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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第一部
30/232

#029「一人合点」【安奈】

#029「一人合点」【安奈】


 観音院安奈の、観音院安奈による、観音院安奈のための、ファビュラスでパーフェクトな計画、ナンバー〇二九を実行するときがやって来たわ。

 十月九日月曜日、早朝。蓋と側面に金の蒔絵が施された五段の重箱を目の前にして、安奈は一人、上機嫌でいる。そして彼女のそばには、クラシカルなメイド服に身を包んだ五十がらみの女が控えている。

「さて。中身は何かしら」

 安奈は蓋を開け、そして一段ずつ左から時計回りに並べていく。

「一の重は、太巻きと稲荷寿司の助六。二の重は、厚焼き卵と唐揚げ。三の重は、うずら卵とプチトマト、それからミートボールとアスパラガスの串団子。与の重は、茹でてスライスした玉蜀黍(とうもろこし)薩摩芋(さつまいも)。薩摩芋は、梔子(くちなし)で色付けしてありそうね。最後の五の重は、食後用にうさぎりんごとキウイフルーツね」

 なるほど、なるほど。少年の胃袋を鷲掴みするラインナップにせよという私の命令に、忠実に応えてくれたみたいね。

「いかがですか、お嬢さま」

 部屋の隅から、メイド服の女が安奈に声を掛けた。

「彩りよし、食べやすさよし、栄養満点。言うこと無いわ。文句無し」

「ありがたきお言葉、感謝いたします」

「これ全部、真白ひとりで準備したのかしら」

「いいえ。いくつかの下準備と、三の重と五の重のアイデアは、青葉の手が加わっております」

 道理で、三と五だけ華やかだと思ったわ。いつもは、そそっかしくてしくじりばかりだけど、たまには、やるじゃない。

「そう。二人とも、ご苦労さま」

「恐れ入ります。青葉にも、そっくりそのまま伝えておきます」

 ぜひ、そうしてちょうだい。きっと喜ぶわ。

「ところで、場所取りには誰が行ったのかしら」

「はっ。そちらは、目黒が担っております」

 ということは、今日の運転は赤城か。急発進、急停車する癖が抜けてると良いんだけど。あと、左ハンドルのマニュアル車に慣れてほしいものだわ。いっつも右に寄ったところで停めるんだから。

「それなら、一安心ね」

 朝一番に広めの場所を確保して、あとから来るであろう寿くんの保護者をお誘いするという素晴らしく完璧な計画。目黒なら、必ずや成功させるわよね。元傭兵に、インポッシブルなミッションは無いはず。

「それでは、お嬢さま。そろそろ、パジャマから体操服にお着替えを」 

 安奈は自分の服を見ると、ハッとした表情をする。

 いっけない。私としたことが、はしたない真似をしてしまったわ。さっさと着替えなくっちゃ。寿くんのハートを虜にすることに頭がいっぱいで、自分のことを疎かにするところだったわ。

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