ、欲の方を何とか抑え込んでいたのだと思うけど、今では両方が暴れまわるようになってしまっている。はあ……。
「おい、霧嶋。もう始まるぞ」
「あ、はい」
相川先輩がそう言うと、リレー開始の音が響く。すぐに、順番は回ってくる。取り敢えず、今はリレーに集中しよう。
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結果は……リレーとしては2位、パフォーマンスとしてはまあまあだった。最後の相川先輩の簡単なマジックでそれなりに盛り上がっていた感じだ。
マントを脱いで席の方に戻ると、クラスメイト達は運動部のリレーを見て盛り上がっていた。
……あれ?コータが座っているはずの椅子に誰もいない。どこにいるんだろう……?
「お疲れ様」
「ほあ⁉」
「はい、これ、うちのお母さんから香奈にって言ってたやつ」
「あ、ありがとう」
死角から話しかけられて、驚いてしまう。コータの表情はちょっとにやついていて、私の反応が予想通りだといった感じだった。
……本当に、昔に戻ったみたいだ。昔のコータは今ほど静かではなくて、結構いたずら好きだった。時々小さないたずらを仕掛けてきて、成功すると今みたいにニヤッと笑っていた。
「じゃあ」と言って、コータは百山君のところに行ってしまう。
……ねえ、……コータは、私と……、私のことをどう思っているの?
教職員の障害物リレーが面白かった思い出。
次回で体育祭編終了。だらだら続けてても仕方ないし、完結に向けて進んでいこうって感じ。




