15.【格】が違い過ぎた
今の謎の咆哮の主に対して俺とブラウは臨戦体勢になり、俺は咆哮が聞こえてきた方に向かって『観察』を使った。
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【『ビバンジ』】ランクG
【何処にでも咲く、比較的入手が容易い花。】
【かわいらしい見た目をしているが、他の作物の栄養まで吸い上げてしまうため、度々雑草扱いされる】
【花言葉は、不屈・嫌われ者・暴食】
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違う!これじゃなくてもっと後ろだ!
「『観察』!」
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【『コカトリス』ランクC+】
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し、C+だぁ!?
ブラウと同格とか本格的にヤベェやつじゃねぇか!
「ブラウ!出番だ!」
「はい!」
大丈夫……こっちには同じC+のブラウが居るんだ。
負けるわけがない。
茂みの中から「コカトリス」が姿を表した。
緑色の体毛、真っ赤な顔に蛇の尻尾などかなり特殊な姿をしている。
「コォォォォォォ!!!」
コカトリスが再び凄まじい咆哮をあげた。
その瞬間俺の両手両足の感覚が消えた。
マズイマズイマズイ!!!
咆哮一発で石化しやがった!
それに気のせいか胴体の方にも石化が進行していっている気がする。
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【『石化耐性Lv1』を得ました。】
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よし!これで少しは進行遅くなんだろ!
「ケンイチさん!」
俺の様子がおかしいのを見てか、ブラウが駆け寄ってくる。
あれ?ブラウは石化してないな。
『石化無効』でも持ってんのか?
「ブラウ、奴を殺せば石化の効果は消える筈だ。」
「ケンイチさん石化してるんですか!?」
「ああ」
俺がそう答えると、ブラウはドテドテとコカトリスの方へと走っていった。
だ、大丈夫なのか?
コカトリスの多分メインウエボンである石化に耐性を持っているとはいえ、とてもブラウがコカトリスより強そうには見えない。
「コォォォォォォ!!!」
コカトリスが、走ってくるブラウに向かってくちばしを突きだした。
『突きだした』言い切ったが、正しくは突きだしたと思うが正解だ。
なぜならコカトリスのクチバシのスピードが速すぎて俺には全く見えなかったからだ。
そんな必殺のクチバシを受けたブラウはというと……
右手で掴んでいた。
俺が目で追うことすら出来なかった必殺のクチバシをだ。
ブラウすげぇぇぇぇ!!
けどクチバシを掴んでどうすんだ?
ブラウはクチバシを握りつぶした。
「コァァァァァ!?」
これにはさすがのコカトリスも驚いた様で、大きく後ずさった。
そしてブラウに背を向け逃げていく。
あ!ヤバイぞ!
逃げられたら俺の石化が直んねぇ!
「逃がしませんよ」
俺が気付いた瞬間にはブラウは目の前から消え、結構遠くに逃げていたコカトリスの前に「出現」していた。
「コォァァァァ!?」
あ?え?ブラウ速すぎん?同じC+なのに性能違いすぎないか?
スピード特化だったら納得出来ない事も無いけど、さっきコカトリスのクチバシを握りつぶしていたのを見ると、恐らくパワーもある筈だ。
ドスン!という骨が肉を打つ大きな音が聞こえた。
決着が着いたのだろう。
コカトリスが崩れ落ち、俺の手足に感覚が戻った。
「ケンイチさん!」
ブラウが駆け寄ってくる。
いやー前俺がブラウより強くなれるって言った気がするけど撤回するわ!
だって自分の同ランク帯をワンパンとかおかしいだろ!
しかも目離した瞬間になんかわかんないけどワープしてるし、あの時のコカトリスの顔絶望に染まってたよ!
コカトリスの視点だと自分のクチバシ握りつぶした上に気づいたら目の前に居る最高にヤバイ奴だもんな!!
あんなん泣くわ!
はぁ……はぁ……ツッコミが追いつかない ……とりあえず、
ブラウを怒らせちゃいけないって事だな?
「大丈夫ですか?」
「はい!ブラウ様のお陰様でいつも健康体であります!」
「なんで敬語なんですか?」
ブラウがジト目で見てくる。
あっ、これは普通に接した方が良いやつだな。
「ブラウの真似してみたんだ」
「私はそんな口調じゃないですよ!」
ブラウがプンスカ怒っている。
俺だってブラウを怖がってなんかいない。
人間だって格闘家が自分の数倍強いからって怯えたりはしないだろ?
それと同じだ。
いや、もしかしたら怯えなくちゃいけない格闘家も居るのかもしれないが、こいつはそうじゃない。
むやみに自分の仲間を傷付ける様な奴じゃないのは良くわかってる。