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28.村への再来

俺は家のある場所に帰ってきた。あー、朝から嫌なもの見ちまったな。

気分を上げるために、『ヌァシ』をかじる。

うん、まんま梨だわ、うめぇ。


「ただいま」


俺は家に入り、藁の上に果物を置いた。


「あ、ケンイチさんどこ行ってたんですか?」


ブラウはもう起きていたようだ。

座りながら自分の耳を弄っている。


「ちょっと朝飯の調達に行ってきたんだ。食うか?」


「ください!」


俺はブラウに向かってリンゴを投げた。

俺は受け取ったリンゴを食べだしたブラウの前に座って、食べかけの梨を食べ進める。


「そういえばケンイチさん、昨日言ってた今日する事ってなんですか?」


あ、そうだった。

今日はブラウを洗うための水を手に入れるための水源地の場所を村人達に聞きに行くんだったな。忘れる所だった。

大分まぎわらしい。


「今日はお前を行水につれていくんだ。」


俺がそう言うとブラウは驚いた顔をして、


「ギョウスイってなんですか?」


と聞き返してきた。

そうか、バナナの皮を剥いて食う事を知らなかったことと言い、こいつはもしかしたら行水という概念がないのかもしれない。


「お前の毛並みを洗ってキレイにするってことだ。」


「あっ、それですか!だったら私も知ってますよ!リンドヴルムが出る前は人間さん達がいつも湖で体を洗っていました!」


ブラウは興奮した様子で言っている。

つかブラウは『リンドヴルム』より先にこの森に居たんだな。

一体何年位前から居るんだろうか。

こんど機会があったら聞いてみるか。


「けど、なんで私を洗ったりなんかするんですか?」


ブラウそう言ってきた。

やっぱこいつ自分がなんで助けた人間に逃げられてきたのか分かってねぇな。


「人間は清潔なのが好きなんだよ。村に行くんだったらそれ相応の準備がいる」


血みどろだから村人が怖がるんだよ、というのはあえて言わなかった。

こいつの今までの努力が無駄になりそうだったからだ。


「それなら良いんですけど……湖にはリンドヴルムがいて水は使えませんよ?」


「ああ、だからまず俺が村人達に近くに他の水源地が無いか聞いてみる。それで有ったらそこに二人で行って、行水だ。」


「なるほど、そういうことですか。すいません……私のために……。」


「大丈夫だ」


うし、そいじゃあ早速村に行ってみるか。

あるとは思うがもし近くにそもそも水源地が無ければ、この計画は破綻だ。

早めに行った方が失敗した場合のショックは小さいからな。


「これから村に行って聞いてくるからちょっと待ってろ」


「はい!お願いしますね!」


俺は家の外に出た。ブラウが手を振ってくる。

一応振り返してみた。

俺が振り返すと、ブラウは嬉しそうにピョンピョンしだした。


俺も一応ピョンピョンしてみた。

俺がピョンピョンするとブラウはパンパン……もういいわ!

俺はブラウに背を向け森に入っていく。


もしこの計画が上手くいって村人と仲良くできたらブラウは一体どんな反応をするんだろうか。

多分凄く喜ぶだろうな。

その期待を胸に、俺は村に向かって歩き出した。


◇◆◇

俺は今、カリス村の前にいる。

正確にはカリス村の入り口が見える森の中、だが。

前回は人だかりで見えなかったが、強固そうな柵がある。恐らくあれで魔物の侵入を防いでいるのだろう。


まぁセキュリティについては一旦良いとして、俺は前回村に来たときカッコつけて村人達にかなり意味不明ことを口走って去っていった記憶がある。

一応自分達の村の一員を助けた俺に雑な対応はしないと思うが、裏で『厨二病乙』などと思われていたりしたら、中々にキツイ。

どうしようか、勇気出して入っちゃおうか。

でもなぁ……。


「お忙しい所すいません!昨日の騎士様ですよね!?」


「っ!?」


俺がビックリして振り返ると、そこにはジャガイモらしき作物……『ジガウモ』が大量に入った篭を持っている男が居た。

知らない顔だ。

俺を知っていると言うことは昨日俺に平服していた村人の一人だろう。

しかし、その村人が俺に一体何の用だろうか。


「丁度良かった!村の近くにいらしていたんですね!ささ!どうぞ!大した物はございませんが、村の者は皆貴方に感謝しているんです!騎士団でさえ手こずるグレーターベアを単騎で倒す大英雄!そしてそれを広めないという謙虚さ!正に騎士の中の騎士です!」


村人は凄まじい勢いで捲し立てながら俺の手を引っ張ってくる。

ちょ……どんだけ興奮してんだコイツ!?

なんか頬赤らめてるし!もしかして変態か!?

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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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