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サーニィの町にて〜今日の宿は、居酒屋ホテルですか…?〜

今回少し他の回より長めです。何か濃い人達が出ます(笑)

 

 「間もなく、サーニィの町、サーニィの町です。お降りの方はお忘れ物にご注意下さーい!」


 もうすぐ私達が降りる予定の町…王都とラドファルト領の境にある町(所属としてはラドファルト領の町になっている)サーニィに着くみたいだよ、と。

 

 乗り合い馬車の…車掌さん?(馬車の乗車代を受け取ったり、次の停車場近くになると、もうすぐ〇〇に着きますー、と知らせてくれる人が居る。ドラマや某有名アニメ映画でしか見た事無かったけど昭和前半時代のバスの中ってこんな感じだったのかなぁと思った)の言葉を聞いて――…


 「ロビン、ロビン!」


 …――隣で眠ってしまっていたロビンに声を掛けながらトントンと軽く肩を叩いた。


 同じくサーニィで降りるのだろう女性客達数人が、膝掛けを旅用のバッグに仕舞い込んだり、薄手のフードが付いたグレーや白等のポンチョコートを取り出して、それを身に着け始め、降りる準備をしていた。

 

 「ん? ああ、ごめんね。少しウトウトしてしまったみたいだ。リザ、起こしてくれてありがとう」

 「ううん、もう少しで今日泊まる町に着くから降りる準備しよう?」


 数日前(出発の日)話し方を変えた私だったけど、ロビンも合わせて平民のような話し方をしてくれている。


 何となく敬語ではないロビンの方が、しっくりくると言うか、懐かしい気がすると言うか…何でだろ? と一瞬思ったけど、今はサーニィに着いてからの話をせねば!


 「そうだね。それじゃ、町に着いたらまずは宿を探さないとね」

 「うん! お腹も空いてきたし、夕飯も付く宿がいいなぁ」


 しかし、位置的にはまだ王都を抜けたばかりでラドファルト領に入ったばかり。あまり、お金を使いすぎないよう気をつけないと…! 


 ちなみに旅の資金と、スローライフ準備費用(村での生活、最初の二ヶ月分位の資金)を持参しているのだけど(金貨数枚と、他には使いやすいよう銀貨と銅貨をそれなりに用意してきました)、家を出る日、馬車三台分の荷物の他にも父様達が用意してくれていた物があった。それが金貨と大金貨がウン百枚入った大きな袋だったものだから丁重にお断りして置いてきた。

 娘に甘すぎですよ、父様達。旅とスローライフどころか、軽く十年以上フツーに何もしなくても暮らせてしまいますよ。あれですよ、そんなに甘やかされたらニート化しちゃうでしょうよ。


 とまあ、そんな事を考えている間にサーニィに到着したので、馬車を降りた私とロビンは宿を探す事にした。


 「えっと…宿はここから少し先に行ったところに三軒あるみたいだね」


 親切な事に。乗り合い馬車の停車場脇には、サーニィの簡易案内看板が設置されており、宿の他にも、八百屋、肉屋、魚屋(この町は海が遠い為、川魚や乾物メインのお店らしいけど)、パン屋、雑貨屋など商店の位置がイラストで描かれていた。


 「そうだね。とりあえず一番近い所から行ってみようか。この町はラドファルト領内ではあるんだけど、俺も昔一度、来た事があるってだけだからなぁ…お薦めの宿とか解らなくてごめんね――…って、どうかした?」


 ハッ!? ロビンが“俺”って言っていたから珍しくてついジッと見つめてしまっていた…!


 「あ、いや、その! ロビンが自分の事を“俺”って言っていたのが何て言うか新鮮で!」

 「…変、かな? 私、では浮くかなと思って変えてみたんだけど」

 「ううん! 全然! 変じゃないよ! 何か…普段の穏やかなロビンのイメージとは違うかな? って思ったけど、違和感無くて驚いたって言うか…!」


 良いと思うよ! と告げると。ロビンは可笑しそうに笑いながら『ありがとう』と言った。力説し過ぎた…?


 


 


 さて、石畳が敷かれて整備された歩道を、ロビンと二人歩きながらやって来たのは…看板に載っていた三つの宿のうち、停車場からは一番近い宿だ。とても大きな建物で高級ホテルと言えるだろう。出入り口になっている両開きの広いガラス戸の縁は金色の透かし彫りで花や蔦の模様が施されていて、何だか豪華なイメージ。そのガラス戸の左右には警備の人達が、一人ずつ。腰にレイピアのような細身の剣を着けて立っている。これは中も警備が厳重そうな、ちょっとお高そうな雰囲気の宿だった。


 「あ、外観を見て思い出したんだけど、俺この宿に昔、家族とサーニィに来た時に泊まった事があるよ。持て成しも料理も…部屋や施設もかなり充実していたけど、確か安い部屋でも代金が一人一泊金貨三枚位したんじゃなかったかな」


 ロビンやご家族(ちなみに、ご当主は騎士団長で爵位は侯爵だもんね。爵位はウチとお揃いですね! って今は関係ないな)が泊まった宿ですものね…その位しますよね、ハイ。予算的にNOです。次、次に行きましょう!





