114.【ブックマーク500記念】最弱勇者と防壁騎士2(side高星清太)
なんかスコ速で紹介されてたぁぁぁ!ありがとナス!
これからもあたい頑張る!
追記~
ネット小説大賞の一次選考突破してました。
二次も通ってるといいなぁ。
深々と雪が降り積もる修練場、他の騎士たちが休暇を取っている時間に、俺は今日も訓練をしていた。
「はぁ……はぁ……。」
ハルメアスさんの動きを思い出しながら、木刀を振る。
かれこれ五時間ほどぶっ通しで訓練を続けていて、疲労のせいか寒さのせいかは分からないが、手足が小刻みに震える。
「ふぅ……!」
……もう、三ヶ月か。
自分の口から吹き出た真っ白な息を見ながら、俺は今の自分の状況を再確認する。
ずっと剣を振っているのに、全く成長を実感できないのだ。
まるで次の段階へ大きな断絶でもあるかの如く。
「……はぁ。」
結局俺は、何も結果なんて出せないんじゃないか?
……今までもずっとそうだった。いくら血の滲む努力をしても、凄いやつの背中を必死に追いかけても、いつだって俺はちっぽけな俺のままだった。
才能が無ければ今の自分を変える事すらできない。
そもそも……。
「……いや、駄目だ。」
この世界に来てから、誓った事が三つある。
一つは、誰かの助けになる事。二つは、見ないふりをしない事。そして、三つ目は……。
「俺はもう、何かの『せい』になんてしない……!」
腹の底から沸き上がってくる焦りに似た感情を飲み込み、俺はまた構えを取った。
「……よし、あと千回だ。」
姿勢を正し、長細い物体が風を切り裂く特有のブン、という音へ耳を済ます。
上達出来ているかはともかく、剣を振っていると気持ちが楽だ。
どんな嫌なことも不安なことも、集中している間だけは忘れられる
五百、六百、七百。
だんだんと、頭の中が空になっていく。
八百、九百。
ああ、楽だーー
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【通常スキルに、『バリスヒルド式防衛剣術』Lv1が追加されました。】
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「……へっ?」
これ、は……。
「おーいセイタ、ケーキ買ってきたぞ……ってずっと続けてたのか!?倒れるから休め!」
「ハルメアスさん!俺やりましたよ!はははっ!やったぁぁぁ!見ましたか我が師よ!俺はやったんだぁぁぁ!……ガクッ。」
「セイタァ!」
*
「……で、何があったんだ。」
「聞いてくださいよ!ハルメアスさんの剣術、やっと覚えました!」
ステータスを開き、中央に輝く『バリスヒルド式防衛剣術Lv1』を見せ付ける。
「お、おお?……おおお……。す、凄いじゃないか。」
「……あれ、なんか微妙な反応ですね。」
液晶の向こうにあるその表情は複雑だった。
ど、どうしてだ?折角弟子が成長したのに。
この人の事だから自分の事のように喜んでくれると思ったんだけど。
「……あのな、セイタ。これは言った方が良いのか分からないが。」
「な、なんですか?」
俺は生唾を飲み込み、姿勢を正す。
「……普通、レベル一までなら一週間ぐらいで覚えるんだ。」
「……へぇっ?」
う、嘘だろ、俺二ヶ月かかったぞ?
全身が強い脱力感に襲われる。
なにが、『ああ、楽だーー』だよ!はずかし!
「えっと、あとな。」
「ま、待って、言わないで下さい!それを聞いたらなんか大事な物を失う気がする!」
「……現実に向き合ってくれ。」
耳を塞ごうとした手を押さえられ、ゆっくりとハルメアスさんの口が動く。
いやだっ、いやだぁぁぁ!
「ーーステータスが、五歳児並みだ。」
*
「わ、私が悪かったセイタ。ほら、ケーキでも食べて元気を出してくれ。好きな方を選んで良いぞ。」
「……元気は出さないけどケーキは貰います。」
暖炉の前で体育座りしながら、ぼそぼそとケーキを食べる。
……マジかよ。いや、マジかよ。
俺は自分の腕を見つめる。五歳児って事は……つまり、マリアスさんとか、メイドの人と取っ組み合っても負けるのか?
「……なんで俺って、勇者なんですかね。」
「それは……いや、すまない。私達のせいで。」
しばらく、場をどうしようもない雰囲気が支配する。
「……セイタ、その、なんだ。君は元の世界に、残してきた人とかは居るのか?」
沈痛な面持ちでハルメアスさんが聞いてきた。
「居ません。」
「い、居ないのか?家族とか……恋仲の女性とかは。」
「居ません。父は早くに死んで、母は毎晩別の男と何処かに出かけてました。」
「……そう、か。」
先程より更に濃い沈黙が場を支配する。
ハルメアスさんはしばらく黙りこくっていたが、急に何かを決心した顔になった。
「……元の世界に、帰りたいか?」
元の、世界?
……向こうに帰っても、別に何かあるわけじゃない。
だけど、こっちにいたって自分を変えられるわけじゃない。
「……分かりません。どっちも、変わらないので。」
「……。」
ケーキを食べ終わってしまった。ケーキといっても、生クリームなんてなくスポンジ単品だが、以外と悪くない。
「……現時点では、君を元の世界に返すのも、他の仲間に会わせるのも不可能だ。」
「それは、分かります。」
「……だからな。」
ハルメアスさんが立ち上がった。
「私が君に、この世界を大好きにさせてやる。もし帰れと言われても、『ここが良い、ここに居たいんだ!』って胸を張って叫べる様にしてやる!」
地べたに座る俺へと、手が差しのべられた。
戸惑いながらもなんとなく手を取ると、その瞬間恐ろしい力で体が持ち上がり、引っ張られる。
「な、なんですか!?」
「決まっているだろう、遊びに行くのさ!」
ハルメアスさんは走りだし、手を握られている俺も強制的に引きずられた。
「まずは城下までダッシュだぁぁぁ!」
「ぐあぁぁっっっ!」
*
「見ろあれ!どうなってるんだ!?」
「凄い、全身の穴という穴から想像しうる限りの液体が涌き出てますよ!」
数十分後、俺たち二人は城下町で串焼き片手に大道芸を見ていた。
ファンタジー世界だからか、日本でやったら一月ぐらいツイッターで話題になりそうなぐらいには大道芸も凄い。
それから演劇の舞台や食事屋など様々な場所に行き、店を出る頃にはもう辺りは真っ暗だった。
ハルメアスさんの手には何故か沢山の袋が持たれており、料理を持ち帰る様だ。
「家に誰かいるんですか?」
「ん?ああ、ちょっと行く所があってな。来るか?」
「はい。」
俺はハルメアスさんに着いていく。
夜道をしばらく歩き、人々の喧騒から外れて久しい場所にある建物の前で立ち止まった。
「ここは?」
「孤児院だ。」
「……え?」
こ、孤児院?なんでそんな場所に……。
ハルメアスさんはドアに着いたリング状の金具で、コンコンと二回ノックした。
そして少し待っているとギギギ、という音と共に扉が開いた。
あと数十ポイントで日間ランキング載りそうで今ビックリしてます。最近更新の頻度が減っててすいませんでした。これを糧にして今日から書きまくります!




