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自作小説倶楽部 第19冊/2019年下半期(第109-114集)  作者: 自作小説倶楽部
第114集(2019年12月)/「冬の樹木」&「鍋」
25/30

02 柳橋美湖 著  冬の樹木 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「美神クロエ」




     67 世界樹はダンジョンにある


 浮遊ダンジョン・トロイ第五階層にはカプセル・ホテルを兼ねたビュッフェレストランがありました。そこでくつろいだ私たち。そして白鳥さんが手名付けたケルベロスの背中に乗って同フロアのゴールを目指しました。

          ◇

 年上であるマダムに歩かせて私がケルベロスの背に乗り続けるのは恐縮だと白鳥さんに言いましたら、白鳥さんは、魔法少女OBの彼女を私の横に座らせてくれました。マダムを乗せるとき、やっぱりお姫様抱っこしましたので、マダムは照れていましたよ。

 さて、従兄の浩さんが瀬名さんにこんなことを言っていました。

「ところで瀬名さん。クリスマス・ツリーと門松ですが、日本では、年末年始になるとどうしてあれを飾るんでしょうね」

「クリスマス・ツリーと言えばヨーロッパの習俗で、門松は日本の習俗だ。考えてみるとユーラシア大陸の西端と東端沖合の島国で、年末年始になると似たようなものを立てる」

 そこでケルベロスを先導していた白いタキシードを着た吸血鬼・白鳥さんが言います。

「きっとそれは、有史以来の汎人類的な無意識の世界に存在する『世界樹』が表現しているのだと思う。昔の人は冬至が闇のMAX状態だと考えた。それが終わって新年になるというのが基本的な考え。それが宗教的・政治的な理由で、若干、正月が後に延びたのではなかろうか?」

 そんな雑談をしながら、私たちはフロア・ゴールのゲートにたどり着きました。

 そこで……

「あの、あの、ダンジョンの中に世界樹があるんですけど」と私。

「門松というかクリマスツリーというか針葉樹系の見たことがない樹木。ところで、あの枝からぶら下がっているのは何?」とマダム。

 はい、もうご想像できますね。

 世界樹の枝にぶら下がっていたのはモンスターたちでした。

 魚眼人、人狼、喰種……

 パキン、パキン、パキン……

 ああ、クリスマス・ツリーのイルミネーション、あるいは正月飾りのおまけにつけた蜜柑みたいに、世界樹にぶら下がったモンスターたちが、背中のフックを外して一斉に降って来たではありませんか。

「ここは一気にゴールへ突入する!」

 瀬名さんがそう判断すると、浩さんと白鳥さんがうなづきました。

 白鳥さんは、私とマダムを背に乗せたケルベロスに魔界の言葉でダッシュで走るように命じました。

 突撃!

 バラバラバラ……

「いやあ、気持ち悪い、いっぱい降ってきたあ!」

 例のごとくマダムは戦闘態勢になったので、中学生くらいの美少女に変身していました。そんなマダムは、私と一緒に無意識のうちに弾幕を張って、頭上のモンスターを蒸発させてしまいました。両手を上に向け、十指から閃光を発します。

 全方位ビーム!

 私たちを乗せたケルベロスがゴールに駆け込むと、瀬名さん、浩さん、白鳥さんが続きます。いつの間にか横に審判三人娘さんたちが回り込んで、自動車レースの審判みたいに、金色・銀色・黒色からなるゴール達成の旗を振ったのでした。

 フロア・ゴールを抜けたとき、浩さんと白鳥さんがポカンと口を開けてそんなことをコメントしていましたよ。

「今どきの自動照準型砲塔を装備した巡洋艦を、敵攻撃機が襲うとこんな感じになるんだろうか?」

「全方位ビームだって? ……む、無敵すぎる。このダンジョンにいるモンスターは彼女たちにとってすべて雑魚になったのか?」

 瀬名さんがそこで、

「このダンジョンは、世界を司ってきた女神紅子と女神ミドリが、新女神クロエに与えた試練。そんなに甘いはずがない」

 と言いました。いつもながら冷静なお話し、ごもっとも。

 ダンジョンの昇降階段をなす十三階層各フロアのスタート・ゲートとゴールゲートが、フロアの中心にあるのはダンジョン全階層を貫く『世界樹』だったわけです。

 こうして第五階層の探検は終わりました。次は第六階層です。

          ◇

 それでは皆様、また。

          by Kuroe

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。なお、母ミドリは、異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

●ケルベロス/浮遊ダンジョンで白鳥が手名付けたモンスター。馬代わり。


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