これは、お約束の展開ですか?
息抜きのつもりが少し長くなりそうです。序盤駆け足気味ですが、息抜きがてらボーッとお読み頂ければ有難いです。(ツッコミどころも多々あると思いますので、サラッと読み流し推奨です。)
2024年6月追記
流れは変えていませんが、大幅に加筆修正しています。
「リザベル・ファラティリア侯爵令嬢。お前が一件を除いた他の件には関わっていない事は解った。だが、それでもお前はフローラルを精神的に痛めつけ、その心を酷く傷つけた。そんな醜い行いをするような奴と結婚する訳にはいかない! お前との婚約は今この時限りで破棄させてもらう!! そして、新たに! 私と、ここに居るフローラル・バーカス男爵令嬢との婚約を新たに結ぶ事をここに宣言する!!」
王立学園・高等科の卒業式。式典終了後。
第二王子アーボカストは講堂に居た来賓含む全員の退席を止め、美しいと言うよりは可愛らしい、と言った雰囲気の令嬢と、自身の側近候補でもある友人達数名と共に、式典用に華やかに飾られた舞台へと上がり――…その可愛らしい雰囲気の令嬢、フローラル・バーカス男爵令嬢に対するいじめについて、演説でもしているかのように声高に語りだし、自身の婚約者である筈の侯爵令嬢を呼び出し、断罪なる事を始めていた。
いじめの内容は…彼女の物(教科書やノート、ペンケースと言った小物等)が無くなる、ダンスの授業後に制服が破かれていた、二階からバケツに入った水を掛けられた、階段から突き落とされそうになる(いくつかは冤罪、自作自演だと後に解るけど、この時にはまだ知る由がない)…等らしい。
その中に、私がいつだったか一度だけ口頭で丁寧に注意した…簡単に言えば『他の人の婚約者に気軽に抱き着いたり、腕を組んだりしてはいけませんよ』『休日に他の人の婚約者と二人きりで出掛けるのはあらぬ誤解を招きますのでお止めになった方が良いですよ』とした言葉だけなのだけど。それを彼女は罵詈雑言と受け取ったらしく、大層ショックを受けたのだとか。つい、言葉の通じない異世界とか、お花畑の住人かと言いたくなる。
そして幼い頃から一緒に過ごす事も多く、恋情は無くても、全く情の無かった訳では無い、正直手の掛かるちょっと(…いや、かなり?)おバカな弟のように思っていた第二王子から発せられた先の言葉に、私は少なからずショックを受けたのだろう。第二王子…! ここまでバk…アレだったのか…!! と。
この時。急に周りの音が聞こえなくなる位のキイイィィィン!!! という高音の強い耳鳴りを感じ、足元から力が抜けるような感覚が起こり、私は――…
『この悪役令嬢ってさー、真っ当な事しか言ってないし、裏で汚い事もやってなかったじゃん? それなのに婚約破棄されるとか酷くない? 王子妃教育で幼い頃から勉強やら習い事ばかりで頑張ってきたのに、ちょっとパラメーター足りてて、正解の選択肢で『貴方は貴方よ!』とか『私だけは本当の貴方を知っているわ』とかさー、甘いって言うかチョロい言葉掛けられまくっただけで、ヒロインは俺だけを見て愛してくれている! 彼女と結ばれたいって! 萎えるわー。もっと納得行く理由無かったんかい! って!』
『まあねー、ご都合主義ってやつでしょ。確かにこの第二王子ルートと逆ハールートのヒロインは頭弱すぎビッチちゃんだから、めっちゃイライラするわね。この二つのルートのシナリオ書いた人の作品は今後二度と買わないと決めたわ。私には合わな過ぎてストレス溜まるだけの話だったわ…』
『でもさ、ヒロインがビッチじゃなくてマトモだったルートもあったじゃん? 後、隠しルートのやつ! あれらは良かったのよ! あのルート書いたライターさんが続編とか書いてくれたらさ〜ー――…』
…――この世界ではないと解る世界。前世の世界での友人と“私”が住んでいるアパートの部屋でしていた会話や、その他色々な事が。まるで何倍速かも解らない位の速さで脳内に思い浮かんでは流れて行く事に対し、気分が悪くなって来ていた。
(…あ。ヤバい……)
「リザベル嬢っ…!!」
私は目を回し、誰だか解らないけど焦るような男の人の声を微かに聞きながら、その場でパタリと倒れてしまった――…らしい。
「あ…れ? ここは――…?」
見覚えがあるクリーム色の天井? ああ、十八年過ごしてきた自室の天井だわ、と気付いた。
(いつの間に家に帰って来たんだろう? ん? おでこに冷たいタオルが乗ってて気持ち良いな…)
どうやらベッドに横になっている事から『あららー、こりゃ倒れたかなー?』と判断する。
(倒れるのなんて、春先に残業で四日徹夜して以来かなー…。あー、企画書のデータちゃんと保存してたかなー、新人まさか、またミスって削除なんてしてないだろうな…。えーと、依頼主との打ち合わせが明日で、向こうの会社宛に先にデータは送ってあるから後は…――って!)
