あれ、ざまぁな展開は寝ている間に終わっていました? そして――…。
今回も駆け足気味です、すみません^^;そして、ブクマや評価を下さりありがとうございます…!!とても嬉しいです!!
そして、次の日。私は父の書斎に来ていた。母、兄、姉も居る。
とりあえず、それぞれ書斎に設置されている応接セットのソファに座り、ティーナが淹れてくれた紅茶を飲みながら。まずは兄と父、母(父兄席に居た)に昨日、私がパターン! と倒れたあたりの話を聞く事となった。ええと――…
『リザベル嬢っ…!!』
倒れかけている私が講堂の床に頭をぶつける寸前のところ。舞台下近くにひっそりと控えて居た(あー…第二王子がやらかしたらすぐ撤収&回収するつもりだったんだろうな…)領地持ちの侯爵でもある騎士団長の長男、ロベルト・ラドファルトが素早く私に駆け寄り、頭を抱える様に腕を伸ばし抱き止めてくれたのだそうだ。
ちなみに彼が、攻略対象者ではあるけれど逆ハーメンバーには入っていなかったのではないか? と思うもう一人だ。
顔には出していなかったし、王子達は全く気づいて居なかったけど、渋々、護衛の為に第二王子に付いている感があった…と思う。たまに見掛けた“ヒロイン(笑)と愉快な逆ハーメンバー達の楽しいお茶会”からも少し(物理的にも)距離を取っているように見えたんだよね。
まあ、それは取りあえず置いておいて。
(ロベルト様、ありがとうございます。おかげ様で頭かち割れずに済みました…!)
それからの私はと言うと…医務室まで姫抱っこで、さっさと運ばれ、家(ファラティリア邸)にさっさと馬車で運ばれ――…と言う流れになり現在に至るのだけど。(あれ? 何か一部さっさと流して良いのか? 的な事が混ざってなかった??)
「ええっと…それで、どうなったのです?」
一方の講堂では――…一連の出来事を額に青筋を幾つも浮かべながら(わー…血圧とか心臓とか何かもう、負担掛かってません?)黙って事の成り行きを見ていた国王。そして、手に持っていた意匠を凝らした素敵な扇子が見るも無惨にバッキバキに折れており(どんだけ力込められたの…!!?)使い物にならない状態と化していながらも、それを手に持ち続け微笑みを浮かべている王妃様が受け持つ事になったそうで――…
『アーボカスト。そなた…いや、お前には、ハァ…失望した。他にも思う事は多々あるが…今は呆れと怒りで言葉にならぬ。お前はこのような目出度き場を台無しにし、罪無き婚約者を始め、一部の善良な生徒さえも巻き込んで醜態を晒し…また、私がファラティリア家に申し入れ、用意した縁談を無断で破棄。おまけに新たな婚約を結ぶだと? そなたは王家の者と思っていたが…とんだ愚か者、いや道化師にでもなったつもりか? 全く笑えぬ余興だったがな。そんなに道化になりたいのならば今の身分は大層重かろう? 今回の事や今までのお前の行いを鑑みて、お前の第二位王位継承権は剥奪とする。勿論、王族の籍からも抜けてもらおう。
ああ、バーカス男爵令嬢と婚約したいとも申したな。学園も一応は卒業した事だ。婚約と言わず、すぐの婚姻を認めてやろう。これより、お前はバーカス男爵家へと婿入りすると良い。王妃も異存はないな?』
チラリと横にいる王妃に目を向けるも否やは聞かないと言った表情であり、また王妃にも否やは無く。
『はい、ございません。私もアーボカストのバーカス男爵家への婿入りに賛成致します。あら? 不思議そうな顔をしていますわね? 王や私が何も知らなかったとでも? 本当に。どうしてこのようなボンクラになってしまったのかしら? いいでしょう、忘れているようですから教えてあげましょう。王家には影なる者が存在しているのですよ? ですから、貴方達の愚行もしかと伝わって来ているのです。貴方も幼少期に教えられていた筈なのに…嘆かわしいわね』
…――この間、アボカス王子がギャンギャン騒いでいて、ビッチちゃん(あ、ヒロイン(笑)ちゃんだった…!)も『ちょっと! 話が違うじゃない!! 王子妃になれないなら、こんな王子と結婚なんかしないわよ!! アタシは貧乏男爵家なんて継がないんだから!! そうよっ、だったら他の…公爵家のファイや、宰相家のウォルに嫁ぐわ!!』だの、と。
まあ、ヒロインちゃんも、盛大にやらかしてくれたらしい。うん、私は気絶して退場していて良かったよね。
他家の逆ハー要員達もその後。家族にみっちり叱られた後、再教育やら跡取り候補から外されるやら。それぞれの婚約者からの婚約破棄または解消の申し出があったりと色々大変そうだったらしい。
そんな逆ハー要員達に贈る言葉は“自業自得”の一言に限りますかね!(少しは…いや、まあヒドイ…ヒロインちゃんのせいでもありますが)
実は色々端折ってるけど、私とアホの王子の婚約は王家側からの申し入れだった為、受け入れるしかなかったらしく、私は婚約した八歳から十年…つまり、十八歳の今まで王子妃教育を受けて来た訳だけど。婚約は破棄(父がしっかり破棄の証明書を貰って来ていました。仕事が早いですね…)。何かしら役には立つかもしれないけれど、今までのほぼ自由の無かった十年間!! 貴重な時間を返せゴラァ!! 社畜を舐めんなよー!!(え? 最後のは違うって?) と思った訳なのだけど。