 次にやって来た宿は満室でした。(え? それだけかって? 特筆すべき点が特に無く至って普通の宿…うーん、最初の宿がセレブ御用達高級ホテルとするなら、ここは駅前にあるビジネスホテルみたいな感じ、とだけ言っておこうと思う)最後の一軒も満室とかだったら、ヤバイな最悪野宿か? 高級ホテルは後の事を考えると…うーむ。と、思いつつ。最後の一軒に空きがあるよう望みをかけ、私達は更に歩みを進めて行く事にした。





 「わ、可愛いし、綺麗〜!」

 「雰囲気良さそうな感じの宿だね」


 最後の一軒は大きな丸太作りの家…ログハウスだった。こちらはペンションのように見える。


 出入口となる扉の前に、緩やかな段差の階段が三段あり、階段の両脇には小さな花壇があるんだけど、赤や白、黄色。紫や橙色など様々な色のパンジーが植えられていた。そして、扉にはWelcome! と可愛らしい文字で書かれ、水色や白の花の飾りが付いた木のプレートが掛かっていて、中も素敵なんだろうなぁ、と想像してしまう。


 「乗り合い馬車の停車場までは少し遠いけど、ここに泊まれたら良いね」

 「そうだね。それじゃ早速、今日泊まれるか聞いて来るよ」


 そう言い、ロビンが中に入って行くのに『私も行くよ』とついて行き(ロビンはあくまで護衛であって執事や従者じゃないからね)扉を開けて宿の中に入ると、これまた可愛らしい雰囲気で! ふと視界に入った窓には薄いピンクのレースカーテンが掛かっていて、窓枠辺りには、瞳が紫色のビーズの黒猫と水色のビーズの瞳の白猫の編みぐるみが飾られており、可愛くて良い感じだなぁと思っていた、その時。


 一人の男性がヌッと現れた。白い半袖Tシャツと濃紺のズボンの上に白いヒラヒラとしたフリルが沢山付いているエプロンを身に着けた、小麦色の肌のマッチョ…まあ、あれよ。体格の良い人、だね。


 「はい、いらっしゃい!! 二名様ご案内ー!!」


 居酒屋か。


 えーと、居酒屋の気の良い店員のあんちゃん…じゃない。宿の店員さん? の声に、奥から女の子の声で返事が返って来た。


 「はーい! よろこんでー!!」


 お姉さん、私、生ビール一つ下さーい! 今日の会議、長引いたよねー、お疲れー…って、違う! 一瞬、前世で馴染みだった居酒屋に来たのかと思ったわ!!


 同じく居酒屋の店員…じゃない。宿の店員さんなのだろう、マッチョさんと同じヒラヒラとしたフリルが沢山付いた可愛らしいエプロンを若草色のワンピースの上から身に着けた、ふわふわの長い金髪を後ろで一つに束ね、ぱっちりとした翠色の瞳の小柄な美少女も出て来て、マッチョさんと共に対応してくれたのだった――…。


 「ええと、俺と彼女の二人、今日一泊したいのですが二部屋空いていますか?」

 「おう! 空いているぜ! ウチは一人一泊、朝飯付きで銀貨一枚、料金は先払いだがいいか?」

 「はい、大丈夫です。宜しくお願いします」

 「おっし、銀貨二枚、確かに。ああ、ここにサインしてくれ」

 「はい。…これで良いですか?」

 「ああ。こっちは領収書だ」

 「はい、確かに」


 私がポカーンとしている間にロビンがマッチョさんに尋ねて、宿泊についても決めてくれていた。ごめん、ボーッとしていて。部屋に着いたら立て替えてくれた宿代の銀貨一枚、ちゃんとロビンに返さねば!


 「それじゃ、エリサ。お客様を部屋に案内してくれ!」

 「はーい! さっ、お客様、こちらへどうぞー!! お荷物お持ちしますね!」

 「あ、荷物これだけなので大丈夫です」


 自分より小柄な女の子に荷物を持たせるのは何だか悪い気がしたので遠慮しておいた。


 「俺も。軽いから自分で持つよ」

 「そうですか? それじゃ、お部屋にご案内しますねー!」


 そうそう、この宿の名前ね? “grilled chicken hotel(あれ? 直訳すると“焼き鳥ホテル”?)”だそうな…。受付の所に書いてあった。


 え、居酒屋なの? ホテルなの? それとも私の訳が日本語訳だからおかしいの!? ほ、他に別の意味があったりするの…!? 受付、二度見したよね。

 


ここまでお読み下さりありがとうございます…!!

(ブクマや評価も頂きまして、ありがとうございます! とても励みになります!!)


お金については、大金貨、金貨、銀貨、銅貨と出て来ていますが他に白金貨、鉄貨等があります。価値については、何となくで書いているので、おかしな部分がありましたらすみません^^;

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