国王として
時間は少しさかのぼってフィリアがリズに眠らされた後の話になります。
国王の書斎。そこには国王のほかには信に足ると判断されたものだけが立ち入ることが許される。普段は王族か国王の親友の宰相と文官が何名かがいる。
コンコンコン
「リズベット・ワイズマン・フランベルジュでございます。国王様にお話ししたいことが。」
いつもはフルネームでは言わない。ワイズマンを出すときは重要な要件があるときだけそう決めてある。
「入れ。」
王の返答があって初めてこの部屋には入ることが許される。吸血鬼に由来した魔術の応用らしく高等な魔術によってこの部屋は守られている。許可がないものは入ることはできない。
「失礼します。」
「して。何ようだ。ワイズマン。」
いつもは優しく朗らかな国王だがリズがワイズマンに名前を出したことでただ事ではないことが起きていると判断したため今この部屋には緊張感が漂っている。
リズはこの部屋にいる国王以外のものに視線をむける。
「国王様。」
「良いだろう。」
リズの意図を受け取った国王は部屋にいるものを外に出す。
全員が出たことを確認したリズは防音に侵入疎外の結界をかける。
「厳重だな。」
「注意することに越したことはありません。」
「ここにはワシが許可を出さなければ入ることはできない。しかも毎回だ。」
そんなことはリズだってわかっている。
ツカツカと音を鳴らしながら部屋の奥にある国王の机まで歩く。
「お嬢様が目を覚まされました。」
「なに!?それは誠か!?」
それまで緊張感を漂わせていた国王は花が咲いたように表情を明るくさせ喜んだ。
「こうしてはおれん!フィリアのところに行かなければ!心配していた国民たちにも姿を見せてやらなければならん。よし皆をあつめろ!」
「国王様!」
リズは深刻な泣きそうな顔になりながら国王を見つめる。
「お嬢様のスキルが発現しました。それも最悪なものです。」
「なに。説明してくれ。」
リズにを見てただ事ではないと思った国王は再度椅子に座り、説明を求めた。リズはワイズマンを名乗ったのだ。めったなことでは使わない。ということはこれは深刻なことが起きているのだということだ。
「お嬢様のユニークスキルは不老不死です。」
国王の息が止まった。
リズは国王にフィリアのステータスについて説明した。称号についても種族についても不可解なことが多すぎると。
フィリアのスキルについて広まれば間違いなく争いが起きることを。
「なるほどな...。これは確かにただことではないな。」
父としてはフィリアには幸せに暮らしてほしい。だが運命はそれを許さないだろう。
フィリアがこの国を混乱させることは確実。王として私情を挟むことは許されない。
「リズ・ワイズマン」
「はっ!」
「フィリア・グランを幽閉塔に隔離。いまだ目を覚まさず病に伏せているということにしろ。」
王として国を守らなければならない。
「妻たちにこのことについて話してからフィリアに会いに行く。あとのことはそれから伝える。」
「かしこまりました。」
国王としての決断が求められている。
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