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第6話 猫のみるくと泥棒猫3

楽しんで読んでもらえると嬉しいです

「ふーん、それで本当に断ったの?」


「あぁ、そうだな。今朝美來みくると話したら、体育祭実行委員にはならないってキッパリと言い切ってた」


 昼休み。俺と委員長は教室を出て人通りの少ない廊下で2人で話し合っていた。俺は昨日、美來みくるから聞いた答えを委員長に伝えた。流石に一緒に住んでる事を教える訳にも行かないので、朝の時間のある時に聞いたと説明をした。

 委員長はそれを聞くと少し唸って、何か考える様に首を傾げていた。


「へー。てっきり入るものだと思ってたよ」


 委員長は昨日の放課後もそう言っていたが、実際美來みくる自体に入る様子もなかった。何を根拠に言っているのかは分からないが委員長が言ってた女の勘と言うやつか。外してるけど。


「どうしてそう思うんだ?」


 俺は改めて気になったので一応聞いた。委員長は「フフん」と笑うと勿体ぶるように言った。


「ひみつ☆」


 またか……。その乙女の秘密は破れないな。

 そう言って、委員長はウインクをして誤魔化した。それが妙に様になっていて何も言い返せないのは委員長のルックスとキャラのお陰だな。俺がやったら……。それはちょっと生きていけないかも。


「まぁ、それなら、私的には都合もいいし、邪魔者居ないから良いか……」


 委員長は小さく何かを呟いて居たが直ぐに何かを思い出した様な様子を見せた。そして、胸を張るように腰に手を当てた。その時、強調された胸が俺の前に差し出された。


「うっ……」


 思わず、その大きさに声を漏らした。美來みくるは細くてスレンダーな美少女だとすると委員長は同年代とは思えない大人な雰囲気を纏った女性という感じだ。こう近づいて分かるがやっぱり校内でも人気がある理由が分かった気がする。


「ん?どうしたの?」


 委員長はそんな俺の様子に気が付いてる様子はなくて、更に体を寄せてきた。

 俺は逃げるように後ろに下がった。委員長は真面目でそう言う事には疎そうだ。俺は1度仕切り直すように咳払いをした。


「それで美來みくるが入らないとなると誰が代役をやるんだ?」


「あぁ、それなら大丈夫だよ。別に居れば仲良くなれたかもってだけで、2人でも足りるよ」


「そーなのか?」


「うん、クラスによっては中々実行委員自体が決まらない所も多いから、大体で2人か3人って言われてるんだ。だから、無理して3人にする必要も無し」


「なるほどな」


 俺も委員長に言われなければ、やることも無かっだと思う。


「ねぇ、中倉くん」


「ん?なんだ?」


城乃しろのさんと仲良いのは昔からなの?」


 俺は突然その質問をされて、少し焦った。でも、前に聞かれた時に昔からの近所の付き合いと言っていたのを思い出して、どうにか理由を絞り出した。


「あぁ、それは昔実家の方でお世話になってたからだよ。久々に会ったから少しぎこち無いけど、今も仲良くさせてもらってる感じかな」


「ふーん。確かにみくねぇとか呼んでたね」


「うっ……。それは昔年上だった設定だから……」


「設定?」


「いや、そういう体で話していたからで……」


「そうなのね……」


 俺は恥ずかしい事が思い出されて息が詰まってしまった。思わず、要らないことまで言ってしまいそうになった。

 あの時は咄嗟で美來みくるの事を姉なんてつけて呼んでいたが今思うと無理があるな。美來みくるはしっかり者のお姉さんと言うよりも我儘なお嬢様って感じだ。なんで、そんな設定にしたのかと一瞬考えたが俺はこの設定でやりきると決めたんだ。貫き通さなければ。


「そ、そうだな……。流石に今は同級生って分かってるから、美來みくるって呼んでるけど……」


「へー。そうなんだ」


 そう言って委員長は頷いて居たが少し語尾が強くて、怒っているような。俺なんかやったかな。


「あの、なんで怒ってるんだ?」


「別になんでもないもん」


「そーいう時って何かあるんだよなぁ」


「何、君は私に文句があるのですか?んん?」


「別にないよ……」


 俺は委員長に詰め寄られて抵抗するのを諦めた。さっきみたいに近寄られて辱めを受けるのも困るしな。

 てか、俺って女の子に怒られると抵抗できないのかもしれないな。実際、美來みくるに怒られる時もあんまり抵抗できてないし。


「でも、意外だね」


「ん?何がだ?」


「中倉くんが女子と仲良くしてるなんて」


 そう言って委員長は寂しげに目を瞑っていた。


「そーか?今だって、こうして委員長と仲良してるだろ?」


「むっ……。それはいいの!!私は委員長なんだからっ。でも、1年生の頃は女子と話したりしてる様子なかったからさ」


 委員長はそう言って顔を赤くしてむすっとしてしまった。

 俺ってそんなに寂しい奴だったのか。まぁ、用がない限り人とは余り話さない性格だ。ハマコーみたいに俺に突っかかってくる奴が珍しいだけで、俺が1年の時はハマコー以外でこれといって仲の良い人も居なかったな。


「確かに俺って仲良くしてもらってる女子っていないな。変な目で見られたりしてるのかな」


「うーん、そういう話は聞かないけど……。なんか、あんまり喋らないし、関わりが少ないから、怖いって聞くね……」


「怖いか……」


 俺は内心傷ついた。俺って、周りからそう思われているのか。確かに普段は空を見たり、本を読んだりと、ハマコーと話したりが無ければ基本的に静かに過ごしている。そう見られても仕方がないか。

