友達とゴールデンウィーク明け
ゴールデンウィークが終わり、学校に登校してきた。いつも通り自分の席にバッグだけおいて雅紀の席へと向かう。香奈はまだ学校には来ていないようだ。まあ、俺がそれなりに早く来たからだけど。
「よっ、康太。……で、詳しく教えてくれよ」
「おはよ。それ聞きたくてこんなに早く学校来たの?」
「おう」
とは言っても、3日前家に帰った後に大体のことはメッセージで話しているのだが。
「あの後、家に帰る時に霧嶋に謝られたんだっけ?許さなかったとか言ってたけど」
「あーうん。それ以上は言うことないんだけど」
「そんなことはないだろ。なんで許さなかったか、とか」
「ええ……なんでって言われてもなあ……」
「理由ないのか?」
「謝られて許せない理由って、許せなかったからっていうのが普通じゃない?」
「康太は誠心誠意謝ったら大体のことは許すやつだと思うからなあ。なんか理由があるのかと思って」
いや、実際理由はあるのかと言われればあるのだけど……。
「で、なんで許せなかったんだ?」
「……謝られたことが違ったからかな」
「……どういうこっちゃ」
「香奈に話しかけるなって言ってごめんなさい、って言われたんだよ」
「?違うのか?」
そういえば雅紀には「一生話しかけるな」って言われたとしか言ってなかった。
「あー、そういえば香奈に何を言われたかもちゃんと話してなかったね。……割と恥ずかしい話だからあんまり言いたくもないんだけど」
香奈の席の方を見てまだ来ていないことを確認してから、雅紀に中2の時の話をした。そんなに長い話ではないけれど。香奈に「もう一生私に話しかけないで。あんたなんかと幼馴染なんて、恥ずかしくて絶対みんなに知られたくないから」と言われたということを話すと、雅紀は驚いたような顔をしている。
「え、普通にドン引きなんだが。何それ」
「いや、まあ昔の話だし、いまはそこまで気にしてるわけではないんだけどね」
「霧嶋ってそんな奴だったのか……」
「いやいや、昔の話だからね。それに謝ろうとは思ってるみたいだし」
「でも、謝るったって自分が言ったこと覚えてなかったんだろ?なんか、せっかくなら仲良くってちょっと思ってたけど、そんなこと言われてまた仲良くとか無理じゃね?」
「うーん……?香奈は仲良くしたいとか思ってるのかな?普通に昔のことを謝りたいとかじゃない?」
「多分、また仲良くしたいんだと思うけど」
「どうだろ?香奈なら謝るときにそう言うと思うけどな……」
「いやいや、それだけのことしてそんなこと言って来たらそれこそドン引きだわ。図々しいにもほどがあるだろ」
ここまで話したところでガラッという音が聞こえてきた。さっきからガラッというドアが開く音がするたびにそちらに目を向けていたのだが、今回はそのままスルーとはいかなそうだ。
入ってきた香奈と目が合う。とは言え、別に用もないのですぐに目をそらした。視線を雅紀に戻すと、明らかに嫌悪感を宿した目で香奈を見ている。
「ちょ、雅紀!」
「なんだよ」
小声で雅紀に声をかけると、雅紀も小声で返してくる。
「そんなに睨んでどうするのさ」
「いやいや、別に睨んでないぞ?」
睨んでたわ。クッソ怖かったわ。……昔の話をしたせいで雅紀の香奈に対する評価が激落ちしちゃったな。ちょっと申し訳ないかもしれない。
「もう何言われても許さなくていいだろ。俺が言うことじゃないけどさ」
「今のままなら許すことはないけど、ちゃんと謝られたら……まあ、その時に考えるかな。だから、今は別に今まで通りにしてればいいよ」
「康太がそういうならいいけどさ」
「そんなことより、あと中間テストまで2週間だけど、準備してる?」
「……まだ2週間あるし大丈夫だろ」