25.森林道中
村人達に背を向け歩きだしてから、自分感覚で大体5分が経過した。
森を歩いているが、鬱陶しいグレーウルフなどにはエンカウントしていない。
俺はブラウについて考えていた。アイツが俺以外の人間と仲良くできないかについてだ。
ブラウは魔族だがそこらの魔物より、というか大体の魔物より人間に優しい見た目をしている、なんたってデカイウサギさんだからな。
ブラウは助けた人間に逃げられたと言っていたけど、多分人間を襲っている魔物を倒したとき、結構な量の返り血を浴びていた筈だ。
俺も経験したから分かるが、いくらウサギとはいえ自分よりサイズ的に大きい生き物が血まみれで優しげな笑顔を浮かべているのは、中々に恐い。いや、怖すぎる。
もはや狂気さえ感じたぐらいだ。
しかも自分を食い殺そうとしていた圧倒的な存在を、さらに圧倒的な力でねじ伏せた後ときたらもうチビりそうだった。
幸いグレーターベアの咆哮で出しきった後だったから問題はなかったが、いや問題はあるか。人間の尊厳的な意味で。
まぁ俺の尊厳については一旦良いとして、今はブラウをどうやって人間に受け入れさせるかについて考えよう。
策はある。村人達に紹介するのだ。
村人達の俺へのあの崇拝っぷりからして、俺が紹介した相手を無下に扱う事は無いだろう。
特に小さい子供や女性には人気が出て、むしろ村のマスコットになるかもしれない。
ちょうどカリス村の人たちも茶髪の人が多かったし、ブラウの毛並みも茶色だからそこらへんシンパシーを感じるかもしれないしな。
とりあえずブラウに言ってみよう。話はそれからだ。
俺はブラウが待機していた茂みの前に着いた。
茂みをかき分け、探す。あっ、居た。
「ズピー、ズピー」
……寝てやがる。
コイツ……人が折角お前について真剣に考えてやってたっていうのに自分だけこんな幸せそうな顔で眠りやがって。
まぁ良い。とりあえず叩き起こすか。
「おい起きろ!」
俺はそう言いながら剣の腹でブラウの頭をぶっ叩いた。
刀身がビィィィィン!という音を出しながら大きくしなる。
あっ、やべ、曲がったかも。俺の相剣がぁぁぁぁ!!!
「ふぁぁぁぁ……あれ、ケンイチさんさっきの人たちはどうしたんですか?」
俺が心の中でもんどり打っていると、さっきの衝撃でブラウが起きた。
ムカついて殴ったけど、痛がってさえいねぇ、というか殴られた事にさえ気づいてねぇ……完全に俺の愛剣無駄死にじゃん……。
鎧にも穴空いてるし俺の装備もうマジでズタボロだな。
自分で修復できるか?
村人に頼むって手もあるが、その場合村人達の前で鎧を脱がなきゃいけない。
俺の人外バケモンフェイスとボディを御披露目することになる。
そうなったら俺は一瞬で人類の敵バッドエンドだ。
それは避けたい。
「村まで送り届けた。」
俺はそう教えた。
村人達に崇拝された事については言わない。
「そうですか!じゃあ私たちも帰りましょうか?」
「ああ。」
ブラウが明るい声で言った。
間接的にとはいえ、怖がられずに人間を助けられた事が嬉しいのかもしれない。
自然と俺も明るい気持ちになった。
俺とブラウは夕日に背を向け、家に向かって歩き出す。
さて、今日は朝飯と昼飯を食べてなかったな。
とても腹が減った。
それはブラウも同じな様で、既に周りにあったリンゴをいくつか抱えている。
俺も負けてはいられない。バナナを4束程もいだ。
今夜のディナーはこれで良いだろう。
今日は甘いものが食べたい気分だ。
リンゴはすっぱいのも多いし、モモは見つからない。
おっ、家が見えてきたな。
俺は我慢できずにバナナを二本食べてしまった。
甘くてとても美味い。
けど水分が欲しいな。喉がカラカラだ。
「ブラウ、バナナとリンゴ一本づつ交換しないか?」
「良いですよ!」
俺はブラウからリンゴを渡され、こっちもバナナを渡す。
俺はリンゴをかじった。
くー!うまい!
さっきリンゴの気分じゃねぇって言ったけど悪くねぇな!
酸味が疲れきった体に染みるぜ!
「ケンイチさん!バナナもう一本交換しませんか?」
ブラウもバナナが食いたくなった様だ。
俺がバナナをを手渡すと、ブラウは皮ごと口に放り込んだ。
えっ、コイツバナナは皮剥いて食うって知らないの?。
仕方ない、このバナナの伝道師である斎藤様がお前にの正しい食い方を教えてやろう。
「ブラウ、バナナはこうやって食べるんだ。」
俺はブラウに剥いたバナナを見せてやった。
卑猥な意味じゃないからな!
それをブラウの口の中に放り込んでやる。
「っ!さっきよりずっと美味しいです!」
ははは!バナナは人間だけではなく魔族までをも笑顔にする!バナナに不可能はないのだ!
「ブラウ、リンゴもらうぞ」
俺は2個目のリンゴをかじる。
あっ、美味い。スマンバナナ、やっぱリンゴの方が好きかも。