 でも、2年生になった今でもハマコーや委員長はこうして話し掛けてくれている。ハマコーは俺とは切っても切れない間柄だが、なぜ委員長はこうして話し掛けてくれているんだろうか。


「なぁ、委員長」


「うん?」


「ぶっちゃけ、委員長は俺の事どう思ってるんだ?」


「なっ……!?何をい、言ってるのさっ、き、きみはっ!?」


 そう言って委員長は顔を真っ赤にしてオロオロし始めた。少し挙動がおかしくなっている。


「ちょ、ちょっとそんなのいきなりだよっ……。私だって心の準備がまだ……。君のことをなんて、そんなのどう思ってるなんて決まってるけどさ……」


「……?」


 委員長は焦りながら何が早口で呟いている。だけど、その声は凄く小さくて何を言ってるのかは全然聞こえない。後ろ手にしてモジモジしている様子は凄く可愛い。

 というか、そんなに言いづらい事なのか。俺ってそんなに良く思われてないのか?


「いや、嫌なら言わなくていいんだ……。周りから怖いって思われてるのはよく分かったよ。ただ、委員長もそう思ってるってのはショックだったけど……」


「別にそう言う訳じゃないよ……。私はそう思ってないよ」


 そう言って、委員長は大きく息を吐いた。そうやって呼吸を整えると俺に目線を向けた。


「私は中倉くんの事を怖いなんて思ってないよ……。ただ……。あーー」


 そう言って委員長は頭を振った。何かを振り払うように首を振っている。


「ホントに調子狂うな君の前だと……」


 委員長は頭を下げて何か呟いている。それが少し体調が悪くなったようにも見える。ホントに大丈夫か。俺のせいでそうなったのなら申し訳ない。


「大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ。それよりさっきの答えだけど……」


 そう言って委員長は俺をビシッと指さした。


「お、おう」


 いきなり向けられた指に俺は思わずビビってしまった。


「1年生の頃から見てるけど、私はちゃんと君を見てる。けど、私はみんなと違って外見で判断しないよ。そんな私から言わせてもらうよ」


「うん」


「君は怖くない。ちゃんと、優しくて、かっこいいと思ってる」


 俺は真っ直ぐにそう言われて言葉出なかった。

 は、恥ずかしい……。委員長は真面目だからそんな事は思ってないのだろうけど、俺は褒められる事が少ないからか返す言葉が見つからなかった。


「ありがとう……。なんか、救われたかも」


「なにそれ、大袈裟だよ」


 委員長は「やめてよ」と手を横に振って、苦笑いをしている。


「俺にとっては大問題だぞ。俺だって男だ。女子に引かれたくもないし、良ければ女子にモテたい」


「うわぁ、最低ー」


「委員長のその最低は俺には効かない。もう、耐性が付いたからな」


「なにー?生意気になったなー?」


「別に俺はいつもこうだよ」


「あははっ!!なにそれ開き直らないでよ、あははっ!!」


「そ、そんな事はないぞ。あははっ」


 俺も委員長に釣られて笑ってしまった。笑いが止まらなくて思わず、委員長と目があって、それでも笑ってしまった。ちょっとしたことも面白くて俺も委員長も笑いのツボが今だけ浅くなっているみたいだった。

 お互い暫く笑い合うとその笑いも収まってきて、少しの沈黙が生まれた。


「でも、そのままだと女友達は私以外出来ないかもね」


「それは酷いな。俺に友達を作るなって言いたいのか?」


「そんな事ないよ。友達が出来たら中倉くんの怖いイメージも撤回されるしね」


「じゃあ、なんで女友達が出来ないんだ?」


 委員長は少し黙ると、髪をとかしながら俯いた。


「それは、まぁ、チャンスが……。私がそっちのが嬉しいしね……」


「え?今なんて?」


「べーだっ。教えないよ。これも乙女の秘密っ」


 そう言って可愛らしく委員長は可愛らしく舌を出した。普段の委員長からは少し想像も付かないがなんだか、照れているようでテンションがおかしいみたいだ。でも、それをされたら世の男はなんでも秘密にしてしまいそうな勢いを持っている。


「それはずるいだろ……」


 俺はそう言って乙女の特権という必殺技を前に頭を抱えるしか無かった。


「そうだ、中倉くん」


 そんな俺の様子など気にせず、委員長は何かを思い出したようだ。声をあげて俺の肩をトントンと叩いた。


「今日の放課後、早速実行委員の会議があるんだよね。何か用事があったかな?」


 俺は部活に入っておらず、帰宅部だ。特に今日も用事があるって訳でもない。


「あぁ、もちろん行かせて貰うよ」


 俺が快く頷くと委員長は「ふふ」と少し笑った。


「そう。なら大丈夫だね」


 そういうと「よしっ」と言ってガッツポーズをした。なんか、少し委員長が天然なのが分かってきたぞ。


「それじゃあ、私はお昼を食べるね。また放課後にねっ。楽しみにしてるっ」


「お、おう」


 俺が怖いと思われていたように俺も委員長の事を詳しくは知らなかったみたいだ。こうして話すと色々な面が見られたし、これからも仲良くしていければなと俺はそっと思った。

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