「いやいや、今の私は理鈴じゃなくて、リザベルだから…!!」
目覚めたばかりで、ちょっと混乱しているみたい。(ついでと言うのもなんだけど、前世の名前も思い出したし。名字は…解らないわね)
「まあっ! リザベルお嬢様っ、目が覚められたのですね!? すぐ旦那様達にお知らせして参ります!」
と、考えていたら。私の看病をしてくれていたのだろうメイドのティーナが部屋のドアを開け、水を張った桶を持ち部屋に入って来たのだけど、意識が戻った私を見て、それをサイドテーブルに置くと再び部屋から出て行ってしまった。
それから、まあ医師に診てもらったり(身体に異常は見られず、倒れたのは第二王子からの婚約破棄宣言による精神的ショックによるものだろうとの事。まあ、倒れたキッカケではあるけど王子の事はもう何とも思っていないんだよなー…まあ、今言う必要もないかな)、現世での父、ファラティリア侯爵と現世での母、ファラティリア夫人が顔を出したり(とりあえず今日はゆっくり休んで明日、今日起きた騒動の話と、これからの話をしようとの事だった)、ヒロインの逆ハーメンバーに取り込まれなかった攻略対象者の一人、兄(兄は確実だけど、もう一人取り巻き化しなかった人が居ると思う。…多分、だけど)と、姉(既に嫁いでいるが私の卒業祝いの為にファラティリア家に来てくれていたらしい)が見舞ってくれて、何だか賑やかだなぁと思った。
「あれ? 何か卒業式の記憶が、うっすらとしか無いね?」
思い出すのは舞台上でドヤ顔していたアホの第二王子とビッチヒドイン…いや、ビッチヒロイン…あ。ヒロインか。他に彼らと愉快な逆ハーメンバーと言う名の攻略対象者ほぼ全員。
メンバーは確か…公爵家跡取りのボンボン、宰相子息であり侯爵家の三男、後は確か後輩の…見た目は可愛い系の伯爵家子息のぶりっ子双子と、えーと来賓として来ていた魔法省の下っ端職員(一見隠しキャラ? と思うけど隠しキャラでは無いんだよね)辺りか。あの人達のインパクトが強くて――…何だか損した気分だな。
しかし。あの出来事があったからこそ前世の記憶を思い出した訳だし、これからどうしたいのかも考えられる。…いや、実はもう、前世の時からやりたい事はあるんだ。だからまあ、もう婚約破棄云々の事後処理とか(どうでも)いいわ! って事にしよう。お偉方に丸投げする!
そして、私がやりたい事は――…
「前世は社畜だったから会社と家の往復が殆ど。今世は幼い頃からずっと今まで王子妃教育と習い事――…もう何かに縛られずに自由に過ごしても良いでしょ! 私は…これからは“スローライフ”がしたい!!」
…――目指すは、のんびりスローライフ! である。
ここまでお読み下さりありがとうございます!!




