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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第一部
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#058「パフォーマンス」【安奈】

#058「パフォーマンス」【安奈】


 安奈がセカンドリビングでグランドピアノを弾いていると、そこへ丹前に茶羽織を着た男と、レースがあしらわれたクラシカルなロングニュニックにナイトガウンを羽織った女が現れた。

「あら。お父さん、お母さん」

「明日のクリスマス発表会に向けて練習に余念がないのは感心だけど、そろそろ良い子は寝る時間なんじゃないかな、安奈」

 観音院がやんわりと注意すると、奈々も観音院に共感して続ける。

「そうよ、安奈。夜更かししてる子には、プレゼントが配られないのよ」

「まぁ。それは困るわ」

 本物のサンタクロースがプレゼントを配るのは、北欧のごく一部の地域だけで、世界の大半では、アウトソーシングされた誰かが配ってるのを知ってるし、私の枕元に来るのは、変装した目黒だってこともお見通しなんだけど、それを言ってしまうとプレゼントがもらえなくなりそうだから、ここはグッと我慢しよう。

「でも、寿くんに最高の演奏を聞かせてあげたいし、連弾のほうは作楽ちゃんをリードしてあげなきゃならない立場なのよ、私」

「責任感が強いのは立派だけど、前もってちゃんと休まないと、本番で疲れて実力を十二分に発揮できなくなるよ、安奈」

 安奈の反論に、先ほどと同じように窘める観音院。

「不安になる気持ちは、充分理解できるわ。でも、安奈は私の娘だもの。きっと大丈夫よ。本番では万事、うまくいくわ。それに、いつかみたいに、寝不足で眼の下に隈を作りたくないでしょう」

 うっ。痛いところを突くわね、お母さん。

「分かりました。部屋に戻って、大人しく寝ます。おやすみなさい」

「おやすみ」

「おやすみ、安奈」

 しゅんとしょげた様子で、安奈は椅子を降り、子供部屋に向かった。

 安奈がリビングを出たあと、奈々は観音院に一声掛け、続いて部屋の奥で長細いフェルトを持って立っている人物に命じた。

「それでは、私たちも寝室へ行きましょう。――真白。あとはお願いね」 

「はい、奥さま」

 観音院と奈々は寝室へ向かい、真白は鍵盤の上に持っていたフェルトを敷いてから、音一つ立てずにゆっくりと蓋を閉め、鍵を掛けて部屋を後にした。


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