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51.思いを握る

「グルットさん!早く!早く手当して!」「……もう助からねぇよ……」

「どうして!?どうしてよ!?」「だって……脳が頭から出てんだぞ!」


周囲で、何人かの村人が騒いでいた。

なんだ……?

俺は横になった体勢から立ち上がった。

つつ……頭いてぇし、なんか記憶が曖昧だ。


「おい、何を騒いでるんだ?」


「「「へ?」」」


俺に視線が集中した。

な、なんだ?全く状況が掴めない。

何でこいつらは俺を死人を見るみたいな目で見てるんだ?


「き、しさま?どうして?」


俺が前にグレーターベアから助けたカーニャが泣きそうな顔でこちらを見ていた。

な、なんだよ?


「どうしてって……」


「よかっだぁぁぁ!」


カーニャが抱きついてきた。

うわ!き、急になんだよ!?

つか今気づいたけど、鎧が真っ黒に焼け焦げている。

……そうか。

俺は負けたのか。


「グルット、ブラ……俺の召喚獣はどうなったんだ?」


俺が近くにいて驚いた顔をしていたグルットに声をかけた。


「え……騎士様アンタ、頭大丈夫なのか?」


「え、なんだ?喧嘩売ってるのか?」


「ちげぇよ!怪我はどうなんだって聞いてんだよ!」


怪我?ああ、そういえば意識が途切れる直前、頭に何か刺さっていた記憶がある。

しかし無意識下で再生を発動していたのか、頭の傷は完全に治っていた。

魔力足りたのか?

『ステータス。』と、頭に念じた。


【魔力:3/187】


……危なかった、ハルメアスの魔法があと少しでも長かったら間違いなく脳の再生が出来なくて死んでいた。

俺はつくづく悪運が強いな。


「大丈夫だ。で、召喚獣はどうしたんだ?」


「あ、ああ。眠ったままあのクソ騎士共に連れてかれちまったよ。」


「え?」


ブラウが、連れてかれた?


「……なんで止めてくれなかったんだ!?」


「すまねぇ、アンタの怪我で手一杯でそこまで気が回らなかったんだ。」


グルットが、頭を下げてきた。

……確かアイツらはブラウを魔族だと知っていた。

前の王様の口ぶりからして、魔族はかなり忌み嫌われていた。

処刑とか、されてしまうかもしれない。

いや、ブラウだったら力づくで逃げられるか?

いや、でも今は城に勇者が29人いる、戦闘になったらブラウでも厳しいかもしれない。

……助けに行こう。

俺はブラウに何回も助けられてるんだから、今度はこちらが助ける番だ。


「すまない、急用ができた。」


俺は立ち上がり、周りにいた村人を掻き分けて扉へと進む。


「……騎士様、取り返しに行くのか?」


「ああ。」


止められても、行かなければならない。

魔力がない今でも、手負いのグルットなら倒せる。


「……すぐ終わる、着いてきな。」


グルットが松葉杖を着きながら俺の前を歩いていった。

俺はそれに着いていき、俺がいた建物の三軒右隣の建物に入っていった。


「ここは俺の倉庫でな。」


そう言いながらグルットは武器やら防具やらを掻き分けて奥へ奥へと入っていった。

そして少しして帰ってきたグルットの右手には、緑色の半透明な液体が入った三本の瓶を持ってきた。


「そしてこれは……昔の仲間の錬金術師から貰った薬で、魔力と怪我を治す効果がある。一瓶で家一軒買える代物だぜ。」


「……それがどうしたんだ?」


「持っていけ。」


「え?」


瓶を俺に渡してきた。

な、なんでそんな大事な物を……。


「俺はこの通り、怪我で力はかせねぇ。けど俺はあんたに命を助けられた。その相手が困ってたら、自分のできる最大の手助けをするのがスジってもんだ。そうだろ?」


「グルット……。ありがとう。」


「いいってことよ。それに……あんたがあの魔族を大事にしてるのは見てて良くわかった。どうせ止めても行くんだろ?」


え?

こいつ、ブラウが魔族って分かってたのか?


「お前、魔族って……」


「……知らねぇなぁ。」


「……ありがとう……」


俺は倉庫の外に出た。

久々に、人の暖かみを感じた。

この思いを無駄にしないためにも絶対にブラウを取り返さなければ。


「き、騎士様!これ、どうぞ!」


建物を出ると、カーニャが俺に鎖でできた着物……鎖帷子を渡してきた。


「お父さんが、騎士様に渡して来いって……。」


「ありがとう。必ず、帰ってくる。」


「っ!……はい!」


それを手に、村の門に向かって走る。


「騎士様!」


俺が門を出ようとした所で、鼻水やら涙で顔をクシャクシャにしたリウスが走ってきた。


「帰ってきたら……、今度は本気の突きを見せてくれよ!そして、アイツらに勝ってきて!だって騎士様は最強なんだから!」


「……ああ!」


門を出て、王都に向かって走る。


グルットに命を貰って、

カーニャ思いを託されて。

リウスに勇気を出してもらった。

絶対に、取り返す。

そうじゃなければ、皆に申し訳が立たない。






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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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