1.異界との邂逅
俺の名前は斉藤健一、容姿に多少コンプレックスを持つ普通の17歳だ。
今現在俺は今までで一番の、そして恐らくこれからの半世紀以上続く人生を含めてもダントツトップになるであろう危機に瀕している。
「異界の勇者様方、どうか我らの国をお救いください!」
煌めく星々をちりばめた様なシャンデリア、それだけで家が1つ建ちそうなぐらい金類でゴッテゴテの玉座。
俺達は今、見たことも無い様な豪華な部屋に突然ワープし、中世チックで豪華な服を着た人達に平服されていた。
俺の持ってる知識から察するに、多分……クラスごと異世界に召喚(暫定)されたのだ。
……いやいや!テレビとかのドッキリか!?
だとしたらこんな企画に金かけるなよ!俺あんまり面白いリアクションとかできないぞ!?
ドッキリと考えるにしても、部屋の装飾は貴金属に詳しくない俺でも分かるほど高級感溢れてるし!あっヤバイ吐きそう。うわぁぁぁ!
……馬鹿な事やってる場合じゃねぇ、俺はこんなキャラじゃなかった筈だ、自分を見失うな斉藤健一。
とりあえず今日の自分の行動を振り返ろう、何か分かるかもしれない。
・普通に朝起きて
・普通に一人で登校して
・普通に一人で昼飯食べて、
・普通に授業中足元に魔方陣が現れて異世界にいる
↑!?
いや、一人で行動してるからと言って、別に俺がボッチというわけではないぞ?別に!
今日はいつもつるんでた奴らが偶然忙しかっただけだし?
……はい、すいません。ボッチでした許してください。
あれ?おかしいな目からミネラルが溢れてきた、病気かな?ははっ!!!(迫真)
「はぁ!?どうなってんだ!」「どこよここ!?」
「え、ドッキリ?技術の進歩まじっべー」
「皆先生の後ろに来なさい!」「え?えっ?……え?」
文句を言う者、状況の変化に着いていけない者(俺)
突然の非日常にクラスの面々はちょっとしたパニックになっていた。
「静まれ。」
ずっと奥の玉座に座り沈黙を守っていた、いかにも自分が王だといった格好の壮年がけして大きくはない、しかし無視し難い威厳に溢れた声でそう口にした。
そして静まりかえった俺達に向かって再び口を開く。
「異界の勇者達よ、我らの召喚に応じてくれ、とてもありがたく思っている。此度そなたらを召喚したのは他でもない、この国を忌々しい魔族共の手から救って欲しいのだ」
良い年した男がサブカル用語を真面目に語るというシュールな光景に、皆一瞬唖然としたがすぐさまパニックが再開する。
「ふざけるな!」「え?召喚?……えっ?」「やっぱり……ついに僕の出番が来たんだ!」
「皆落ち着け!」
パニックが限界を迎えそうになったところで、このクラスのリーダー的存在、鈴木忍が叫ぶ。
俺はこいつが嫌いだ。
流れる様な茶色の髪に切れ長一重瞼の甘いマスク、そして運動神経も頭も良い、
それでいて実際に良いやつだから余計たちが悪い。付け入る隙が無いのだ。こいつを見ていると自分が惨めになる。
「王様!魔族なんて物と戦えと言われても俺達に戦う力はありません。どうか元の場所に帰してください!」
こいつラノベとか読まねぇんだろうな。
鈴木はこう言っているが恐らくテンプレでは……。
「勇者達には、この先代の魔王の魔石を利用して作られた召喚陣によって特別な力が宿っている。鍛練を積めば魔王を倒すに至ろう」
「ま、魔石?それに特別な力って………」
「ああ、実際に見た方が分かり易いであろう」
『ステータス』
王がそう口にすると、
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『ルビエド・アルス・ガリウス』
種族:人間
状態:通常
Lv:12/50
HP260
MP120/120
攻撃力70
防御力59
魔法力120
素早さ30
装備
頭:ルビエド王の冠:B+
体:ルビエド王の装いC+
固有スキル
無し
耐性スキル:
毒耐性:Lv8
通常スキル:
指揮官:Lv5
王の威厳:Lv6
槍の心得:Lv3
大陸語:Lv5
称号スキル:
ルビエド王:Lv6
死の淵に立つもの:Lv3
名君主:Lv3
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「んだこれ……。」
王の真横にテレビ程の大きさの半透明の液晶?が現れて、そこには日本語ではない、しかし母国語並みに頭にスッと入ってくる文字が書いてあった。
これ……ガチでドッキリという選択肢が消し飛んじまったな。
こんなん怖いもん。
絶対マジなカルだもん。
「……本当にゲームみたいだな」「技術者ってスゲーんだな。素直に拍手だわ」「ああ……キタコレ……!」
皆はこの、ゲームのような展開に今は不安よりも驚きや興奮の方が大きい様だ。
恐らく少しして熱が冷めてくればこれからの不安に押し潰されそうになるだろうが。
しかし……俺もオタクの末席を汚す身としては、このような 展開にはついワクワクしてしまう。
つか王様……死の淵に立つものって……毒耐性……あっ(察し)
苦労してるんだな。
この人とはうまい酒が呑めそうだ。
「そこの勇者殿、ステータスを開いて見せてくれ」
王様がそう薦めると鈴木は戸惑いながらも、
『ステータス』と言った。
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『鈴木忍』
種族:人間
状態:勇者
Lv:1/999
HP:2000
魔力:1500
攻撃力:1000
防御力:1000
魔法力:1000
素早さ:1000
装備:
体:学生服D+
足:学生ズボンD+
固有スキル:
聖剣使用権Lv*
耐性スキル:
魔法耐性:LvMax
物理耐性:LvMax
通常スキル:
カリスマLv7
経験値10倍:Lv__
成長率倍化:Lv__
必要経験値半減:Lv__
称号スキル:
聖剣の担い手Lv__
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「なんだと……っ!?」
今まで大した感情の変化を見せなかった王が、大きい声を上げて玉座から立ち上がった。
王の反応から見るに鈴木のステータスはよほど規格外なのだろう。
というかレベル上限には差があるのか、才能みたいな物か?
これはまあ予想していた。ああゆう奴のステータスは大体高いのがお決りってヤツだ。
「……取り乱してしまってすまない。他の者達もステータスを見せてくれ」
……ここで大事なのは自分のステータスだ。低かったら城を追い出されかねないからな。ラノベとかでもそういう展開を良く見かける。
俺は意を決した。
「ス、『ステータス』!」
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『斉藤健一』
種族:人間
状態:勇者
Lv1/80
HP:150/150
MP:70/70
攻撃力:60
防御力:30
素早さ:80
装備:
体:学生服D+
足:学生ズボンD+
固有スキル
『魔力変質』
耐性スキル
無し
通常スキル
無し
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んん……?
微妙だな……王のステータスを見るに恐らく弱くはないが、鈴木には遠く及ばない。
あと固有スキルの魔力変質ってなんだよ?
俺がそう疑問に思っていると、突如脳内に声が聞こえてきた。
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自分の魔力1を1Kgの様々な物質に変質する。
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……今度こそ本当になんだこれ