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自作小説倶楽部 第19冊/2019年下半期(第109-114集)  作者: 自作小説倶楽部
第112集(2019年10月)/「運動会・学祭(※選手)」&「夕刻」
17/30

03 柳橋美湖 著  運動会(選手) 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「瀬名さんMAX疾走」




     65 選手

 

 浮遊ダンジョン・トロイの第四階層はトラップがいっぱいで今度は野火。前々回は落とし穴だと気づかずに落ちましたけれど、前回、私・クロエとパーティーは火勢を避けての落とし穴から第一階層へ脱出でした。そして今度こそ意地悪フロア第四階層クリアを目指します。

          ◇

 私たちは再び第四階層に戻りました。

 まずは前々回の落とし穴をクリア。

  他の未確認トラップに引っかからないようにするた、お爺様の顧問弁護士・瀬名さん、従兄の浩護法童子くん、吸血鬼の白鳥さんが、それぞれ電脳執事さん、使魔ちゃんを召喚し斥候に飛ばし、後をスーツ姿の瀬名さんが先んじて走っていました。

 私・クロエは、他の皆さんの後について学生時代の瀬名さんを追いました。そんな瀬名さんの背中を見ていると、紅顔可憐な少年が、体操着姿で、競技をしている図を思い浮かべました。

「瀬名さんって、身のこなしが軽やかですね」

 感心した私が隣にいる魔法少女OBのマダムに言うと、マダムがこういいます。

「クロエ、知らなかったの? 瀬名くんは昔、陸上選手で、得意種目はハードルだったんだって」

 風を切るとはまさしくこのことで、瀬名さんが走る髪がたなびいていました。

 綺麗。

 私は瀬名さんの学生時代を思わず想像しました。

 半袖・ショートパンツの青いスポーツウエアを着た紅顔可憐な美少年が少し長くした髪をビュンと風に漂わせ、ハードルを飛び越えていく。

「……なに赤くなってんの、クロエ?」

 察したのか、マダムが私を見て笑っていました。

(大人になってスーツ姿をした瀬名さんもダンディーで素敵。やだ、何考えているんだろう、私。恥ずかしい)

 心臓がドキドキしている。

          ◇

 少し話を戻して……。

 第四階層での野火を避けた私たち全パーティーが浮遊ダンジョン最下層・第一階層に逆戻りしてから第四階層に戻ってくる途中、従兄の浩さんが私に、「各層はフォノグラフみたいなものじゃないのか」と説明していました。

「例えば第二階層の池だが、周囲は築山にみたてた土塁で囲まれているので、それとなくダンジョンだと分かる。第三階層の街路もダンジョンの障壁だと分る。ところが第四階層のススキ野は、一見して野原のただ中にあり、とても見通しが良ように見えて、どこが障壁になっているのか分からない。落とし穴は、前に落ちたところを避けるのはもちろん、磚脳執事さん、護法童子くん、使い魔ちゃんたちを召喚し斥候にだして落ちないように注意すればいいだろう。……しかし、問題は前回のあそこでだ」

 けれど……。

 問題の野火トラップについては、瀬名さんが森林火災の消火方法の一つを使おうと提案しました。

「炎というものは、火勢の反対側に回って火をつけると鎮火できるということを知り合いの消防士から聞いたことがある」

 まるで神話にでてくる日本武尊が手にする神剣〝草薙の剣〟のエピソードみたいです。

 そして、ススキ野に私たちが到着すると、待ち受けていたかのように野火が発生。瀬名さんは、野火が発生することが予想される地点の向こう側に、あらかじめ護法童子くんを遣っていて、着火させました。

 瀬名さんの目論見は大当たりで、野火は鎮火し、私たちは第四層のゴールゲートである階段に達したわけです。

 ゴールしてから、少し離れたところにいた浩さんが白鳥さんに、

「いかんな、瀬名さんがクロエにいいところ見せてしまった」

「ふっ、まだ浮遊ダンジョンの半ばにも達していない。次で逆転すればいいだけのこと」

「余裕だね、白鳥さん」

 一つ目蝙蝠の使魔ちゃんを肩に乗せた白シルクハットの白鳥さんが不敵に笑っていました。 

 それにしても金ノ鯉、銀ノ鯉、未必ノ鯉からなる審判三人娘の皆さんの脚力も凄まじいです。涼しい顔をして、サッカーの審判みたいに陸上選手OBである瀬名さんに並走し、私たち全員のフロア・ミッション・クリアを確認した上で第五階層を許可したのですから。

 ――というわけで私たちは、とても意地悪な第四階層をどうにかクリアすることができました。この調子で第五階層も頑張るぞ!

          ◇

 それでは皆様、また。

          by Kuroe

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。なお、母ミドリは、異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

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