冬の蝉~山下〇郎の一生~
よいこのみんな~
クリスマスプレゼントはちゃんともらえたかな~?
――――
うん……。
もらえなかった子は、もう一度まくらもとを探してみよう!
もしかしたら、なにかあるかもしれないよ!
さて、今日の『虫けら人生』、いったいどんな虫さんが出てくるかな~?
(おもむろに流れてくる例の曲)
(飾り付けられたクリスマスツリー)
(イルミネーションをバッグにキスするカップルの群れ)
――そう!
みんなもご存じ冬の蝉、山下〇郎で~す!
「山下〇郎と言えば、名曲、クリスマス・イブ。」
「雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう。サイレントナイト、ホーリーナイト。」
「誰しも一度は、このフレーズを聞いたことがあるはずだ。」
「今日は、山下〇郎の一生を覗き見てみよう。」
――春――
卵から孵化した山下〇郎の子供たちが、一斉に地中へと向かっていきます。
冬の蝉と呼ばれるように、山下〇郎は一年のうち、ほとんどを地中で過ごすのです。
孵化したばかりの山下〇郎は、歌うことが出来ません。
ですから、地中まで伸びたレコード会社の根に取り付いて、印税をちゅーちゅー吸って大きくなるのです。
――夏――
気温が高くなって、たくさんの虫が動き回る季節です。
サザ〇、TU〇Eをはじめとする蝉たちが地中から這い出て、一斉に愛の歌を歌います。
虫たちにとって、一年間でもっとも楽しく賑やかな季節。
けれど、その間ずっと、山下〇郎は地中でじっと待っているのです。
――秋――
あんなに元気だったサザ〇、TU〇E、THE B〇ONの声もめっきり聞こえなくなってしまいました。
道にはたくさんの木の葉や木の実が落ちています。
夏が愛の季節であれば、秋は愛の結果、出産の季節。
虫たちは卵を産み、一匹、また一匹と命を落とします。
すっかり大きく育った山下〇郎は、冬にどんな歌を歌おうか、そんなことばかり考えているのです。
――冬――
そしてようやく、待ち望んだ季節がやってきました。
クリスマスの一週間前、山下〇郎は地中から這い出て、一斉にクリスマスイブを歌います。
雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう。
サイレントナイト、ホーリーナイト。
駅で、コンビニで、スーパーで。
有線から流れ出したのは、いつもとおなじクリスマス・イブ。
けれど、ちょっと聞き比べてみてください。
(クリスマス・イブ(2019 Version))
(クリスマス・イブ(2018 クリスマス・スペシャル・パッケージ))
そう、毎年少しずつ、ヴァージョンが変わっているのです。
山下〇郎の鳴き声で、人々はクリスマスの到来を思い出します。
雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう。
サイレントナイト、ホーリーナイト。
そしてやってきた、クリスマス当日。
この日は、人間にとっても大事な大事な繁殖の日。
東京中、いいえ日本全国のラブホテルが、今日は予約でいっぱいです。
クリスマスを祝う山下〇郎の鳴き声は、恋人たちを祝福し、けれどお正月までにはすっかり聞こえなくなってしまいました。
――そう。
山下〇郎は、冬を越せないのです。
レコード会社との契約により、クリスマス・イブの印税は次の山下〇郎の餌になります。
そうして命は巡っていくものなのです。
今年しか聞けない、山下〇郎のクリスマス・イブ(2019 Version)。
その鳴き声が聞こえたら、どうぞみなさん、耳を澄ませてみてください。
きっとその違いが……分かるはずです。
――はい!
今日の『虫けら人生』、楽しんでもらえたかな~?
来週の虫さんは誰でしょう?
ヒントはこちら!
(オゾンホール、洪水、台風、海洋汚染を示す写真がスライドする)
(ニューヨーク、国連機構行動サミット会場)
(キレ散らかす北欧の女の子)
次回もまた、お楽しみに~!