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4.俺が人を辞めた日

先程自らの長年のコンプレックスである容姿を克服する天啓が舞い降りた俺は早速、自分の顔を作り変える準備に取り掛かっていた。


俺は元々思い立ったらすぐ行動するタイプなのだ。

まず、試しに自分の腕を粘土に『変質』させ、手をグーパーしてみる。


正常に動く事を確かめると、他人が見たらさぞ気持ち悪いであろう表情でニタリと笑った。

しかし気にしない、今俺は人生で一番と言って良いほど興奮しているのだ。


だってそうだろう?今までの、ブサイクというだけで男にはバカにされ、女子には虐げられてきた日々はきっと今日で終わりになる!


「フハッ、フハハハハハ!!」


気分が良くなってつい声を出して笑ってしまった。

これから俺の異世界無双ハーレム生活がはじまるのだ!


「勇者様何事でしょうか!?」


「んん?何でもないよぉ?」


俺がニッコリしながら彼女を安心させるためそう言ってあげるとメイドさんは「あっ、はい」と言って部屋から出ていった。


ンフッ、ツンデレ娘かな?

あの子も俺のハーレムに加えてあげよう。名前を聞いておけばよかったか?

そう思いながら俺はまず、どこから作り替えるか考えた。

いくらイケメンでも低身長では格好がつかないから身長も上げるつもりだ。

俺は今17歳にも関わらず163㎝しか身長が無いから、そうだな……185位にはしたい。


よし、まずは身長だ。

俺は早即身体を作りかえていく。

肩幅とかもガッチリさせ、足もスラッと長くする。

……うん。

少し歪な気もするが多分すぐ直るだろう。

取り敢えず顔だ顔。


俺は鏡に自分の顔を写し、見つめ会う。

この顔も今日が最後だ。

あまり良い思い出は無いが、せっかく両親がくれた顔だしこれで最後だと思うと何か寂しい気がする。


……


いや!俺はイケメンになるんだ!

そう自分に言い聞かせると自然に勇気が沸いてきた。

俺は自分の顔を、粘土弄りの要領で変えていく。


取り敢えず鼻を高くした。

目を大きくしてみた。

唇を薄くした。

顔のラインを細くした。

……やっぱり目を少し小さくした。

あれ?何か鼻曲がってないか?

アヒル口にしよう。(提案)

肩幅ももうちょいガッシリさせて……

もうちょいスレンダーかな?

鼻を細くちいさくしてっと。

二重にすんのムズいな……


ーー2時間後ーー


ーー目の前の鏡には身長2mオーバーの異常に肩幅が広い、事故に合ったフレンチクルーラーみたいな顔をした化け物が哀し気に佇んでいた。

ほら……アレだよアレ!

眉毛剃り直し過ぎて気ずいたらもう眉毛無かったみたいな?


しかしこの姿は中々にショッキングだな。

自分だと分かっているから何とか平静を保てているが、

もし俺が森とかでこいつに出会ったら死を覚悟するだろう。

まあいい、イケメンになるのはまた今度だ、今日はもう寝よう。

その前に姿を直して...…あれ?直らないぞ。

それどころか触れば触るほど俺の顔面は崩壊していくばかりだ。


「あれ、これってもしかしなくてもヤバいんじゃないか!?消えろ!消えろ!」


顔に向かって消えろ、と言ってみるが、変えた顔と体は直らない。

もしかして出した物は消えるけど元々の体を変えた物は直らないのか……?

俺はようやく事態の深刻さに気がついた。

まるで幸せな夢から覚めた様な気分になった。


そもそも素人がモデルも無しにリアルな人間の顔を粘土で作れる訳が無いのだ。これマジでどうしよう。

今の姿を誰かに見られれば下手したら討伐されかねない。


仕方がないから一旦城を出よう。ここは俺がいるには危険過ぎる。

俺達が召喚された場所だけでも50人近く騎士が居た。


問題はどうやって逃げるかだが……。

窓から飛び降りるのは無理そうだ。少なく見積もっても窓から地面まで15m程はある。そうなれば手段は一つしか無い。

さっき俺達が居た王の間(仮)から反対側に走り抜ければ多分だが出口にたどり着くだろう。

……たどり着けるといいなぁ。(希望的観測)


……よし!やるしかない!

流石に怖いが問答無用で討伐されるよりはマシだ。

そう自分に言い聞かせて決意を固め、ドアの前に立った。


「行くぞ俺!思いたったらすぐ行動するタイプだろ!?」


頬をパンパンと叩き気合いを入れ、俺は勢いよくドアを開けた。

入った時には凄く大きく感じたドアであったが、今では自分が大きくなったせいかとても狭く感じた。


こんな事で自分の変化を実感しても嬉しくないなーなどと、場違いな事を考えた後、俺はようやくドアの外に意識を向けた。


すると………

怯えた表情でこちらを見る、先程のメイドさんの姿が有った。


……うわあああああ!何で気づかなかったんだ!さっきから声を上げたらすぐ入って来てたんだから普通ドアの前で待機してたって気づくだろ!俺の馬鹿野郎!


「あああああああ!!!」


半狂乱になりながらも、涙目で震えるメイドさんを尻目に全力で出口に向かって走り出した。

果たして俺に明日は有るのか!?

………多分無いね。

ちくしょう!俺の人生いつも失敗ばっかだ!

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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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