52.王都再来
俺は王都に向かう道を走っていたが、全く先が見えない。
当然だ。
勢いのまま出発しだけど、前回馬車でも数時間掛かったのに直ぐに着くハズがない。
けど……これ以外ないのだ。
この足を少しでも止めてしまえば、ブラウの命が危ない。
一瞬の遅れでもしブラウが死んでしまったりしたらきっと俺は一生後悔しながら生きていかなければならないだろう。
そういや、俺の今のステータスはどうなっているんだろうか。
もし王都で戦闘になった時にテンパんない為に見ておくか。
場合によっては、グルットにもらったこの薬を使わなければならない。
「ステータス」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【斎藤健一】
Lv:29/80
種族:人間
状態:勇者
HP:210/210
魔力:11/183
攻撃力:90+25
防御力50+35
魔法力:90
素早さ:110
装備:
『ルビエド騎士の鎧』E
『ルビエド騎士の直剣』E
固有スキル:
『魔力変質LV__』
耐性スキル:
『刺突耐性LV1』
『痛覚遮断LV4』
「殴打耐性LV4」
『石化耐性LV1』
『衝撃耐性LV6』
『熱耐性LV5』
通常スキル:
『観察LV5』
『刺撃LV3』
『斬撃LV1』
『射撃LV1』
『蹴りあげLv1』
『殴打LV1』
『バイルバンカーLV2』
称号:
化物騎士LV__
村の英雄LV2
ロードオブナイツLV__
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
体力は全快だが、魔力の減りが著しいな。
俺はグルットに貰った薬を見やる。
グルットが言うには、これは体力と魔力両方を回復させるらしい。
だから、体力はある今に使うのは勿体ない……気がする。
それに、魔力はさっきより回復している。
王都に行くまでは自然回復に任せて、向こうで戦闘になったら切り札として使おう。
そして……先程カーニャに貰った鎖帷子だ。
これは使えさえすれば有用そうだが、明らかにサイズが合わない。
多分俺の肩幅がでかすぎて入らないだろう。
……とりあえずしまっておくか。
「ボアァ!」
目の前に、巨大な猪が現れた。
この時間が無い時に……。
スルーしたいが、走ってるときに後ろから突進でもされたら大変だ。
仕留めなければ。
「観察」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『グランドボア』ランクE
【巨大な猪の魔物。】
【その突進は、木の幹を揺らす程。】
【しかし、格上にも何も考えず突進を仕掛けるため、総じて短命】
【『観察』のレベルが5から6へと上がりました】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ランクEか、俺の敵じゃないな。
あと観察レベルアップナイス。
「ボアァァァ!」
背中からクロスボウを抜いた。
横から突進してきたグランドボアに、クロスボウを打ち込む。
グランドボアは、自らのスピードが乗っかったボルトをモロに食らい、絶命した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
【斎藤健一のレベルが28から29へと上がりました】
【『射撃』のレベルが1から2へと上がりました】
ーーーーーーーーーーーーーーー
グランドボアからボルトを抜くと、牙に掠ったのか先端が欠けていた。
このボルトはもう駄目だな。
俺は欠けたボルトを捨てて、2本目をセットし背中に戻した。
そしてまた走り出す。
◇
「はぁ、はぁ……。」
完全に日が沈んだ頃、俺は王都の門の前に着いていた。
切れた息を整えて、門に向かう。
門番らしき人物は、ボロボロの鎧を纏った俺に一瞬ギョットしたが、すぐに平常に戻った。
「すいません。入りたいのですが。」
「あー、通行証か冒険者カードは持っているか?」
「どうぞ。」
俺は乳白色のカードを門番に見せる。
「通れ。」
門番はロクにカードを見もせず、俺を通した。
おいおいおい首都の守りの要がそんなんで良いのかよ。
こちらにはその方が都合が良いのだが。
俺は久方ぶりの都会へと足を踏み込んだ。
もう暗いと言うのに町は明かりで照らされ、そこに住む人間たちの声で溢れ帰っていた。
皆が皆人生を楽しんでおり、この国の国民性が如実に現れている様に感じる。
しかし、今はそんな場合ではない。ブラウを探さなければ。
何処にいるんだ?城か?牢屋か?
とりあえず、聞き込みをしてみるか。
「おい、聞きたいことがある。」
俺は近くにいた酒臭いおっちゃんに声をかけた。
「んあ?騎士様かい?お勤めご苦労様ねぇ!呑むかい?」
「いや、そうじゃくて……」
「のーめぇーよー!」
あ、駄目だコイツ。
一生話にならないタイプだわ。
情報収集と言えば、やっぱり酒場か?
いや、ここも酒場だが飲んだくれしかいない。
冒険者ギルドに行ってみよう。
あそこなら、聞き込みもできるだろう。
そう思い、俺はうろ覚えながら記憶を辿りギルドへ向かった。