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67.銀狐

ザクッ、ザクッ、


俺は木材を次々と地面に刺していく。

かなり巨大だが、今の俺からしたら余裕だ。


「す、凄い馬鹿力だな……」


俺の横で、グルットが言った。

まだ松葉杖を突いている。

あ、そうだ。

前に貰ったあの薬を返さないと。

2つ使っちゃったから、1つしか残っていない。

確か一瓶で家が建つんだっけ……。

やばい、なんか言うの怖くなってきた。


「……グルットすまない、薬が一瓶しか残らなかった。」


俺はそう言いながら、懐に大事に仕舞っておいた瓶を差し出した。


「おお、一瓶残ったのか。」


グルットはそう言い瓶を受け取った。

……え?怒ってない?

何でだ?出会って短い顔も見たこともない奴に自分の財産を使われたんだぞ?


「……本当にすまないな。」


「気にすんなよ。前にも言った通り、俺はアンタに親友の娘の命と自分の命を助けられてんだ。普通に考えて一生かえせねぇ恩だからな。」


……まずい、泣きそうだ。

こう言う人の暖かみを異世界でも感じられたから、俺は今でも心は人間いられるんだと思う。


「それじゃあさっさと柵を作っちまってくれ!情けねぇ話だが俺の怪我が治るまでは、この村の守りの要はこいつだからな!」


グルットはそう言い、笑いながら村の奥へ消えていった。

確かに、魔物は少ないとはいえ彷徨いてるからな。

早めに村の安全を確保しないと。


「騎士様!王都で戦った時のお話を聞かせてください!」


作業している俺の元に、6人程の男の子が集まってきた。

その中にはリウスもいて、全員絶妙にあほっぽい顔つきをしている。

6人共年齢的には小学2~4年生ぐらいか。

この時期の男の子は、仮面ライダーや戦いごっこに人生を賭けてるからな。

身近な騎士である俺の戦いの話を聞きたがるのは当然か。

良いだろう、俺の涙あり流血ありのハートフルストーリーを誇張マシマシで語ってやるぜ!


「こ、コラ!騎士様は村のために大変な仕事をしてくれてるんだから邪魔しちゃいけないでしょ!?」


「いや、作業の片手間で良いのなら構わないぞ。」


「「「やった!」」」


俺がそう言うと子供たちは跳び跳ねんばかりに喜び、輝いた目を向けてきた。

子供相手とはいえ自分の話を誰かが楽しみに聞いてくれると言うのは、気持ちが良いな。


「まず私は、巧みな剣裁きで1000人の騎士を一度に相手しーー」


「クォォォン!」


俺が話そうとしたとき、作りかけの柵の外から魔物の声が聞こえてきた。

な、なんだ?


「観察!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『エイギル・フォックス』ランクC-】

【魔力を動力に変える特性を生かし、天敵の少ない寒期に活動する】

【漂っている死者の魂を火種にした火炎玉を放つ】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


銀色の毛並みをした巨大な狐が、雪の上を滑る様に近づいてきているのが見えた。

C-か……。多分倒せるが……後ろを見ると、エイギルフォックスの接近に気付いた村人達が、半ばパニックになりながら逃げ惑っている。

説明文を見る限り、こいつは遠距離攻撃持ちだ。

村人が射程に入る前に、こちらから接近して倒すしかない。

俺はエイギルフォックスに走っていく。


「クォォォ!」


俺に気づくと、エイギルフォックスの回りに5つの火の玉が現れた。

全てに魔物や人間の顔が浮かび上がっていてかなり不気味だ。


打ち出された火の玉は、大口を開けて俺に噛みつこうとしてきた。

うわ!火の玉の癖に行動してんじゃねぇよ!斬新か!

俺は火の玉を避けたが、ホーミングしてくる。

スピードはそこまで早くはないが、かなり高性能だなこれ。

追ってくる火の玉に注意を払いながら、俺はエイギルフォックスと衝突した。


背中から剣を抜き、エイギルフォックスの爪を迎え撃つ。

火花が散り、剣が悲鳴を上げた。

武器の耐久度が心配になってきたが、力では俺が勝っているな。

左手にバイルバンカーを装填し発射した。


「クォォ!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【経験値600を得ました。】

【『斎藤健一』のレベルが35から37へと上がりました。】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


バイルバンカーはエイギルフォックスの胸を貫いたが、倒れる気配がない。

な、なんだ?

俺が不思議に思いエイギルフォックスの顔を見ると、かなり異様だった。

目は白目を向いていて口の端からは血泡を吹き、更に口の中から何やら黒い塊の様な物が見え隠れしている。

え……怖……。経験値取得したよな?

これ、死んでるのか?気味が悪いからさっさと帰ろう。


ぐちゃ、


その時、口の中で蠢いていた黒い塊が俺に急接近してくる。

それは、狐の生首を象ったどす黒い色の炎だった。

咄嗟にバイルバンカーを発射すると、打ち出した槍に黒い狐が噛みつき、槍がぐずぐずに腐食し崩れ落ちた。

それと同時に狐も煙の様に掻き消えた。

おお……危なかった……。死んでから最後っ屁かましていくパターンも有るのかよ。

今まで経験値の取得を死亡確認にしてた感じはあったから、次からはそれも念頭に置かなきゃな。


俺が戻ろうと後ろを見ると、子供達と村人が驚いた顔をしていた。

あ……エイギルフォックスの死体はかなりグロい状態だから、子供にはショッキングだったかもしれない。


「だ、大丈ーー」


「「」すげぇぇぇ!」」」


「え?」


村人達が一気に沸き立つ。

よ、良かった。

この世界の子供たちは大分逞しいみたいだな。

一部の子供は死体に近づいてきて触りだした。

だ、大丈夫か?この世界にエキノコックスが有るかは分からないが、そうじゃなくてもなんか変な病原菌と持ってそうで怖いんだけど。


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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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