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63.『テレパス・バースト』

「大丈夫だから……うん、心配しないでよ。まだ頑張れるよ。まだ私だから。私だから。泣かないから。寒いなぁ。誰か助けてよ。あはは……ごめんね?お馬鹿さんみたいだよね?大丈夫だよ?大丈夫だから……一緒に遊ぼう!何がいい?鬼ごっこする?わぁ、楽しみだよ!私やったこと無かったんだ!お友達だから、遊ぼうね!」


ハーネスは、ぶつぶつと何かを話しながら近づいてきた。

目は虚ろで、ふらついている。

……やばい。

ステータス的には俺の方が強いはずなのに、何故か勝てる気がしない。

一旦退こう。


「は、ハーネス、俺ちょっと大事な予定思い出したから帰るわ!」


俺はそう言い、ハーネスに背を向けブラウに向かって走り出した。

今のアイツに背中を向けることに恐怖を感じるが、それしかない。


「行かないでよ……『アイスプリズン』」


ビシャアン!


「ほわぁぁぁ!?」


走っていた俺の周りに突如透明な檻が発生した。

触ってみると冷たい。

こ、氷か?でも、普段のハーネスが言っていた魔法の属性に氷なんて無かったはずだ。


「もう私の見えない場所に行っちゃだめだよ?けんいちは、私とずぅーっと一緒にいるんだから。」


ハーネスが右手に冷気、左手に炎を渦巻かせながら更に近づいてくる。

なんだよあれ、ラスボスかよ!?

死ぬ、死んでしまう!


「ケンイチさん! 」


流石に危ないと思ったのか、ブラウが駆け寄ってきた。

おお!ブラウが来たからには安心だ!

一発お灸を据えてやってくださいよ兄貴!


「『インフェルノ』」


ハーネスの左手の炎が指向性を持ってブラウに打ち出された。

ははは!たかが炎がブラウに効くかよ!


ボシュ!


「熱ちぃん!」


「ブラーウ!」


炎がブラウに燃え移り、広がる。

え、えええ!

ブラウにダメージが通っている……だと!?

すげぇすげぇすげぇ!

状況が状況じゃなければ快挙だったよ!

いや、そんなこと言ってる暇すらねぇ!

ブラウにダメージを与えられる炎なんて俺に撃たれたら灰すら残んないぞ!

とにかくまずはこの氷の檻を壊さなければ!


「バイルバンカー!」


パキン!


お、壊れたぞ。

打ち出した槍の方が。

氷はちょっとだけ削れたかな。

一部だけでも壊れればそこから破壊できる!

俺は手からナイフを出し、削る。


がりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりバリン!


く、砕けた!

俺はその隙間を起点に檻を破壊し、なんとか外に這い出た。

ブラウの火はもう消えていて、直後は毛先が少しだけ焦げていたが、一瞬で再生した。

あ、本当に「熱かった」だけなのね。


「『テレパスバースト』」


その時、沈黙を守っていたハーネスから真っ黒な波動が吹き出た。

一瞬何だと思ったが、その波動が通った場所の草花が枯れるどころか崩れ落ちていた。

なんだあれ……何属性の魔法なんだ?

防ぐ間もなく、俺達に衝突する。


ーー波動に触れた瞬間、何故か俺の頬を涙が伝った。


えっ……なんだこれ。

なんか凄ぇ死にたいんだけど。

自分の殻に閉じ籠りたくなる。

あー、何もしたくないわ。

マジさげぽよ。(時代錯誤)


「え、ケンイチさん?どうかしましたか?」


「あ、いやー俺さ、なんかもう色々どうでも良いわ。」


「ええ……?」


地面に横になった俺を見ながら、ブラウは困惑した顔をしている。

なんか滅茶苦茶に悲しいし寂しいしやる気が起きない。

人肌が恋しい。


「あ……」


ハーネス俺に歩を進めようとした時、ふと何かに気づいた様に声を出した。

えー、何?


「違う」


「へ?」


「違う違う違う!」


ハーネスはそう言いながら緑色の髪を振り乱し、うずくまった。

……何がしたいんだこいつ。


「……あれ?ケンイチ、いつの間に帰ってきたのだ?」


「え?」


ハーネスは立ち上がったが、先程までの狂気に濡れた表情と雰囲気は嘘の様に消え失せていた。

ハーネスの口調が変わったと同時に、俺に根ざしていた黒い感情もスー、っと息を潜めていくのを感じる。

俺は立ち上がり、ハーネスを再度見る。

俺の方を見ながら本当に不思議そうな顔をしている。


え……どゆこと?

さっきまで自分がしてたことを忘れたのか?

いや、引っ込みつかなくなってしらばっくれてんのか?

……でも、演技をしてる様には見えないんだよなぁ……。

今まで散々演技とハッタリで乗りきってきた俺だから分かる。

こいつは嘘をついていない。


「うぁ……え……あ、あれ?ケ、ケンイチ、横に魔族がいるぞ!逃げろ!」


ハーネスはブラウを見ながら、顔色を青くしている。

これが演技ではないと仮定して、ならばさっきのはなんだったんだ?


「『フ、ファイヤ!』『ウッドアロー!』」


ぽすっ、ぺしっ。


打ち出されたのは、先程の魔法のとは比べ物にもならない程に弱すぎる魔法。


「ああああ!儂達はここで死ぬんじゃ!」


自分の魔法がブラウの毛皮に弾かれてるのを見て、ハーネスの表情が絶望に染まった。

多重人格、とか?

いや、それなら何故魔法の威力が段違いなのかが説明つかない。

何がどうなってるんだ……。


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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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