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自作小説倶楽部 第19冊/2019年下半期(第109-114集)  作者: 自作小説倶楽部
第109集(2019年7月)/「川・海」&「車」
3/30

02 柳橋美湖 著  車 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられ。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「屋根付自転車」




     62 自転車


 クロエです。お爺様の後を追って、浮遊体トロイ(別名「パンドラの箱」)に、乗り込んだ私たちは、全十三階層ダンジョンのうちの第三階層〝天気雨フロア〟を突破しようとしています。

     ◇

 雨に濡れないように、第三階層を突破するにはどうしたらいい? しかもときたま雷が落ちてくる。そんなことを考えていると、従兄の浩さんが、こんなアドバイスをしてくれました。

「自動車って避雷構造だから、雨の中を走行しても雷が落ちないだろ?」

 さらに魔法少女OBのマダムがいいます。

「あ、なるほど。自家用車に乗ってこのフロアを脱出すればいいんだ。クロエちゃん、ノームを呼び出してみて。自動車を作ってもらうの」

 ノームは私が召喚できる三大妖精の一つです。

「自家用車……。うーん、そんな高度なものできるかな。ソリなら前にこしらえたことがあったけど」

 なおも私が頭を抱えていると、お爺様の顧問弁護士・瀬名さんがこうアドバイスしてくれました。

「自家用車が駄目なら、屋根付き自転車を作らせればいい」

 瀬名さんの横にいた吸血鬼の白鳥さんがシニカルな笑みを浮かべました。

「ミスター・セナは、アントワネットだったんですね」

「あのお、白鳥さん、空気を読んでください。瀬名さんがムスっとしてますよお」

「これは失敬」

 白鳥さんは、中世ヨーロッパの宮廷貴族がやるような、片足を引いて胸に手をやるお辞儀をしました。

 それで私はノームを召喚したという次第です。このとき、理系である浩さんに、簡単な自転車の設計図を描いてもらいました。

「ノームよ、働いて。この設計図でイメージするの……」

 車輪、チェーン、フレーム、そして自転車を覆う幌……。

 自転車は八人乗り。双胴型で、左右に四人ずつ乗るようになっています。

 早速、私たちはそれに乗ってペダルを漕ぎ、雨のメインストリートを駆けて行きます。

 浩さんの電脳執事さん、瀬名さんの護法童子くん、白鳥さんの使魔ちゃんはいったん、帰還させることにしました。

 いざ、メインストリート!

          ◇

 途中、雷雨がありましたけれど、煉瓦造りの街並みを抜けて、私たちの幌付自転車が、ゴールである第四階層への階段に到達しようとしたそのとき、テレビ・ゲームでいうところのフロア・ボスとでもいうべき敵が、腕組みをして待ち構えていました。

 敵を見たマダムのコメントです。

「以前、私たちがこの大陸に上陸したばかりのときに、お花畑で蜜を吸っていたハニトラの亜種みたいね。全身が黒い。さしずめ、ブラック・ハニトラ」

 ハニトラは、虎そっくりな姿の浮遊性動物。口から蝶のような、おびただしい数の管を飛ばして、周囲にある花々の蜜を一気に吸う。だけど、目の前にいるブラック・ハニトラは、悪意のあるオーラを放っている。明らかにモンスターだと分かりました。

 瀬名さんがいいます。

「あのおびただしい管を、自転車の幌に突き刺す。そこへ豪雨が襲いかかり、ずぶ濡れになった我々はゲーム・セット……」

「瀬名さん、何か秘策がありますか?」

「クロエさん、こういうのはどうかな? ――奴の直前まで自転車を近づけて、君は妖精シルフを召喚して強風を起こし、襲いかかろうとしている奴の触手をはじく。そこで我々は自転車の幌を後方に捨て、飛び出し、奴の横合いをすり抜け、階段までジャンプする。どうだ?」

「その作戦、使えそうです。――そうと判ったら、皆さん実行しますよ」

 了解!

 仁王立ちした格好で、路面から十センチほど浮いているブラック・ハニトラが、ドバッとクラッカーみたいに触手を飛ばしてきました。

 私は作戦通りにシルフを召喚し、敵の触手を吹き飛ばし、皆と一緒にゴールの階段に飛び込みました。

 このとき審判員である金の鯉さん、銀の鯉さん、未必の鯉さんの三人は、ブラック・ハニトラを囲んだ格好で一斉に〝クリア〟のサインを出してくれました。

 やったあ!

 ブラック・ハニトラはその判定と同時に霞んで消え、私たちが階段を上り出してほどなく雷雨になりました。

 やっぱり瀬名さんは頼りになる。

 こうして私たちは三階層を突破できました。

 次回は四階層でのお話。

     ◇

 それでは皆様、また。

             by Kuroe 

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。なお、母ミドリは、異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

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