128.対策
更新遅れてすいませんでした。明日も投稿します
「ブラウ、大事な話がある。」
「な、なんですか?深刻な顔して……」
長老曰く、この森はどうやら、"龍因子"と言うのに犯されてリアルバイオハザード状態らしい。
前のグルットのバーサーカーっぷりから鑑みるに、かなりヤバイんだろう。
「この森を、出なきゃいけなくなった……」
「……え?」
俺の真剣さを察してか、ブラウも真面目な顔になった。
「とりあえず、どこかの人里に……」
「私を、置いてくんですか……?」
「そんなわけあるか!」
「……よかった。」
俺が即効で否定すると、ブラウは安心した顔になった。
……問題点は、その『ブラウを連れていく』という所にある。
前、村に行った時、村人たちがブラウを極端に恐れていたことを思い出す。
……きっと、魔族のオーラ的なあれに当てられると、人間は不快に感じるのだろう。
さて、どうするか……
■□■
「と、言うわけで、緊急会議を始める!」
「きゅっ!」
「……朝っぱらからどうしたんですか?騎士さま……」
寝ぼけたグレイを引っ張ってきて、部屋の中心に座らせた。
「グレイは、ブラウを見て何か不快感を感じたりしたか?」
「……少しだけ、ぞわぞわします。」
なるほど、グレイは不快感を感じる、と。
でも、これで実験ができるな。
ブラウに何かをして、それでグレイの不快感が消えれば万事オーケーだ。
「ブラウ、ちょっと息を止めてみてくれ。」
「きゅっ。」
ブラウは、口に手を当て、呼吸を止めた。
魔族の体内で生成された魔素とかが、人間に有害なのかもしれない。
もし正解だったなら、ブラウの口にガスマスクとかを着けさせれば解決できるかもしれない。
十分後~
「もごっ……もごっ……」
「……限界っぽいな。どうだグレイ?」
「不快です」
「キュゥゥゥ!?」
呼吸は関係無し……と。
それじゃあ、この十分間に考えた次の作戦やってみるか。
「ブラウの全身から、こう……もわもわした感じでオーラが出てるのかもしれない。」
「ああ……ありそうですね。どうするんですか?」
「何か、服とかを着せれば良いかもしれないな。」
「服って……そんなの、何処にあるんですか?騎士様は鎧だし、そこに寝てるハーフエルフさんは脱がすわけにもいかないし……あっ。」
「グレイ、お前ってジャンパー着てるよな。」
「や、嫌です!なんで男の人の前で僕が脱がないといけないんですか!」
なに言ってんだこいつ。……え、グレイって男だよね?無駄に中性的な顔してるから不安になってきたぞ。
服が防寒仕様で分厚いせいで身体の線とかも見えないし。
「わ、分かった。俺は外に行ってるから、ブラウに着せてみて、結果だけ教えてくれ。」
「……分かりましたけど。絶対に覗かないで下さいね!」
俺は半ば追い出される形で、外に出た。
マジでどっちなんだよアイツ……『僕』って言ってるから男だと思ったのに。
本人に聞くか?……いや、それって普通に失礼だよな。
「俺は、とんでもないやつと同居する事になったのかもしれない……」
「騎士様、終わりましたよ!」
そんな俺の不安をよそに、検証は終わったようだった。
「どうだった?」
「だめでした……」
ある意味二つ返事で、グレイは答えた。
駄目だったか……まあまだ時間はあるし、ゆっくりと模索すれば良いか。
「……あの、騎士様。」
俺が考えていると、気まずそうな顔でそわそわしながらグレイが呼び掛けてきた。
「えっと、あの。……この家、あそこって、どこにあるんですか?」
「あそこ?」
「とっ、トイレです!察してください!……ああ、早く……っ!」
ああ……トイレね。
ハーネスの時と同じ失敗は犯さないぞ。
あのときは無神経に、『ここで出していいぞ』なんて言ってしまったが、今回は違う。
なんと俺は、血の滲む特訓を経て、魔力変質による携帯便所の作成に成功したのだ!
まあ、日常生活に使う物だから、自然と上達していったんだけどな。
「こいつを使え。」
「……なんですか、これ。」
「携帯便所だ。外でしてこい。」
よし、完璧だ。
ハーネスの時はとんだ変態騎士だったが、今はジェントル騎士だ。
「……あの、これ。男の人用ですよね?僕じゃ多分、あ、あそこの形状的に無理が……」
「お前、男だろう?」
「えっ……そっ、そうですよ?なに言ってるんですか?」
汗をかきながら、グレイは急いで外に出ていった。
……もうめんどくさいから、男だと思うことにしよう。
その方が、どっちにとっても幸せだろ。




