試験勉強
前話までの内容を少し直しました。
もうすぐ2年前期中間試験。2年になって初めての定期試験だ。それなのに、目の前では虚空を見つめる友達がいる。
「香奈?大丈夫?」
「え?」
「手、止まってるよ」
「あっ、うん」
1年生の前期期末試験からずっとやっていることなので、今回も香奈と一緒に放課後に教室で勉強をしているのだけど、香奈はすぐにボーっとしてしまって全然身が入ってない。
まあ、何を考えているかはわかる。だからと言って試験前に集中できていないと、赤点を取りかねない。1年生の頃は何とか頑張って全体の真ん中から中の下くらいの点だったのに、この調子では本当に心配になる。
「ふぅ……」
よく見ると隈があるし顔色も良くないみたいだ。
うーん……どうしたもんかなあ……って、そんなことばかり考えていたら私も勉強に集中できてない。人に言うなら自分もちゃんとやらないと。
そう思って自分の頬を両手で軽くたたく。そして、香奈の方を見ると、また問題集から外れた場所に視線を置いて固まっていた。
「香奈、またボーっとしてる!ほら、帰るまでの……40分だけ絶対集中!」
「は、はい!」
そんな感じで下校時刻になった。良い返事をしただけあり、それから40分間は香奈も集中できていたみたいだった。
でも、この調子だと家では全く勉強できてなさそうだなあ……。あー……心配だなあ……。
***
――ピロン!
「ん?」
日本史の勉強をしていると、横に置いてあった携帯が音を立てる。
確認すると通知の正体は雅紀からのメッセージだった。……この時期に来る雅紀からの連絡の内容は予想がつく。うーん……この問題解らないから教えて、ここのノート取ってなかったから見せて、勉強だるいから通話しね?の3つのうちどれかかな。
そんなことを考えて携帯のロックを解除し、メッセージの内容を確認する。
『化学のノートの最後の方見せてくんね?』
2番目だったか……。3つの中で一番お断りしたくなるやつだ。
『とってなかったの?』
『いや、字が汚すぎて解読できん』
『ほら、これ』
俺が送ったメッセージはすぐに既読になり、返信がきた。その最後にはノートの画像が送られてきていたのでそれを開く。
「ふっ、くくっ……」
つい笑ってしまった。その画像に移っていたのは、もはや文字と呼べるのかわからない、ナメクジが這った後のような模様が描かれたノートだった。それなのに、眠気を覚まそうとしたのか、図だけは異様にきれいに書いているところがまた面白くて、更にその図の中に書かれている字は、またふにゃふにゃなのがツボだった。
『起きていようとする努力が見えるね笑笑』
『そうなんだよ』
『だから俺は悪くない』
『見せないぞ?』
『ごめんなさい見せてください』
『おけ』
『ちょっと待ってて』
と、まあ軽く雅紀とやり取りをするのも息抜きになっていいだろう。暗記にも疲れてきたしせっかくノートを出すなら俺も化学の勉強をしようかな。
鞄からノートを出して、さっき写真で送られてきた部分を携帯で撮る。
……あー、これどんな問題出んのかなあ……。部活入ってたら過去問とかもらえるんだろうか。……数学は1年の時と先生がかわってないから大体予想がつくけど。
そんなことを考えながら撮った写真を送る。
『あざす!』
『今回は数学大丈夫そうなの?』
1年の時は数学でかなり苦戦……いや、一回赤点取ってたな……そんな感じだったので、なんとなく聞いてみた。
……。『ももやまNGです』のスタンプ。いやNGですじゃないわ。
『現実逃避やめな』
確か、今回の試験の時間割は数学が最初だったと思う。まあ、計画的にやるべきだとは思うんだけど、順番で考えたら数学は最初に手を付けるべき教科じゃないだろうか。
『赤点はめんどくさいよ』
『山本先生は追試あるから』
『一回食らってるから知ってる』
ああ、そうだった。まあ、流石に何とかするだろう。
『そうだったね笑笑』
『頑張れ』
『数学難しい?』
『やればできる』
『やんなきゃできないじゃん』
『そりゃそうでしょ』
何を当たり前のことを言っているんだ。