47.『ブレイヴイーター』
【『ブレイヴイーター』についての記述』】
勇者召喚が行われた当日、約80人の騎士と200人の兵士が駐在していた王城で勇者の一人を食い殺し、その後誰一人に見つからず城から逃げた魔物。メイドの証言の所、体長2メートル後半、そして恐ろしく醜悪な顔をしている。
未熟とは言え勇者を何の抵抗を許さず殺した事から、その
ランクはC+~。
そして隠密性を考慮すれば更に上がる可能性があるため、これ以上被害を増やさないために早急に討伐する必要がある。
ブレイヴイーターの潜伏、又は逃亡経路は『ナダの遺跡』
『スレイブ鉱山』『バナス大森林』などが最も有力なため、そこに騎士を向かわせる。
特にバナス大森林は村が近接してる上、『グレーターベア』
等の危険度が高いため、精鋭を向かわせる方針で決議した。
記述者:カルナ・ルークス
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村に来て、大体2時間が経過した。もう昼時だし、帰るか。
ブラウはいまだに無尽蔵な体力でかけまわっているが、 子供たちはもうバテているし、潮時だろう。
「おいブラウ、もう帰り……」
「すまない、村長殿はどなたかな?」
声の聞こえた方を見ると、3人組の騎士がいた。
いつ来たんだ?
と、思ったが向こう側の門番が共に着いてきていて、今ちょうど来たらしい。
その鎧は俺のと同じでーー……あれ?同じ?
俺ってこの鎧盗んだんだよな?今人外だよな?
……ヤバイヤバイヤバイ!
俺はとりあえず家屋の影に隠れた。
「は、はい、私が村長ですが。……何のご用でしょうか?」
「おお、貴公が。私の名はハルメアスだ。唐突ですまないが、この数日間村人や家畜が死んだりはしなかったか?」
一番先頭のリーダーらしき騎士が言った。
俺が来た時にはそういった騒動とかは無かったな。
「いえ……ありませんが……。」
「そうか……いや、危険な魔物が逃げ込んだ情報を受けてな。一応そいつの特徴を元に描かせた絵があるから一応みてくれ。」
俺はその羊皮紙に書かれた絵を見た。
事故に合ったフレンチクルーラーみたいな顔。
細長い体躯に比較して異常に広い肩幅、と言うハッキリ言って非常にキモい容姿。
ゾンビ系映画の主人公が裸足ででんぐり返ししながらライフル差し出してくるレベルの凶悪さだ。
……俺だな。
今はこれより酷くなっているから、実際よりイケメンともいえる。
やったねケンちゃん!かなり盛れたよ!(白目)
「我々はこの怪物を追って来たのだ。とにかく村が無事なら良かった。これから森に調査しに行くから、何かあったらまた教えてほしい。」
……へ?
今なんつった?
「これから森に調査しに行く。」だって?という事は……
騎士達調査しにいく。
↓
俺達の家を見つける。
↓
騎士「ナンダコレハー、アヤシイゾー」
↓
騎士「こんな家焼いてやる!」
↓
俺ホームレス確定。
↓
うわぁぁぁぁぁぁ!!!BADEND
……マズイ。
折角のスローライフが崩れ去ってしまう!
どうしよう……。何かいい方法は無いか……
……確かハーネスって土の壁で扉隠してるよな?
これしかねぇ(迫真)
俺は騎士の目を避けて、森へと走った。
走る、走る、走る。
そして驚くべき速度でハーネスの家がある土壁の前にたどり着いた。
「ハーネスゥゥゥ!たすけてぇぇぇ!」
ガンガンガン!
俺は土の壁を叩く。
しかし反応はない。
……えぇい!なりふり構ってられるか!
「バイルバンカー!」
「うぇぇ!?」
掌から特大の槍を射出し、土壁とドアを一撃でぶち抜く。
申し訳無いけど、こいつなら土魔法とかで直すだろ。
ハーネスはその向こう側でイスに座っていた。
「け、ケンイチ、来てくーー」
「行くぞ!俺の生活を守りに!」
「な、何言って……うわぁぁぁ!」
俺はハーネスを脇に抱えてまた走り出した。
グレーウルフを蹴り飛ばし、リトルコカトリスを踏み潰す。
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【『斎藤健一』のレベルが28から29へと上がりました。】
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そして驚愕のスピードで家にたどり着いた。
「ハーネス!家を壊さない程度にこの上に土を盛ってくれ!」
「な、なんで……」
「急げ!時間がない!ハリー!即断即決即行動!」
俺はハーネスを地面に下ろし歩かせる。
「わかった!わかったけど……わ、儂今裸足じゃから……近くまで連れていってくれ。その……抱っこ、して。」
「ああ!」
俺はハーネスを米俵みたいに抱えて、走った。
と言うかこいつは何か意識してるみたいだけど、俺はグラマス好きだ。
こんなちんちくりんには反応しない。
「うぅ……土よ!我が眼前のものを隠せー!」
なんかえらく詠唱が適当だな。
ほんとは必要なかったりして。
「ふぅ……杖も無しに詠唱したから疲れた。」
よし、違和感アリアリだけど、何とか隠れたな。
これでひとまずハーネスの家に隠れてやり過ごしーー
「おや、貴公は……」
「っ!」
……俺の後ろに、先程の騎士がいた。
別行動なのか、他の二人はいない。
「そちらも調査か?しかし他に派遣された情報は……貴公、その鎧随分と傷んでいるな?」
疑われてる……のか?
考えろ……この場を切り抜けるその場しのぎの嘘を……!
「……師匠の形見なのだ。」
「支給品は使用者が死亡すれば返還のはずだぞ?」
こいつ……手強いぞ。
コイツは今まで出会った大人達の中での一番のキレ者……!
「ボ、ボロボロ過ぎて返さなくて良いと言われたらしい!」
「……」
騎士は俺をじっくり見ている。
バレたか……!?




