嘘つき座敷わらし
「わらわは座敷わらしなのだ!」
「は、はぁ……?」
休日、たまには外に出て散歩でもするかと思い立ち、靴に履き替え玄関の扉を開けた。
するとそこには、可愛らしい幼女が立っていた。満面の笑みを浮かべて。
「だから、主の家に入れてはくれないだろうか! 一人じゃ寂しいのだ!」
「座敷わらしって……君、ただの子供だよね? 迷子になったのかい?」
「迷子じゃないよ! 本当に座敷わらしだってばぁ~ん……」
「おいおい! わ、分かったから! さっ、入りな」
「わ~、ありがとう!」
俺の休日の散歩心が、一瞬にして消え去った。現高校生活で陰キャを極めた俺に、幼女とのコミュニケーションなど取れるのか?
*
数分後。
「それでね、前にいた家では色々事件があってさ! もう怖いの! だから抜けてきちゃった! 特におばさんが!」
「ははは。特にお母さんなんて役職、最悪だよね。勉強しろ勉強しろとか、ゲームするなとかうるさいし」
「そうそう! 私、怒られるの苦手なの!」
「それ、俺もだよ。仕方なく課題をこなすんだよなぁ、それで」
コミュ障を発揮するどころか、数分経ってその座敷わらしと名乗る女の子と仲良くなってしまった。
今のところ座敷わらし的な幸運やら幸福やらは一度も感じていないが、果たして匿っておいて正解なのか?
「ゲーム?! ゲームがあるの?! 一緒にやりたい!」
「おっ、妙に喰いつくねぇ。一応スマ〇ラならあるけど、どう?」
「うん、やるやる! 私、2Pのコントローラー使うね!」
「手際がいいねぇ。操作方法は分かるかい?」
「なんとなく!」
急遽Wiiをテレビに繋ぎ、ゲームをする事に。さすがに負けることはないだろうけど、暇つぶしには最適か。一人でレベル9のbotとやるのも飽きてきたし。
「まずキャラ選択をするんだよ。誰がいい?」
「マ〇オ! このキャラしか知らない!」
「成る程。じゃあ僕はク〇パだね。敵同士だし」
「わーい!」
いつものコントローラーの持ち方で、「少しは手加減してやるか」と余裕をぶっこいていた。
レベル9のbotにノ―ダメージで勝てた俺なら、こんな幼女くらい。と、嘲笑っていたのも今のうち。
「……ッ! 何て強さだ!」
「いけいけー! 攻撃だー!」
「うわっ! おかしいだろ――っ!」
マ〇オの連続コンボや必殺技に対応できず、次々とダメージを喰らう。そして、場外にK・O。まるで、世界大会の優勝者と対戦しているようであった。
次々とライフが減っていき、徐々に「もう無理だ」と諦めるようになってしまった。
「どうしたのお兄さん! まだ一回も死んでないよ?」
「……クソ。幼女のくせに、煽りスキル持ちかよ! うおおおっ!」
「う、うわあ~!」
*
「もう無理だ~!」
「やったー! 勝ったぞー!」
結局10戦ほど戦ったが、自称座敷わらしの幼女に見事完封され、一気に集中力がぶっ飛んだ。
何と言うか、刺激的な1時間だったと思う。
「ありがとう、また挑戦させてくれ」
「いいよ! って言うか、もう一回やろ! 時間ならまだあるし!」
「時間って、決められてるの?」
「いや、そうじゃないけど……いいじゃんいいじゃん! どうせ暇でしょ? やろうよ!」
「それはそうだけどさ」
そろそろ週末課題をしなきゃ間に合わない時間だし、自称座敷わらしにはスッと消えてもらいたい所なんだが……。
「いいじゃんいいじゃん! やろうよー!」
「俺、これから忙しくなるからさ。ゲームはここでおしまい!」
「……ちぇ。あんまり時間ないのに――」
幼女がそう愚痴った時、玄関のインターホンがピンポーンと鳴る。
「誰だ? こんなところに」
ガラガラと扉をゆっくり開けると、今度は20代後半くらいの美女が立っていた。
「すいません、この辺りで子供を見ませんでしたか? 小さい」
「子供ですか。確か、俺の部屋に――あっ」
「ま、ママ……」
振りかえると、少しプスっとした顔の幼女がいた。
「もうダメでしょ? 他人の家に勝手に上がっちゃ」
「勝手じゃないもん! ちゃんと許可もらったもん!」
「早く帰るわよ! ご飯抜きになっちゃうよ!」
「う、うぅ……」
怖がりながら、幼女は俺の横を通って美女の隣に立った。
「うちの娘がすいません、次からは気をつけますので」
「え、ああ、おかまいなく。一緒にゲーム出来て楽しかったですし」
「そうですか。ありがとうございました」
深々(ふかぶか)と一礼して、親子は歩いて元いた場所に帰って行った。
えっと、あの娘…………………………………………誰やねん!?




