Sun Times
「ん・・・・・ここは・・・・・」
辺りを見渡す。
そこにはカウンターに椅子が並んでおり奥に酒が並べられていた。
「(何だここ?バーっていう所か?)」
「あ、目を覚ましたのね」
ふと声をした方を向くとそこには黒い髪のセクシーな女が立っていた。
「あれ?あんたは?・・・・・・」
「私は酒道 愛珠。よろしくね・・・・・・」
「俺は妓天 嵐。ここはどこだ?」
酒道はフッと笑うと今までの出来事について話した。
「まず、あなたがヤクザ達を倒したのは覚えてる?」
「え、ああ、一応は・・・・・」
「そう、じゃあ話は早いわね・・・・・・」
「?」
「単刀直入に言うと、あなたを誘拐したの」
「はあ!?」
「実はあなたのヤクザとの喧嘩を見ててね、貴女をぜひ私達のチームに入れたいなって」
「それで・・・・・・催眠弾まで仕込んで誘拐したのか?」
「誘拐って響きは失礼ね。借りただけよ」
「(さっき自分で誘拐言ってましたやん。てか、借りただけって・・・・・・・あれ?)」
「そういえばさっき、私達って・・・・・・」
「そうよ、私の他にあと4人いるわ」
「4人も・・・・!?」
「あれ?例の奴、起きたのか?」
「ああ、司、起きたよ!」
「へぇ、こいつが・・・・・」
ガタイの良い男がこちらを覗き込む。
「紹介するわ。こいつが倉石 司。で、この子が妓天 嵐。」
「よろしくな!」
「お、おう・・・・。よろしく」
俺と倉石はお互いに握手した。
「で、アイツ等は?」
「ああ、今買い物中だよ」
「へぇー・・・・じゃあ、今のうちになぜ連れ去ったか言っちゃいましょっか!」
「だな」
「?なぜ連れ去ったんだ?」
「まあ、大きく分けて2つ。一つは、お前の実力を買っているから。もう一つは、お前が倒した相手の長がヤバイやつだから、だ」
「長?」
「ああ、暗殺組織の一つ、『ブラックマンバ』っていう名前で呼ばれてる組織でな」
「(ブラックマンバってあのグループか)」
「四大暗殺組織の一つなんだ」
「そうなのか?(知らないフリしとこ)」
「そう。一つが今言った、『ブラックマンバ』そして『ウツボ』『白虎』『神狼』の3つ」
「6年前に『白虎』は壊滅したって聞いたけど真相はまだ分かっていない」
「(やべ、壊滅させたの俺だわ・・・・・・)」
「まあ、大事なのはあなたがブラックマンバの下っぱを倒してしまったことに問題があるのよ」
「なるほど、下っぱを倒されて腹を立てた長が居所をあぶり出して捕まえに来ると・・・・・・」
「そう、それであなたを拐って匿うってわけよ」
「ほー・・・・・・」
「まあ、喧嘩を目撃したのは偶然じゃないんだけどね」
「え?」
「あの子が教えてくれたのよ。ホラ、君がいた居酒屋の女の子」
「あの子が!?」
「実はあの子と何かと縁があって友達なのよ」
「へ、へぇ・・・・・・」
「ちなみにここも居酒屋の近くだぞ?」
「マジで!?」
俺は窓の外を見てみる。
確かに少し奥に俺がいた居酒屋の店が見えた。
「(てかここ何階だ?)」
「8階よ」
「うわっ、(心の声を読むなよ・・・・・・)」
「いいじゃない。それより今、朝だけど仕事行かなくて良いの?」
「・・・・・・・・・・・」
俺は携帯を取り出す。
「すいません、課長。ちょっと用事が出来まして今日は休ませていただきます」
ピッという音を鳴らして携帯を切った。
「仕事が早いわね」
「なんか、仕事がめんどくさかったんで」
「仕事は警察だっけ?」
「はい」
「ダメよ。仕事サボっちゃ・・・・・・」
「はい・・・・・・」
「そんなことより今関わっている案件について話しておこう」
倉石がいきなり話を切り始めた。
「そうね」
「?」
「今な、『椿』っていう整形外科に関わっているんだ」
「?ん?椿?」
「ああ、そこの整形外科は腕は良いらしいが変な噂がたっていてな・・・・・」
「ああ、神隠しの椿か」
椿は表は腕の良い整形外科で有名だが黒い噂も立っていて、何でも「まるで神隠しにあったように整形した人がちょくちょく消えている」と言われている。
「知ってるなら話は早い」
「実はね、この前気になって忍び込んで調べてみたんだけどこれが真っ黒だったのよ」
「マジで?」
「そうなの。色々資料をさばくってみたらこーんなカルテを見つけたの」
酒道はスマホの画面をを見せるとそこには大きい文字で『臓器移植雇用表』と書かれていたカルテが写っている。
「・・・・・・・なるほどな」
俺はゴクリと唾を呑み込む。
そこには写真が添付されていて内臓を抜かれた人の顔が写し出されていた。
「証拠は手に入ったから後はどうやって警察につき出すかだな」
倉石は腕を組み悩む。
「あ、じゃああれは?警察にこの証拠をつき出すとかは?」
酒道が提案するが倉石は首を横に振る。
「それだとこの証拠を持っている俺等が怪しまれるかもしれない」
「うーん」
「もう一度、侵入してみるのはどうだろう?」
俺は少し危険な方法を思い付いた。
「椿に?」
「うん」
「危険だな・・・・・・でも今のところ、それしか無いもんな」
「大丈夫かしら」
「もし、侵入して運良く臓器を取り出している場面だったら証拠を撮ってズラかろう」
「そうね」
「待て待て、本当にやるのか?」
「あら、あなたが言ったんじゃない」
確かに提案はしたよ?でも冗談のつもりなんだけど!
「まさか・・・・冗談のつもりで言ったとか言わないわよね?」
酒道がニコッとこちらを向いている。
だが目が笑っていなく謎の圧を感じる。
「はは・・・・・我ながら名案だと思いました・・・・・」
「名案では無いと思うけど、この案に決定ね」
ヒドイな・・・・・その通りだけど。
「じゃあとりあえず今日早速侵入してみるか!」
「早っ!」
「?早い方がいいだろ?」
「いや、そうだけどもう少し段取りとかを・・・・・」
「こうしてる内にも誰かが犠牲になってるかもしれないんだ」
倉石はまっすぐと俺の目を見た。
俺は何故かこの男を信用したいと思ってしまう。
俺は了承した。
「分かったよ。でも失敗すればその時は・・・・・・・」
「ああ、命を捨てる覚悟はできてる・・・・・・」
「よし、じゃあ今日行くか・・・・・・」
「もちろんお前も行くんだぞ?」
「え?」
倉石は当然のように俺の肩を掴んだ。
「何のために君に了承させたと思ってる?」
「・・・・・・マジでか」
「マジで」
肩の掴む力が強くなっていく。
「分かったよ・・・・・侵入すれば良いんだろ!」
俺は仕方なく了承した。