表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とりあえず主人公ぶっ殺します‼  作者: 水野アヤト
3/20

「堕ちた者達編」 第二章 帰路(Ⅰ)

第二章 帰路


 ジャイアントスパイダーに襲われていた少女、ヒイロ・インを救ったシルヴァ達は、彼女を安全なところに連れていくため、草原を離れて近くの街へと足を運んだ。

 街の宿に入り、シルヴァ達四人は、そこで今日の宿を取る事にした。部屋に集まった四人は、ここに来るまでに落ち着いたヒイロから、ようやく事情を聞いてみる事にした。シルヴァ達はまず、自分達の事を簡単に自己紹介し、次は彼女に事情を尋ねたのだった。


「私も、皆さんと同じくノイエハーゲンの生まれなんです。貴族のイン家と言えば、わかって頂けますか?」

「もしかして、南の地を治めるあのイン家ですか?」

「その通りです。訳あって他国に赴いていたのですが、その帰路であれに襲われてしまって⋯⋯⋯」


 シルヴァ達の故郷である、魔法国家ノイエハーゲン。ヒイロの口にしたイン家というのは、南の地に確かに存在する貴族である。偶然にも彼らは、自国の貴族を助けたのだ。


「従者達は全員あの魔族に殺されました。たった一人生き残った私は必死で逃げ続け、運良く皆さんに助けられたというわけです」

「そう⋯⋯⋯、大変だったわね」

「貴女だけでも助けられて幸いでしたわ。散っていった従者の方々も、貴女が助かって本望だったと思いますの」


 凶暴な魔族に襲われ、助かったのは彼女一人だけ。国へ帰る道程はまだ長いというのに、彼女は一人、この地で孤立してしまった事になる。それを察して、ミーシャはある提案を口にした。


「そうだ!ノイエハーゲンに戻るつもりなら、私達と一緒に帰りませんか?」

「そうだな。道中にどんな危険があるかわからないし、俺達と一緒にいた方が安全だ」

「いいんですか?私のせいで、皆さんにご迷惑をかけるわけには⋯⋯⋯」

「気にしないで。ミーシャもシルヴァも、困ってる人を放っておけないお人好しなのよ」

「それはアイラさんもですわ。もちろん、私もお助け致しますの」


 シルヴァ達四人も、そしてヒイロも、帰る場所は同じである。それならば、一緒に国に帰らないかと、そうミーシャが提案した。ノイエハーゲンまでの道のりは長く、道中また魔族に襲われる危険は十分にある。だが、竜や大蜘蛛を倒せるシルヴァ達と一緒ならば、道中の安全は保障される。他意のない、純粋な親切心からくる彼らの提案を、拒否する選択はないと言えた。


「皆さんの親切心に感謝致します。皆さんの帰路の道中、御一緒させてください」

「決まりだな。今日はこの宿で休んで、出発の準備は明日にします。インさん、それでいいですか?」

「問題ありません。それから、私のことは名前で結構です。貴族の娘だからと、敬語を使う必要もありません」

「わかった。だったら、俺のことも名前で構わない。敬語もいらないから」


 ヒイロが提案を受け入れた事で、四人は笑顔を浮かべ、彼女を温かく迎え入れた。彼らの帰路に、新たな仲間が加わった瞬間だった。


「ヒイロさん、私のことはミーシャと呼んでください」

「じゃあ私も、アイラって呼んでくれて構わないから」

「私のことも、どうぞクレアとお呼びくださいな」


 自分を笑顔で迎え入れてくれた彼らに、ヒイロは微笑みを浮かべて見せた。それは、まるで宝石のような美しさを放つ、少女の尊い微笑みだった。

 その後彼らは、明日以降の計画を簡単に話し合い、その日は宿のベッドで眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