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50.大事だった何か。

ハルメアスとの戦いが終わったあと、俺はブラウを回収すべく村に向かって歩いていた。

いやー疲れた疲れた。

前の盗賊との戦闘の時は必死で気づかなかったけど、人と戦うのってかなり疲労感溜まるわ。

魔物とかは魔力変質で再生しながら殴ってれば良いけど、人間相手だとそうはいかないもんな。

お、そうこう言ってる内に村の前に着いた。


「開けてくれー!」


「あ、騎士様。どうぞ。」


俺が村に入ると、眠っているブラウが騎士二人に馬車で連行されそうになっていた。

……ええええ!


「おい!ちょっ、ちょいまて!」


「ん?なんだお前は?」


「そいつは俺の召喚獣だ!勝手なことはするな!」


俺は急いでブラウから、騎士二人をひっぺがす。

どうやらハルメアスはまだ森に居るらしい。

リーダーがいないからって何やってんだよ!


「召喚獣も何も……こいつは魔族ではないか!」


へ!?

な、なぜ分かったんだコイツら!


「そ、そんなはずが無いだろう!そもそも証拠が無いじゃないか!証拠を見せろ証拠を!」


「この吐き気を催す様な不快感が何よりの証拠だ!」


「うるせぇ!お前の感性がイカれてんだハゲ!」


俺は騎士からブラウを奪おうと取っ組み合う。

ブラウを取り返して森まで逃げちまえばこっちのもんだ!


「ぐっ……なんという馬鹿力だ……!」


ハルメアスには勝てなかったが、こんな下っぱには力じゃ負けない!

二人がかりで止めに来るが、俺はそれを意に介さずブラウに向かっていく。

しかし、その時背後から凄まじい衝撃が襲った。


「がっ!?」


「た、隊長!例のあれは掛け終わったんですか!?」


隊長……?

俺が後ろを向くと、ハルメアスが立っていた。

こ、こいつ……騎士の癖に堂々と不意討ちかましやがった。


「すまないな。この魔族は連行しなければならないが、貴公は善人の様だから見逃してやる。」


「うるせえこのエセ騎士が!」


俺は剣を抜き、ハルメアスに切りかかる。

さっきは勝てたんだ!さっさと3人ボコしてやるよ!


「全く……貴公は学習しないな。言っただろう?鎧に対して斬撃は悪手だと。」


ハルメアスは俺を前蹴りで吹っ飛ばし、距離を取った。

掛かりやがったな!俺は装填しかけたバイルバンカーをハルメアス向けた。

そっちこそ俺に対して不用意に距離を取るのが悪手だって思い知らせてやるよ……!


「蒼炎よ、焼き尽くせ。」


しかし、俺がバイルバンカーの準備をし終える前に、ハルメアスの手にはどこから出したのか杖が握られており、その周りに巨大な蒼い火の玉が三つほど浮かんでいた。


ーーアレはヤバイ。


離れていても伝わってくるその熱量に本能的な恐怖を覚えて咄嗟に距離を取ろうとしたが、足が動かない。

足元を見ると地面から何本ものツタが生えていて、それが足に絡み付いていた。

後ろで他の二人の騎士も剣を杖に持ち替え、呪文を唱えている。


やられた。

剣でツタを切ろうにも、間に合わなそうだ。

俺は魔力変質で体を覆い隠す程のタワーシールドを作り、熱に備える。


「安心しろ、殺しはしない。『ファイアーボール』!」


「きゃぁぁぁ!!」「正気か……?人間に、魔法を……!?」「き、騎士様死んじゃうんじゃないの……!?」「っ!騎士様!負けないで!」


【耐性スキルに、『熱耐性』レベル2を追加しました。】


瞬間、圧倒的な熱を感じた。

村人の悲鳴に似た声がやけに遠くに感じる。

盾を溶解させ、着々と近づいてくるその火の玉を防ぐために盾を分厚くしようとしたが、それさえも間に合わない。


「ほう?中々耐えるな?『クレイスピア』!」


ハルメアスが唱えると、前方の地面から土の槍が飛び出し、盾を容易く貫いた。

そこから入り込む炎、鎧を熱して中の人間を蒸し焼きにしようとしているのか。

バーベキューみたいな、肉が焼け血が蒸散する音が聞こえる

熱い、死にそうだ。

けどーー俺は『死にそう』にはなっても死にはしない。


【『熱耐性』のレベルが、2から5へと上がりました。】


「っ!うぉぉあああ!」


体を焼き焦がすそれを越える勢いで体を修復する。


だからこそーー本当に死のギリギリまで自分を貫ける。

十秒とも一分ともわからぬ熱さの中、魔力が底をつく寸前で、遂にそのその炎が止んだ。


「よし、まだ生きているな。回復魔法をかけてやる。……と、言っても聞こえていないか。」


ハルメアス回復魔法を使うためか、盾を構えた体勢のままうずくまる俺に近づいてきた。

しかしその情けがお前の敗因。

俺は自分でも驚くほどの速さでハルメアスに、掴み掛かかった


「っ!、なんだと……!その状態でまだ意識があるのか……!?」


「ぁあああ!」


馬乗りになり、冑に包まれたハルメアスの顔を殴る、殴る。

魔力を消費しない、拳の硬度変更で鋼鉄並の硬さになった拳で。

幾度も、幾度も、静寂に包まれた村に、鉄が鉄を打つ鈍い音が響き渡った。


「ぐっ……!」


もう少しだ……!あと数回叩き込めればコイツの意識を刈りとれる筈だ!


「くたばれハルメアス!」


「っ!?騎士様、後ろ!」


グチャ。


ーー耳元で、そんな音が聞こえた。


「へ、あ、え?」


自分の体が後ろに倒れるのがわかった。

頭の奥の奥から、とんでもなく熱いものがこぼれ出る様な感覚に襲われた。

しこうが、まと、まらない?

なんとか、頭を触ると、俺の兜を突き破って何やらとんがってる物が刺さっていた。


「隊長!大丈夫ですか!?」


うしろから、さっきまでしっていた『だれか』のこえが聞こえる。


「騎士様!死なないで!」「てめぇら!何しやがる!……くそ!怪我さえ治ってりゃこんなやつら……!」「……へ?嘘だろ?」


よこから、さきほどまでしたしかった『だれか』のこえがきこえた。

けどーーもう、なにもかんがえられない。

かんがえるばしょが、どんどんくろくなっていく。

ああ……自分はなにか、大事な事を忘れてーー。


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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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