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自作小説倶楽部 第19冊/2019年下半期(第109-114集)  作者: 自作小説倶楽部
第111集(2019年9月)/「ススキ」&「音楽」
13/30

03 柳橋美湖 著  ススキ 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。

挿絵(By みてみん)

挿図/ⓒ 奄美剣星 「燎原」



     64 ススキ

 

 浮遊ダンジョン・トロイの第四階層から第一階層に落とされた私・クロエは、一緒に落とされた従兄の浩さんと再び第四階層に戻り、他の皆さんに合流するのですが、その際、浩さんから、そろそろ旅も終わりに近いから、私に好意をもって下さる、浩さん、瀬名さん、白鳥さんの三人から一人を選ぶようにと忠告されたのでした。

          ◇

 第四階層の街並みは茅葺になっていて、集落の途切れたところは、ススキ野となっていました。

 浩さんに連れられた私が戻り第四階層を皆さんと一緒に歩き出すと、横にいたマダムが、

「ススキのことを茅とも言うのよ。茅葺屋根は、藁葺屋根よりも長持ちするし、里が森に飲み込まれないようにするための緩衝地としての役割もあったのよ」

 とおっしゃいました。

 なぜだか、第四階層には馬が放し飼いになっていて、ススキを食べていました。ススキというのは牧草にもなっている様子。馬の群れの中から若い雄たちが駆け寄ってきて、少し離れたところから私たちを偵察していました。

「いやあ、のどかだなあ」

 先を歩く白鳥さんが言うと、後に続く瀬名さんと浩さん、それから審判三人娘である金の鯉さん、銀の鯉さん、未必の鯉さんがうなずきました。

「おや、また落とし穴だ」

 そうおっしゃったのは瀬名さんです。

 白鳥さんは身軽というか体重というものがないらしく、前回、浩さんと私が落ちたような穴があっても、気づかずに素通りしてしまいます。そのため、後続の瀬名さんと浩さんとが、召喚した護法童子くんや電脳執事を斥候にだして、通路に落とし穴がないかどうか探らせたのです。

 瀬名さんと護法童子が、落とし穴を見破ったのはいいのですが、そこから突風が吹き上がってきました。

 私とマダムが、モンローみたいに、髪とスカートとを抑えていると、ススキ野に火がつき、放牧されていた馬が一斉に、第五階層へ続く階段があると思われる方向へ、一斉に逃げて行きました。

「クロエ、水の妖精ウンディーネを召喚して」

 マダムにうながされた私がウンディーネを召喚すると、ウンディーネは、私たちの周りをぐるぐる回って、水のバリアをつくって、炎をはじいていきます。――とはいっても、第四階層全体に火が回り、ウンディーネのバリア自体が温水になってきました。

「このままじゃ、第五階層にたどり着く前に、全員蒸し焼きだ。ここは〝風穴〟に飛び込むしかない」

 ――というわけで私たちは、全員そろって〝風穴〟に飛び込んだわけですが、読者の皆様がご想像の通り、前回同様、ダンジョンの第一階層に戻されてしまいました。

 第四階層って意地悪なんだからあ。ほんとにもう嫌!

          ◇

 それでは皆様、また。

          by Kuroe

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。なお、母ミドリは、異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

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