2.魔力変質
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『自分の魔力1を1㎏の様々な物質に変質する』
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つまり………どういうことだ?
例えば今の俺の魔力を全て使って70㎏の鉄を出したり出来るのか?
便利そうではあるが戦闘の役に立つかは正直微妙だな。
思いっきし生産ジョブじゃん。
どうせなら剣とか魔法でバッサバッサ敵をなぎ倒したかった。魔物なんかがいる世界で生き抜くには若干心許ない気がする。
もっと他に無かったのか?魔力無限とか絶対防壁とか武器創造とかさ……。
まあ、とりあえず自分のステータスの基準を定めるために横の奴のステータスでも覗いてみるか。
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『高星清太』
種族:人間
状態:勇者
Lv1/30
攻撃力15
防御力2
魔法力3
素早さ10
固有スキル
無し
耐性スキル
無し
通常スキル
無し
称号スキル
不幸の体現者
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うわあ……大分弱いな……。
これじゃ戦闘とかは厳しいだろう。
同じ勇者なのに、強さに格差が有るのだろうか。
……これでもし、王様や他のクラスメートの態度がステータス次第でガラリと変わってしまったりしたら城から出ることも考えなくてはならない。
急に台頭してきた新たな基準で人間関係が一変する様な不安定な環境で生きていく自信は無いからな。
「他の勇者達もステータスを見せてはくれぬか。」
その声を聞き自分のステータスに一喜一憂していたクラスメート達が王の前に並び、ステータスを見せていく、
高星は元々白い肌を更に蒼白にさせていたが、取り敢えず俺の後ろに並んだ様だ。
結果からいうと、俺のステータスは平均だった。というか
鈴木と高星以外は皆大差無かった。
そして王様は、高星のステータスを見ても表情一つ変えない。
あと、俺の『魔力変質』みたいな固有のスキルは皆持ってた。
他のクラスメート達も自分以外どうでも良いのか、高星をバカにしたりはしなかった。
これからはどうなるかは分からないが、その事実に俺は不安ながらもひとまず安堵し、これからの生活を楽しみに思う心の余裕が生まれた。
王様は俺達のステータスを全て横にいた使用人に記録させ、
「それではこの世界について説明させてもらう。この国こ周囲にはルビエド王国とは別に、獣人と人の国であるバリスヒルド国、そしてドワーフと人の国、ドボラ帝国が存在する。他にも国として認められてはいないが北西にエルフが住む森がある。ここまでで質問は無いか?」
と、説明した。
俺がエルフも居るのかと夢を膨らましていると、クラス委員の石田幸子が口を開く。
「各国の力関係はどうなっているのですか?」
こいつこの状況でよく質問なんてできるな!?
「軍事力に関してはドボラ帝国がトップで、その次が我が国、バリスヒルドは軍事力こそないが、様々な資源を握っている。」
「なぜさっさとバリスヒルドを植民地にしてしまわないのですか?」
おいまだ質問するのか!凄まじいメンタルしてるな……?
「バリスヒルドには300年前から強固な魔導結界が張られている、そのため一度攻めきれないと、ドボラ帝国が2国ががりで潰しに来るのだ。」
「なるほど」
委員長のこの図太い神経だけは俺も欲しいと思った。
「しかしそれはドボラ帝国も同じだ。
流石のドボラもバリスヒルドと我々の2国を相手にはしたくはないからな」
委員長は納得した様子だ。
つか魔導結界については質問しないんですね……。
「それでは説明を再開して良いか?」
皆が沈黙で了承した。
「それでは次は魔族について説明する。魔族はこの大陸とは別の大陸に蔓延っていて、人間並の知能を持ち、魔物を発生させ従えている。奴らは人間とは別質の魔力を使い、魔法が使えぬが、圧倒的な身体能力と再生能力を持ち、そして心臓部には力の根元である魔石を有している」
魔族と言えば魔法のイメージが強いんだけど使えないのか。
つかこんなスキルでそんな化け物とやり会えるのか?
やっぱちょっと不安になってきた。
「ま、待てよ!俺達は元の世界に帰れるのか!?」
さっきからずっとテンパっていた酒田幹雄が叫ぶ。
確かにそうだ。
急に集団誘拐紛いの事をされて、はいそうですかと言える訳が無い。
俺も今は驚きで感覚が麻痺っているが、多分明日とかにはホームシックで死にかけていると思う。
「問題ない。魔王を倒せばその魔石で魔方陣に力を与え、元の世界に送り返せる筈だ」
成る程、それなら安心……いや、待て。なら先代の勇者はどうやって元の世界に帰ったんだ?
先代の魔王の魔石は俺達の召喚で使った筈だ。
……いや、ネガティブ思考は止めておこう。
考えたらキリが無い。
もしかしたらこの世界に定住したのかもしれないし、魔王の魔石には送り返してまた召喚するだけの力が有ったのかもしれない。
取り敢えず今は自分がこれからどうするかについて考えるしか無い。
本当にヤバイ時まではポジティブにいこうぜ!