後日、国王陛下と王妃様から秘密裏にではあるけど謝罪(と慰謝料ね!)をいただく予定があるとか。父上、ホント仕事が早いです。前世の上司に見習わせたいね、この早さ!(もう会う事も無い人だけど)
「と言う訳で、リザベル。今後暫く、あの件で周りが煩いだろうから家か別荘で静養という形を取るのが良いと思うのだが、どうだ?」
そう私に尋ねる父に『NO』と言う前に、姉が――…
「それなら、ウチに来たらどうかしら? ずっと家や、一人別荘に居ても退屈でしょう? ウチなら私も居るし、旦那様もリザの滞在を快く了承して下さるわ」
…――と提案を出した。うーん、有難い話だけど、こちらも『NO』で。
「父様、姉様。この度は、大変ご迷惑をお掛け致しましたのに有難いお申し出を頂き、感謝致します」
母と兄が『あれは、どう見てもアホ王子とバカ女の一行が悪いのだろう(でしょう)』と言っていたが、アホとバカの辺りはスルーしておこう。
「ですが、どちらもお断りさせて下さい。私は暫くの間、時間が頂けるのでしたら、やりたい事がございます。どうか、それに時間を使わせて頂きとうございます。お願いします」
家族に向けて深く頭を下げ、恐らく父から掛かるだろう次の言葉を待つ。
「ふむ、頭を上げなさいリザベル。やりたい事とはなんだね?」
「はい、私はどこかの田舎でスロー…いえ、のんびり穏やかに。なるべく自身で食材を調達し、時には料理を作ったり、決められた物ではなく好きな物を手芸や工芸にて作ったり、花を愛でたり、動物と戯れてみたり…そんなささやかな生活がしてみたいのです」
“スローライフ”という言葉は通じるのかな? 言わないでおいたけど、嘘は言っていない。そして、畑やら田んぼについては話せば間違いなく反対されそうだから、こちらは黙っておこう。なるべく自給自足、花(何の花かは言ってない。まあ、あれよ。野菜にだって花は咲くのよね)を愛でたり、と言ってあるから、これもまあ…セーフ? セーフよね?
「それは、庶民の暮らしがしてみたいって事?」
問いかける兄の言葉に『はい』と頷く。
「のんびり、穏やかに…。そうね、リザは小さな頃から、ずっと王子妃教育や習い事で忙しい日々だったものね…。時には一人で泣いていた事もあったわね。ねぇ、父様、母様、ウイ。リザには時間が出来た。それなら少しの間位、自由に過ごす時間を上げても宜しいのではなくて?」
と言ってくれたのは姉…シルヴィア(ヒィ、小さな頃の事だけど泣いていた事がバレていた!)で。兄、ウイことウィンディアも「そうだな…」と頷いてくれた。
ま、少しの間と言わず、ずっとスローライフを希望! なんですけど――…何か言い出しにくいな。とりあえず、暫くは温かく見守っていて貰いたいです、ハイ。
はい、そして結果ですが。OKです、OK出ました。
「えぇえ!? ちょ、ちょっとお待ち下さい!? 何で馬車三台!? え? 私の荷物? これでも少ない? 後の一台には私付きの従者とメイド達が乗っている? な、ななな何を仰っているのですか、父様、母様!! ちょっ、兄様も何とか仰って下さいませ! え? 『俺も視察を兼ねてリザと行く』? 視察結構! ですが、私と一緒に出るのはNO!! ですっ!!」
とまあ、こんな感じで賑やかな旅立ちの朝。見送りに外まで出てくれた両親と兄と挨拶?(ちなみに姉は数日前に嫁ぎ先に帰って行った為、姉が帰る前日に挨拶を済ませてある)を済ませて。私は乗り合い馬車の停車場まで歩く。行き先は王都から出て馬車で十日程掛かる、ファラティリア領の中でも辺境にある村だ。何でも、それはそれは大きな岩山を中心として国境が別れており、三つの種族がそれぞれ岩山から北と東と西に別れて暮らしているとかで、私が目指す人族の村“キタムラ”(…北村。日本人の名前みたいだね)のご近所には魔族、獣人族が住んでいるらしく、もしかしたら他の種族も、人族が未開の地(南側…南村、かな?)に暮らしているかもしれないとの事だった。
あ、荷物はちゃんとカムフラージュ用のボストンバッグ一つと空間倉庫(空間魔法の一種です。空間魔法は高魔力保持者に使い手が現れる事があるが、その使い手は少ないみたい。だから、手ぶらで旅をするのは、あまり宜しくないらしい。高魔力保持者な上、空間魔法の使い手か、と。疑われ、狙われ兼ねないので)にまとめました。
あっ、そうそう言う機会が無かったけれど、この世界は魔法が使えます。そこはテンションがガッと上がるってものですよ! ご都合主義も第二王子の個別ルート(逆ハールート寄り)の時にはケッと思ったけれど、自分に有利に働くものならば悪くないものです。(現金な元・悪役令嬢、リザベル・ファラティリアです、こんにちは!)
ちなみに。荷物はまとめたとは言え、流石に馬車三台分は空間倉庫にも入れてはいない。(まず特に必要の無い筈のドレスだけで馬車一台分あったし)従者とメイドも丁重にお断りし、屋敷の仕事に戻って貰いました。付いて来られたらスローライフ出来なさそうだし。
ここまでお読み下さりありがとうございます!!
馬車で十日(リザベルは途中下車をして、他の町に泊まりながら移動しています)の旅については次回以降書いて行く予定です。